兼題「苔の花」__金曜俳句への投句一覧(7月31日号掲載=2015年6月30日締切)
2015年7月13日7:18PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2015年7月31日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【苔の花】
屋根一面苔の花咲く過疎の村
頼もしや富士山麓の苔の花
実事を十八番としたり苔の花
何思ふ遠目の秘仏苔の花
結びの地苔の花撮る帰りかな
苔の花霧の中より光りけり
熊楠のいつ蘇る苔の花
苔の花滴一滴に潤えり
水滴を侍らせてゐる苔の花
盆景や岩に花苔あしらひて
ビル街に小さきオアシス苔の花
登り来てなほも木立や苔の花
側溝に水増え映える苔の花
苔の花一葉汲みし井戸端に
下町の地べた賑はふ苔の花
銭苔の花パラソルや庭の浜
苔の花写真を撮りしつもりの地
座禅終へならす足腰苔の花
本降りとなり下り坂苔の花
夜の風香りが蒸れる苔の花
早世のときの生き方苔の花
雨催さへも深慮と苔の花
辺境の三角点や苔の花
苔の花末期のまなこもて眺む
我こそと背伸びしてをり苔の花
やわらかき苔むす岩や苔の花
踏まれてもまた生き返る苔の花
野仏は木陰に座して苔の花
完黙は苔の花とも通底し
深閑と木霊のひびく苔の花
隅といふやさしき翳り苔の花
小さくとも飽きることなき苔の花
何もかも洗ふ流しや苔の花
苔の花薄暗がりの秘仏かな
ミニチュアの樹海と見ゆる苔に花
苔の花削って掛ける菅の笠
野地蔵の視線に屈み苔の花
口閉ざしゐても揺れをり苔の花
うつかりもぼんやりもまた苔の花
こはごはと庵入りにけり苔の花
苔の花南の方に群がれり
山側に苔の花見てあらぎ島
足跡がゆっくり戻る苔の花
苔の花咲く敷石の本籍地
墓洗ふ桶に汲む水苔の花
思ひのままにならぬ人生苔の花
父祖の地のいまも押しあふ苔の花
千年の古木を讃え苔の花
片恋は昇華するもの苔の花
声持たぬ営みもあり苔の花
声出せばみな愚痴になる苔の花
手水鉢に老松映る苔の花
古すぎるデートコースや苔の花
京町家アトリエにして苔の花
南方に苔の花咲く地帯かな
老木を労るごとく苔の花
細やかに光凝りたる苔の花
戦争を知っておいでか苔の花
吾影をふはりとのせり苔の花
水門に水のしたたる苔の花
幽かなる踏跡ありて苔の花
ほのぼのと足許灯す苔の花
降りそうで降らぬ曇や苔の花
苔の花声明を聴く御堂下
苔の花旧家の並ぶ宿場町
早朝の霊気を浴びて苔の花
戦さなき城の石垣苔の花
遠近に動く焦点苔の花
花街に迫る夕暮れ苔の花
笑いあうばばじじロード苔の花
倒木の乱れ重なり苔の花
人に逢ふ仕事の靴や苔の花
苔の花どうせこの世は暇つぶし
安保法制などいらぬ苔の花
どの墓も守る人絶えて苔の花
石塔姿の梵字くきやか苔の花
猫の足ふうはり載れり苔の花
町家路奥の奥なる苔の花
苔の花夜来の雨のたつぷりと
あらぎ島訪ね行く道苔の花
いつの世も嫌はれどほし苔の花
ほの暗き樹林の道や苔の花
夜の風乗ってかすかに苔の花
切り通し見上げて賞でる苔の花
里帰り迎へてくれし苔の花
生家なる雨に禁足苔の花
本殿を包囲してゐる苔の花
翁の傍に蕪村の墓や苔の花
古都深き雨の匂いや苔の花
路地裏の苔の花からゆふぐるる
神宿る熊野古道や苔の花
庭石に程よく咲けり苔の花
苔の花天上の花と見まがうよ
倒木にさらに一花苔の花
知り尽くす庭師の技や苔の花
洞窟で朝には開く苔の花
天目指す峠の道や苔の花
木漏れ日の静寂に沈む苔の花
そこそこの会社人生苔の花
青畳寝転び見ゆる苔の花
本降りになるやもしれず苔の花
【その他】
※「金曜俳句」では雑詠は募集しておりません。ご注意ください。
高一の熱き想いやかすみそう
青田風あらぎ島より吹き上がる
甚平で市議選へ行く田舎町
ノラの仔に少し追いかけられにけり
ほうたるの湧きいづる郷清水かな
雨蛙姿を見せず声高し
ほうたるや清水温泉湧きいづる
こやすぐさ老いてゆきたしひっそりと
酔人と雨蛙啼く今宵又
この先の覚悟を決めて新茶酌む
面倒な奴で結構蝉しぐれ
和紙の里青山椒の生籬も