兼題「寒見舞」__金曜俳句への投句一覧(1月29日号掲載=2016年1月4日締切)
2016年1月12日6:08PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年1月29日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【寒見舞】
お内儀の筆にて届く寒見舞
吉報も添へられてある寒見舞
南洋の光まばゆき寒見舞
筆無精メールで済す寒見舞
震災後定番なりぬ寒見舞
寒見舞犬の話もひとくだり
赤道の向かうから来し寒見舞
寒見舞そろそろ帰らねばならぬ
催促の土産たまはる寒見舞
忙中の閑に幸あれ寒見舞
彼の家のドアノブに掛く寒見舞
寒見舞また会う日までその日まで
電子メール寒中見舞瞬時なる
留守電に耳福の寒見舞など
寒見舞句集一冊携へて
寒見舞南の隅に夕日落ち
寒見舞切手図柄もメッセージ
託されし水茎凛と寒見舞
寒見舞卒寿の母に励まされ
友の母より黒縁の寒見舞
ぱっと見はラブレターかな寒見舞
寒見舞日本酒なども届きけり
喪の人に励めと寒中見舞かな
絵心の母に芽生えし寒見舞
病棟の明るき廊下寒見舞
大伯父の文字も無骨な寒見舞
やりとりの終へるときかも寒見舞
寒見舞何時の間にやら数増えて
寒見舞避けて電話でぼそぼそと
寒見舞返りて聞ゆ友遠し
パソコンにお辞儀する友寒見舞
なつかしき声の大きさ寒見舞
里つひに兄嫁ひとり寒見舞
悩み事秘めたまま去る寒見舞
寒見舞議論楽しも道暗し
寒見舞来るや雪を踏みならし
手を握り肩撫でている寒見舞
花が消え迷える蝶を寒見舞
寒見舞北の国から早々に
吾が一病隠し寒見舞かな
寒見舞千羽鶴の飛びにけり
鼻に坐す疫病神や寒見舞
手紙来る寒見舞などは伏せられて
迂回して探す言の葉寒見舞
立つといふ卵なりけり寒見舞
寒見舞喪中葉書の来し友に
寒見舞骨身感冒水道管
九十婆のけふ日の話寒見舞
お互に老をかこちて寒見舞
寒見舞運河の路のよろしけれ
欠礼を小さく詫びて寒見舞
持ち重るしぐれ煮兄の寒見舞
焼きたてのパンを抱へて寒見舞
寒見舞パソコンの前で眠く成る
行くべきか行かざるべきか寒見舞
さびしらの犬ついて来る寒見舞
病む友に励まされをり寒見舞
寒見舞師弟の区別つかざりき
祖母遠し思い出少し寒見舞
梅の木戸くぐる笑顔や寒見舞
寒見舞定年の後を知りたくて
大正琴二面並べて寒見舞
こころよく羊羹つまむ寒見舞
帰国して徒歩にて寒中見舞いかな
寒見舞にもかかれたり子の笑顔
持参さし酒を飲み干す寒見舞
遅からずとも早からず寒見舞
子を持ちし子より届きし寒見舞
君が好き紅茶色した寒見舞
味噌の香の部屋に広ごる寒見舞
ゐるやうに故人のことを寒見舞
寒見舞届くコトンと音立てて
退院のあり得ぬ友や寒見舞
寒見舞みちのくの幸選りにけり
寒見舞もう一駅の故郷かな
寒見舞やや佳き紙を選みけり
寒見舞言葉探して遠回り
仔猫みな嫁ぎましたと寒見舞
祖母静か更に冷えろや寒見舞
黒々と無沙汰詫びゐる寒見舞
喪の家へ丁寧に書く寒見舞
採りたてを勝手口から寒見舞
異国より土産をもてり寒見舞
魚さげヨゥと顔出し寒見舞
鶏を飼ひたる家に寒見舞い
大漁の魚籠から貰ふ寒見舞
賀状欠き無沙汰をわびる寒見舞
消印の雪に滲みし寒見舞
寒見舞友の噂を手土産に
寒見舞遠離りゆくか級友よ
七人の敵も老いぼれ寒見舞
提携の言葉に埋まる寒見舞
やりとりの終へしつもりが寒見舞
寒見舞放蕩息子は帰り来ず
饅頭を添えて届ける寒見舞
寒見舞どこか寂しき絵柄かな
読み返し読み返し泣く寒見舞
ひとすぢの畦を伝ひて寒見舞
寒見舞ペンの力に頼りけり
書きそへる酒の誘ひや寒見舞
大丈夫ウイスキー持ち寒見舞
怒らせて気後れて出す寒見舞
故郷のお裾分けです寒見舞
癒えたりと北の国から寒見舞
定年といふ字ありけり寒見舞
散歩路の犬が尾を振る寒見舞
寒見舞意外に元気励まさる
寒見舞母に似て来し姉の顔
影もまた影と語りぬ寒見舞
添書に決意のあるや寒見舞
税金の知らせにまぢる寒見舞
無精ひげざらりとこすり寒見舞
寒見舞手土産すこし足らざるか
寒見舞さびしい時は二度見する
寒見舞リスの住む木に胡桃置く
寒見舞口笛のごと届きけり
消息を確かめがてら寒見舞い
モルヒネのやうなやさしさ寒見舞
聞き流す病気自慢や寒見舞
寒見舞い心紛らす友がいて
ぼつてりと桃カステラや寒見舞
寒見舞観劇券を二枚入れ
スカーフとジャムを土産に寒見舞
野に蝶が温もりくるみ寒見舞
寒見舞今年も来たよ小鳥二羽
達筆が嫉妬を煽る寒見舞
寒見舞頼りなき字で書かれあり
万華鏡作りし人を寒見舞
入院と聞きたる友の寒見舞い
豆菓子の箱から零れ寒見舞
直訪はお断りなり寒見舞
寒見舞嫁から届く生一本
雪積もる北の国から寒見舞
あかき絵の余白に小さき寒見舞
朱き花描いて寒中見舞とす
軒灯ににじむ筆文字寒見舞
喪に服す気丈な人や寒見舞
友寄越す飲めや泣けやの寒見舞
視野暗く明かりの点る寒見舞
寒見舞SMSで取り敢えず
訃を告ぐるためだけに書く寒見舞
待つほどに期を逸したり寒見舞
寒見舞喪中の庭に雪のなし
寒見舞猫の様子も書き添へて
もてなしの蒟蒻煮へて寒見舞
数多来るチラシに混じり寒見舞
寒見舞南半球からですか
ワイン提げ饒舌となり寒見舞
新聞で猪肉包む寒見舞