兼題「暖か」__金曜俳句への投句一覧（４月２４日号掲載＝２０１5年３月３１日締切）
2015年4月3日8:46PM｜カテゴリー：櫂未知子の金曜俳句｜admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』２０１５年４月２４日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【暖か】
折れし枝の花ほころびて暖かし
あたたかき風満帆に練習船
くねくねの道に神居るあたたかし
あたたかな雨パーラーの別れかな
味噌蔵を開け放つ朝暖かき
暖かやバスの一駅歩きけり
あたたかしやっと見付けし鯛の鯛
暖かや生涯に酌む酒の嵩
あたたかや鳩追ひかける子を追うて
暖かやＤＪ声をはずませて
我が心暖かくする我６人
あたたかや鍵ひろふとき髪にほふ
堀に沿ふ茶屋暖かき薄茶かな
暖かや母は幼女に手を引かれ
バス停の人の間空きて暖けし
綿棒が耳たぶに触れ暖かし
子と歩く歩道の石の暖かし
暖かきベンチに隣る人ありて
捗りし仕事の数や暖かし
暖かき空気と共に孫来たる
あたたかや雑巾掛けの子等の尻
学舎を染める朝日の暖かき
あたたかに薬師如来の薄目開く
旅に出よ人に語れと暖かし
定位置に卵生む鶏あたたかし
野にあれば心はすでにあたたかし
あたたかやのったり喋る講釈師
孫の笑顔我が心を暖かに
汗ばんで暖かるなる昼すぎに
連れ合いの小言も絶えぬ暖かや
便箋に手紙の透けてあたたかし
暖かな雨なら濡れてみてもよし
春近し我が心は暖かに
暖かやまぶたを閉じて風を受く
あたたかし最後にチンと鳴る機械
あたたかしタクシー中に音あふれ
暖かやお岩出るよな風が吹く
人連れて歩く犬みな暖かし
ひざに抱くみどり児ぬくし目を細め
あたたかや揺り椅子の影伸び縮み
暖かな日差し潤う木立かな
暖かし見知らぬ街に富士見坂
あたたかな雨みどりなる無人駅
裸婦像の臀部豊けしぬくい雨
暖かや園児らと手を振りあへば
朝帰る猫のあくびのあたたかし
恐妻のふりをしていて暖かし
外歩き陽気なりけり暖かさ
小半時魚信なき竿あたたかし
だれとも口をきかぬ日やあたたかし
いつも行く屋台のおやじ暖かし
古本の黄ばみ具合の暖かし
あたたかや遮光土偶と相まみゆ
暖かき酒飲みあいし友逝けり
寝屋で聴く夜の靴音暖かき
あたたかやハンマーの音軽くなり
暖かや河滔々と海に入る
米朝の死や暖かき落語会
あたたかき墓前の煙ゆらぎなく
暖かや読破のしたき本の数
春がきて外暖かが心地よく
山青き河原の石の暖かさ
あたたかし車で行けば停められず
農業屋トイレを借りてあたたかし
給料袋で貰う給料暖かし
あたたかや反戦フォークのレコード
あたたかき峠の春を忘れまじ
暖かや猫の夜遊び多かりき
暖かや爪先までも陽にまみれ
暖かし野球少年声がわり
暖かき少年の髪に触れにけり
暖かや売約済みの分譲地
暖かき川柳談議土曜午後
暖かき名前の人と過ごしけり
暖かやどこを切つても金太郎
黄昏のやうな人来てあたたかし
暖かや開会を待つパイプ椅子
暖かき日に疎かな油断あり
あたたかしヒントだすなら一文字で
日をはじく笹生さみどり暖かし
暖かや田水の満つるまで思索
白を着てお出かけ家族あたたかし
あたたかし知らない人に声かける
あたたかし学恩といふ言葉もて
暖かやけふも母者にしかられて
暖かや燕そろそろ来るころか
あたたかや坂を転がるにぎりめし
暖かにサイレンひとつそれつきり
青春の暖かき日や胸に持し
あたたかや山なりの球投げ合うて
暖かや生命線の少し伸ぶ
我が懐暖かだった頃あったかな
暖かや貧しき顔も笑み増やす
あたたかやみな定位置の川の釣
あたたかやちよいとそこまで歩きたし
臍見せて跳ぶ縄跳びや暖けし
暖かや夜道をかへる寄席はねて
解けたる靴紐踊りあたたかし
あたたかし花壇に陶の小人ゐて
古書店の常連客や暖かし
あたたかや丸いテーブルまるい椅子
碑に弥陀の線刻暖かし
池に向き座るベンチのあたたかさ
登山路にかはす挨拶あたたかし
暖かや爪研ぎ忘れ猫眠る
駅出でてすぐに海原あたたかし
窓開けて光る埃の暖かし
くすぐりにハニカム構造あたたかし
暖かや線刻の弥陀なぞる指
大木の裏側は洞あたたかし
レース開け暖かき庭覗きけり
あたたかや正しく古ぶブロマイド
暖かと次に続くる暑い夏
暖かや大の字に寝る猫と吾
巡礼の置きし小石のあたたかし
あたたかき肌理こまやかな西施かな
あたたかし虫一匹といる領地
あたたかやたこ焼きの蛸大ぶりな
あたたかし十七歳と列にいて
老の身と心にじわり暖かさ
暖かやオープンカフェの馴染み客
あたたかき大空に鳴る鳶の笛
割り箸でつくる鉄砲あたたかや
あたたかや売れさうもなき古書並べ
日傘みる体が感じる暖かさ
足の爪きれいに揃え暖けし
暖かやまだ新しき車椅子
あたたかやもう恋をせぬ猫とゐて
暖かやはくばの山に馬はねる
子供らの頭を撫ぜて暖かし
バイエルをさらひをるらしあたたかし
高め合ふ晶子鉄幹あたたかし
黒板に寄せ書き満ちて暖かき
音粒に解れ君が代あたたかし
暖かし勢い増せる雑草ら