兼題「鮭」__金曜俳句への投句一覧(9月18・25日合併号掲載=2015年8月31日締切)
2015年9月1日6:49PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2015年9月18・25日合併号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【鮭】
さえざえと鮭のぼりゆく母郷かな
ぼろぼろの尾ひれ誇りつ鮭きたる
鮭帰る生(ア)れの約束果たすべく
極悪な鮭が居たなら売れっ子に
俎の鮭強情にはみ出しぬ
お裾分けせぬ初鮭でありにけり
その母は川かもしれぬ鮭上る
鮭一尾のぼりきたるを打ち据ゑて
鮭旨し燻製も良し鮭すすむ
みちのくの川辺に朽ちし鮭番屋
鮭のぼるひかり川瀬の光とも
例外なくときめきに死す鮭である
鮭にぎり味格別や山登り
鮭帰る谷川騒ぎ飛沫たつ
鮭切り身国の形に似て来たり
逆らひて流れは黒き鮭のぼる
鉤鼻を岩にぶち当て鮭のぼる
初鮭やあの男優のこと思う
鮭を待つ猟師にヒグマ猛き鳥
まつさらな皿にピンクの鮭咲きぬ
タクシーを降りて白樺鮭鮭のぼる
鮭のぼる背鰭を風にふるはせて
鮭帰るコタンは遠くなりにけり
空港とハイウエー下り鮭届く
秋鮭の思ひを遂げて流れゆく
鮭なべで丸ごと食べてエコライフ
荒海の潮押し寄す鮭下風
群登る鮭皆不逞の面構へ
鮭帰る何をたよりの旅ならん
鮭はいま北洋の冥海を回遊す
鮭のぼる野中の古い釣り針屋
はららごの飯は土鍋で炊きたまへ
川音も波も高まり鮭帰る
初鮭や北へ戻りしままの友
鮭皮の靴はいて来るカムイかな
鮭帰るオホーツクよりおろしゃより
切身にも鮭のプライド濃紅
鮭上る母なる川へうねりをり
鮭の死屍白しハシブト来てゐたり
川沿いの声援うけて鮭のぼる
星の色濁らぬ川や鮭のぼる
夕暮れに親父が見えて鮭のぼる
のぼる鮭川曳くごとき威勢かな
鮭の網川を引きずり揚げらるる
身を削る由一の鮭にあいにけり
大家より貰い物だと鮭貰う
にび色の空きらめかせ鮭のぼる
打ち上げて風に吹かるる鮭の腹
鮭のぼる命尽くまで川濁す
母さんが鮭背負ひたる家路かな
鮭遡る歴史や河口広げたる
鮭のぼる満身創痍射精する
さかのぼる鮭あの川を我刻を
上り鮭弾かれて跳ぶ早瀬かな
サーモンと呼びて孫らに鮭食はす
鮭のぼる岡本太郎が目の奥に
背波立て鮭登るらし北の川
国会を包む叫びや鮭上る
海老キャベツ鮭の薄味不可とする
昼餉には並んで鮭の御結びを
鮭食うやヒグマの気概無かしも
老いてなほ叔父貴はサヨク鮭のぼる
辛塩の切り身の鮭の薄さかな
初鮭やアスパラの緑添へられて
鮭のぼり初むる音聴く夜のひと
遡上する鮭の大群川祭
鮭打ちし棒より垂るる雫かな
谷川を夜目にもしるく鮭のぼる
甘口も辛口もあるもんか鮭
食卓の鮭が鎹果たす夜
園児たち鮭の御結び頬張れる
そのあとは打たれるために鮭のぼる
戻るなら鮭の嗜好は日本なり
民主主義の源流ありや鮭上る
菜ばかりを食ふ鮭打ちを見し後は
無残やな創痍満身鮭の腹
秋味や裏の小川へ手掴みに
鮭のぼる我も出産里帰り
憑かれたる異形の群れや鮭のぼる
遡上鮭そのエネルギー尊かり
縄文の遺構堅固や鮭のぼる
釣りすぎし鮭や帰りに持て余す
宙に星三面に鮭ひしめける
初鮭を羆のごとく食いたかり
鮞を抱へ群なし鮭登る
傷つけどなほ上流を睨む鮭
百円や鮭一切れの塩具合
折角の遡上の鮭の捕へらる
鮭のぼる鮭魂祭のかたはらに
鮭群れて川の膨らむ遡上かな
せせらぎに交じるは鮭を打つ音か
上り鮭骸となりて瀞に浮く
鮭のぼる帰宅困難区域かな
【追加分】
縄文の遺跡そびらに鮭のぼる
奔流に磨かるる鮭のしろがね
白米の隠れはららご飯となる
初鮭の修羅を潜りて来たる貌
鮭の秋なるや銃声遠からず
鮭小屋の山の動くを待ちゐたり
鮭遡上黙々とチカ釣つてをり
鮭遡上終へし水底輝けり