兼題「葱」__金曜俳句への投句一覧(11月27日号掲載=2015年10月31日締切)
2015年11月5日4:46PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2015年11月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【葱】
納豆に刻む寸土の葱一本
泥菊の一皮むけた白さかな
バッハてふ快楽の渦に葱刻む
見合の席葱は好きかと問はれをり
焼葱を首にまわして着膨れぬ
葱荒く刻む父似のわが十指
白葱や兵器のごとく束ねられ
葱一本後退りして抜き取りぬ
葱坊主畑の主なり顔となる
上州の葱をつかの間わが庭に
焼き葱の出し惜しみせず甘くなり
葱置かれ人間に成る事夢む
葱刻む俎板の音母の音
葱の葉の玻璃と音してこはれけり
野菜庫に入れむと葱の青落とす
ネギの側小学生らぞろぞろと
新弟子の篭をはみ出す葱太き
葱刻む音のほとりの我が家かな
さしあたり葱一本があればよし
葱洗ふ大内宿のせせらぎに
いまもなお確実に葱刻む妻
ベランダの葱のかすかなひかりかな
風の道畝高々と葱畑
この葱を育てし方の笑顔かな
夕暮れに引く葱やけに瑞々し
身の細き葱の畝立つ夕畑
葱の汁深夜に沸騰させて居る
京野菜の銘賜りぬ九条葱
叱られてまた叱られて葱畑
ざくざくと切らるる葱のさびしさよ
葱刻みかへって葱の葱らしく
深谷葱太く短く緑濃く
嫁となり背で泣きしこと葱刻む
葱を焼く間に気に入りの徳利かな
葱折れて四散したるも絡まらず
豊かさも貧しさもなく葱並ぶ
人間に無くて葱持つ気骨あり
脳天に雨の前ぶれ葱囲ふ
葱なくば納豆食へぬと言ふ男
京浪速葱の色目を使ひ分け
葱刻むときの母者と重なりぬ
一本の葱だけ元気エコバック
愛ゆゑに妻にたつぷり葱食はす
葱刻む母の母たる由縁なり
武州路を歩く左右に葱畑
そば旨しネギの風味や妻を見る
葱引けば信濃の土の綻びぬ
都落つしみじみ葱の白さかな
泥葱を抱いて匂ひに噎びけり
葱を切る冷たき音や夜の雨
六列に前へ倣えと並ぶ葱
長葱を振りて確かむ身の詰まり
土付きの葱のよろしき道の駅
きぬぎぬの葱のぬめりを浮かべけり
葱畑にヤコブの梯子懸かりけり
刻み葱ふんわり細くてんこ盛り
葉ネギ達鋭く立ちて柔らかし
太き葱一本焼きて独り酒
葱噛めばひょろりとぬける熱き芯
雲行きの危うくなりし葱畑
畝高く土寄せられし葱畑
籤引のごとく一本葱を抜く
切り甲斐の太さの葱や鍋用意
詩人まだ貧しき頃の根深汁
葱なくば脇役居らぬ舞台かな
あの頃はあんなに嫌つた葱だけど
武州路の葱の畑の中にあり
葱畑思い浮かべて笹に切り
葱下げてまぬがれがたき俗世かな
鯛焼を食ふて浦島花子かな
葱切るも初体験なる古稀迎へ
我が畑の優等生やネギを切る
葱並べ無人販売ひとを待つ
北窓の鉢に葱の根挿す厨
鯛焼屋昔狸の瀬戸物屋
葱抜いて夕景まろき郷里かな
薬味てふ葱の役割しみじみと
ベランダの葱一本の一人鍋
縋ることわれに許さじ深谷葱
葱の束スーツのおれに妻買はす
葱並べ並んで居ない下部出来る
風強し下仁田葱の太さかな
葱洗う小川の水の速さかな
葱白し夕餉の町を急ぎけり
夕暮の買物かごの葱の先
一文字の真一文字に並びをり
行間を読み解くやうに葱を剥く
鴨買うて葱買わざれば落ち着かず
現るる白き素足や葱洗う
一文字の曲がり止めとも払ひとも
葱畑の横にマンション建ちにけり
道は前へ畝は左右へ葱は天へ
葱の根が切られ白さを増しにけり
一文字やまだまだ熱き志
師います句座廃れざり根深葱
生命は分葱となりて地に在りし
子を叱るあはひに刻む葱一本
葱畑や風雲急の天を指す
サービスで貰いし一把青き葱