きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「ねんねこ」__金曜俳句への投句一覧(12月19日号掲載=2014年11月末締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』12月19日・1月2日合併号(12月19日発売)に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

【ねんねこ】
ねんねこや子は母と同じものを見る
玩具屋を指すねんねこの小さき指
ねんねこの睡眠効果イグノーベル
ねんねこの我がふるさとは雪もよい
形見分け祖母の矢絣ねんねこに
懐かしやねんねこばんてん十回忌
ねんねこや背中寂しき日となりぬ
ねんねこの裏の深紅を命とす
ねんねこのはうが重たき赤子かな
ねんねこに包まれて見し児の夢は
ねんねこや仏法僧に首を出し
ねんねこの子と分かち合ふ体重計
ねんねこや覗けば嬰の泣き黒子
ねんねこは母の胎内より温し
ねんねこの裏地に祖母の紬かな
ねんねこの赤子もシヨパンを聞いてゐる
ねんねこの子の逆巻ける旋毛かな
頭ないねんねこの足バタバタと
ねんねこの子の突然に笑ひだす
ねんねこや笛や太鼓に背伸びする
平和なりねんねこのなか赤子なく
飛行船ねんねこの児の見詰めけり
ねんねこや物干し竿に布おむつ
ねんねこでおんぶせし娘のだっこ紐
ねんねこに温みおうてる夜の祭
三人目入らぬねんねこ廃棄され
ねんねこや子守子の手の冷たさよ
ねんねこの温もりいずここたつ出す
ねんねこの児をあやしたり行きずりに
日だまりを探しねんねこ歩き出す
ねんねこや母の記憶から零る
ねんねこや座敷童のゐる旧家
ねんねこのうた唄いつつ銭湯に
ねんねこの子と見上げをり戦闘機
ねんねこの寝た子が濡らす背中かな
ねんねこの柄の童子も古びけり
ねんねこの児とお日様を半分こ
ねんねこを背負ひ直しぬみどり児も
全身で泣いてねんねこ波打たす
ねんねこにカメラを見よと急かす指
ねんねこや時は変わりて抱っこ紐
ねんねこに負へばたちまち寝入りけり
ねんねこの子より一日の暮れはじむ
ねんねこに日向のにおい祖母帰る
ねんねこに飽いて童子の拳出づ
望郷はねんねころんの夢の中
ねんねこにおどけし顔の次々と
ねんねこは子も入り孫も入りにけり
ねんねこや父の背中は広かろう
ねんねこの赤児擽る立話
仕舞いおく四人背負いしねんねこよ
ねんねこや防空壕に想ひ出し
ねんねこの子に波見せて姉の訥
ねんねこに潜り込みたる猫ならむ
ねんねこの居心地しらず母多忙
ねんねこの嬉しそうなる若い父
菜洗ひに温もり嬉しねんねこや
留守番の姉のねんねこ足二つ
ねんねこを解けば夜泣きのひと頻り
ねんねこでおう子眠る子影ひとつ
ねんねこや襟にひかりし嬰の洟
ねんねこの内よりひたと見詰めらる
ねんねこと帽子で目だけ父親似
泣き止めどなほねんねこの波打ちぬ
ねんねこの温まるほど重くなり
ねんねこの黒きビロード眠気呼ぶ
満員の汽車ねんねこもいた昔
化粧台閉じねんねこの母の顔
ずしんずしんとねんねこの子は沈み込み
ねんねこの子は空向いて眠りおり
ねんねこの児はもう会話できる歳
ねんねこの温もり親し初冠雪
ただいまを言ひにねんねこ覗き込む
ねんねこのさつしやりませとねんころりん
ねんねこに弟負うた日の記憶
ねんねこの話や哀れ引き揚げ船
ねんねこの児の笑ひ方母真似る
棉摘んでねんねこ造りし祖母の指
ねんねこを背負いしおしん遙かなり
ねんねこで選手交代おおばあちゃん
ねんねこやにゅっと足出す三才児
寝姿にねんねこ掛けしかの日かな
母の字のやうにねんねこまとひけり
父の背のねんねこ左へ下がりおり
ときどきは祖父がねんねこ係なり
ねんねこやこの山越せば母の郷
ねんねこの手が先に取る駄菓子かな
ねんねこや母生きたれば百五歳
ねんねこや互ひに記憶無くしても
ねんねこと猫とならんで縁框
ねんねこの縁をなめては眠り込む
ねんねこの小さき足を握りしめ
むずかる児ねんねこ背負い静かなる
ねんねこに包まれし日の温かき
ねんねこの日向の匂ひふくいくと
ねんねこの最新モードみな手製
ねんねこに母のぬくもり残りけり
ねんねこやもう下してと両手出す
ねんねこに座して白寿の午睡かな
ねんねこや背に知る小さき息遣ひ
ねんねこの手にも忘れず飴配る
ヒャッキンのねんねこ特売札を付け
ねんねこを唄うは老婆ばかりなり
ねんねこや陽の落ちかかる海見えて
嫁入りの黄八のねんねこ若やひで
カラフルなねんねこ見ればハッピーに
ねんねこや猫あまたゐる谷根千に
眠い時回らぬ口でねんねんこ
知って居る人見ゆねんねこ色の空
ねんねこやアジアの母は背中に負ひ
ねんねこの継母に背負われ別れたり
ねんねこと共に失せしか義理人情
ねんねこの標のごとく立ちにけり
黒襟のねんねこ嬰の赤き頬
傘の柄をねんねこの手も握りをり
ねんねこに両手荷物の里帰り
ねんねこのどつちも握る主導権
ねんねこに至福の顔の埋まりをり
ねんねこの児に退屈な台所
ねんねこを掛けうたた寝の母子かな
ねんねこの中より濁世うかがひぬ
ねんねこも入れて真闇に棺を閉づ
ねんねこを夕日の色に染めあげて
ねんねこの中より月を指差す手
ねんねこのうしろたちまち膨らみぬ
ねんねこにかけて短き浜言葉
田の神にねんねこ被せて乳を出す
ねんねこのひとつごころとなりゆけり
山里のねんねこ姿の案山子かな
ねんねこは祖母の温みよ藍矢羽根
ねんねこや人形背負う白寿媼
ねんねこや谷中の路地の突当り