兼題「登高」__金曜俳句への投句一覧(9月26日号掲載=2014年8月末締切)
2014年9月17日6:48PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』9月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【登高】
腕をよく振つて高きに登りけり
登高や湯の町遠く従えて
登高の影追いかける獣道
おだてられ暗愚宰相登高す
岩尾根の天空に続く登高かな
登高す未だ客たり白き鬢
戸惑い手高きに登り深呼吸
登高や津波の跡をたしかむる
家にゐて高きに登る旅ごころ
登高や見はるかす野のだやかな
遠富士の見ゆる高きに登りけり
登高の計画敵に漏れて居る
今生の荷物おろして登高す
登高やケルンの夕陽目映けり
発心はかの登高の前や後
登高やあしたはきつとプロポーズ
ペン置きて町の高きに登りけり
病得て高きに登り祈念せり
おだてられずとも高きに登りけり
登高す弓手に秩父馬手に甲斐
まなじりに槍をとらへて登高す
登高や高所恐怖もものとせず
登高の一歩づつが重くなり
三世代九人高きに登りけり
毎朝の散歩を今朝は登高に
戦没者慰霊碑の丘登高す
登高や魔除けの札の掠れ文字
妻の手をつなぎ高きに登りけり
登高に四輪駆動使ふとは
ありのまま高きに登るあるがまま
登高に守礼の門の石畳
先生の帽子高きに登りけり
故郷の山の低さよ姉の野辺
登高せる霧の山稜夢幻かな
登高や膝が笑ふと笑ひあふ
登高や山道の枝に用途あり
登高やなるべく低き山にする
登高や源流近し長良川
見上げつつ高きに登り息乱れ
日本寺の色なき鳥居登高す
登高や水を担がず千枚田
来世など有りや無しやと茱萸の酒
登高を重ねて今は草を見る
登高の眼下の更地震災や
登高や江戸より続く氏子中
月山の絶えぬ草波登高す
下山口より高きに登るかな
登高に頂きのあり友悼む
高きに登る烏天狗に下駄を借り
登高や牧渡りゆく雲の影
旗振の山の高きに登りけり
意地通し情に棹さし登高す
登高の見下ろす街の難問の
登高や戦国の世は鎧着け
登高にしては物々しき装備
防人の歌碑の高きに登りけり
下町の富士の高きに登りけり
登高や煩悩幾つ捨てらりょか
登高や視界全周すべて海
彼女こそ登高のもと空しくも
故郷の山やわらかき姉の野辺
海町の高きを調べ登りけり
登高や野球部員ら駆け下る
高きに登るらせんを描く鳶三羽
登高や足を使はぬ観覧車
登高の風にかがよふ棚田かな
登高や群青われら変らざる
暗き空高きに登るほどに開き
登高の口漏れ出づる哀歌かな
岩稜に刻む悦び登高かな
登高やひかりとなりて鳥過ぎる
登高す山のあなたは見えずとも
登高終へ無言の握手交わしけり
駅裏の丘に登高今宵酔ふ
鎮魂の海をはるかに登高す
登高やカップめんへと湯を注ぎ
山の中山を見たくて登高す
登高や風雨磨ける遭難碑
旅独り高きに登る小海線
一瀑を高きに登り耳澄ます
だんまりを決めこむ妻や登高す
登高や線路が三つ走りおり
都庁舎を上り登高せしことに
団子坂高きに登る文士村
羊腸の小径空へ登高す
登高やかたちより入る老いのシャツ
ベランダの高きに登る紫煙かな
高きにぞ登れば犬も遠見す
五体無事高きに登り老いを生き
彼女あり高きを目指す今いずこ
雨脚の脚おとろへて登高す
登高の山より海を見下ろしぬ
登高や平磯の海舟浮かべ
登高の伸びやかに出る腹毛かな
登高終へ山頂に舞う蝶一羽
藤吉郎よりも高きに登りけり
登高の供にピンクの豚選ぶ
登高や寮歌ひと節悦に入る
登高や長元坊の落ちゆけり
じたばたしてもこゝろ高きに登りけり
登高や胸ポケットに銀のペン
星かぞへ高きに登りケルン積む
登高やむかし「オラショ」の祈りの場
膝といふ高きに登りきたる猫
登高や民の竈の白煙
登高や思案重ねて青空が
登高やペリーの海を下に見ゆ
後頭部エコーを受けて登高す
父と子が高きに登り語り継ぐ
登高や襤褸の吾と擦れ違ふ
登高す駱駝のこぶに挟まりて
カンバスを負うて高きに登りけり
登高の思い続けむ古希過ぎて
禿山の高きにのぼり基地とせむ
遠景に海のふた色登高す
木洩れ日を踏んで高きに登りけり
みかん青き故郷の山に姉送る
登高や丸く流るる千曲川
登高す一歩一歩を祈りとし
登高す五臓六腑に風入れて