兼題「風信子(ヒヤシンス)」__金曜俳句への投句一覧(1月30日号掲載=2015年1月5日締切)
2015年1月20日6:25PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2015年1月30日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【風信子】
風信子映して色味を整える
口々に春を告げてるヒヤシンス
咲きとほす水栽培の風信子
十字軍花壇にをればヒヤシンス
ヒヤシンス郵便局に客ひとり
キスまでは簡単にしてヒヤシンス
年ごとに花小振りなる風信子
待つことはもう慣れっこに風信子
風信子女人商ふ小さきカフェ
青き花付けて顔出す風信子
教室に四五十この風信子
校長の背ナの向ふにヒヤシンス
ヒヤシンス枯らさぬ人になりたしも
お隣にアメちゃんあげよヒヤシンス
春嵐に髪乱れたる風信子
水呑みて服着てふたり風信子
診察を待つ間の心地風信子
読み聞かす絵本聴きゐるヒヤシンス
ヒヤシンスしづかに時間壊れゆく
風に揺れ風信子の小花は驚きぬ
笑顔なき役所の部署の風信子
風信子机上のダルマと禅問答
風信子京の花街石畳
風信子出窓明るき時計店
ヒヤシンス窓に頬づえして過ごす
ヒヤシンス蜷局巻く根の白さかな
大阪のおばちゃん元気ヒヤシンス
結果聞く診察室に風信子
亡き妻の化身となりぬ風信子
甘党の羊羹談義ヒヤシンス
風信子鉢呉れし人今は亡き
オフイスの灯りも消えて風信子
ヒヤシンス根っこの先まで見られても
人類は兄弟殺しヒヤシンス
空欄の今日の予定にヒヤシンス
花よりも根へと目が向くヒヤシンス
ヒヤシンス花がら三つ摘みにけり
湖の夕日に紛れ風信子
古書店の暗き書棚や風信子
独居の窓辺に猫と風信子
ヒヤシンスわてとキッスはどないだす
三色の幸せ並ぶ風信子
風信子ワイングラスに罅入る
そこだけが春の兆しの風信子
風信子根を泳がせる瓶の中
ほんたうに八方美人風信子
理科室の薄日に並ぶ風信子
糸棚の隙間かがやき風信子
夜まではひとりの時間ヒヤシンス
もこもこと描いて模糊なヒヤシンス
複雑な心露わに風信子
風信子難読名を子に付けし
新妻は週に一回ヒヤシンス
パソコン教室かるんの風信子
初恋の人に似ているヒヤシンス
かうかうと夜が降りてくるヒヤシンス
学び舎の手吹き硝子の風信子
遠く見し夫の怒りや風信子
ヒヤシンス定位置ここと咲きにけり
やわらかに診察室に風信子
風信子靴箱の上日が差して
飾り窓に光の屈折ヒヤシンス
水をやる風信子らは「有難う」
彩雲の降り立つやうにヒヤシンス
母想ふ厨の窓の風信子
鉢一つ眼科待合風信子
日記帳お休みしてるヒヤシンス
明るさは歯医者の窓のヒヤシンス
とりどりに出窓に競う風信子
美しく別れて真昼ヒヤシンス
留学の子に出すはがき風信子
姉のことお願いします風信子
ヒヤシンス揺らす風ありそぞろめく
子等は皆祭に行く夜の風信子
風信子振り向かせたき人のゐて
風信子置いて過去へと迷いこむ
ダンプカー踏まず現場の風信子
剪りに出て剪るに隙なしヒヤシンス
風信子もじゃもじゃ頭を想起して
主亡くも色香は失せず風信子
風信子何かが滑り落ちる音
風信子無口な主純喫茶
土固き寺の植栽ヒヤシンス
よくもまあひげ根伸ばして風信子
水耕の髭根やさしきヒヤシンス
カーディガン羽織りし朝風信子
球根に赤と書かれし風信子
空き寺の置き去りの鉢風信子
積読の山が崩れて風信子
ヒヤシンスみんなで一斉にオハヨー
伸びしろのたつぷりすぎるヒヤシンス
ヒヤシンス女あるじは高き襟
君が好き蓼食う虫も風信子
入選はするんだけれどヒヤシンス
しんしんと夫を待ちけりヒヤシンス
風信子眠たい色の徹夜明け
深煎りのコーヒーいれてヒヤシンス
ヒヤシンス窓辺に置いて夜を待つ
風信子フリルの服の男行く
剃り上げし顎清々しヒヤシンス
風信子せっけい図にも一花そへ
風信子我が子は雲に乗りたがり
モルタルの朽ちたる駅の風信子
惑星の電波の届くヒヤシンス
アフロだと風信子を見てさう思ふ
風信子我と同じや密集根
風信子黙って愚痴を聞いている
ヒヤシンス鋭く直きものの先
窓拭きの窓から覗く風信子
月煌々花香妖艶風信子
歯科椅子より児の泣き声やヒヤシンス
風信子不眠続きの窓眩し
銀の鈴さざめき合うやヒヤシンス
風信子てんらんの君は若いまま