兼題「生姜酒」__金曜俳句への投句一覧(1月29日号掲載=2016年1月4日締切)
2016年1月12日6:11PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年1月29日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【生姜酒】
生姜酒ふふみ阿弥陀のごとく座す
一人夜の気ままな趣向生姜酒
生姜酒実家に残る薬箱
人麻呂にすすめたかりし生姜酒
着膨れて掌に囲い込む生姜酒
産土の記憶を開く生姜酒
生姜酒また一段と身の震ふ
生姜酒効くか効かぬは二の次に
冷え性の妻に一献生姜酒
万病に効くといはれて生姜酒
山伏の脚絆を解き生姜酒
恐ろしき寝物語や生姜酒
生姜酒濁音語尾の上がる町
生姜酒チューブで入れて舌出す子
生姜酒男優りの女人病む
ひたひたと塗るもの塗つて生姜酒
真夜中といふべき地震や生姜酒
遙けしや昭和の香り生姜酒
生姜酒火気厳禁の札赤し
半島の先の故郷や生姜酒
深夜ラジオテネシーワルツ生姜酒
花色の猫鼻面に生姜酒
生姜酒出して爺むさしと笑ふ
父の顔孫に似てをり生姜酒
厨房に生姜酒無く脱力す
轟々と竹騒ぐ夜や生姜酒
絶望せぬとふ処方箋生姜酒
手の窪の薬飲み干し生姜酒
藪医者にいくかいかぬか生姜酒
休肝日なれど許せよ生姜酒
まなうらに血の通ひたる生姜酒
わけもなく気弱になりて生姜酒
生姜湯に黒飴一つ顔見上ぐ
重ねたる襟元寂し生姜酒
待ち人の遅れて来たり生姜酒
生姜酒明日は届くと告げられて
冷え性の君情厚く生姜酒
生姜酒どこか安堵の味すなり
生姜酒?痩けて増す男振り
生姜酒いつか消えゆく村に棲み
口重き南部をとこや生姜酒
生姜酒硝子戸ごしの低き空
治すべき酔ふべき兼ねし生姜酒
旧家てふ梁高くして生姜酒
長生きといふもほどほど生姜酒
温もりを多少感ずる生姜酒
長命の家系に生まれ生姜酒
仲直りきっかけとなるや生姜酒
生姜酒一杯ごとに沈む空
静謐や冷えびえとして生姜酒
比律賓の義姉より冷やで生姜酒
生姜酒そそぐコップの傷深し
耳朶や血の還りくる生姜酒
きつね眼の女自愛の生姜酒
湯気に噎せ吹きさまし飲む生姜酒
一人家事一人厨の生姜酒
擦りおろし軽く摘んで生姜酒
一行の日録記して生姜酒
妻籠に酌み交はしたる生姜酒
生姜酒飲んで辿りし夢路かな
生姜酒生涯酒を友として
鶏も牛も寝入りて生姜酒
生姜酒どうぞと下戸の妻がいふ
生姜酒米寿で逝きし父のこと
出張の切符は明日や生姜酒
生姜酒つい後を引き縄のれん
ポスト見て生姜酒など届きけり
生姜酒振る舞われ見る里歌舞伎
生姜酒グラスにそぞろ降る小雪
不確かなあしたや今日の生姜酒
生姜酒仰臥漫録捲りつつ
会ひし事なき祖母の顔生姜酒
生姜湯や貧しき日々の掛け布団
指切りの約束守る生姜酒
生姜酒に卵酒を添へ飲み過ぎか
いろのなき無言の道や生姜酒
おほらかな家系のよろし生姜酒
幾重にも顔見せし夫の生姜酒
常宿の夜更けに生姜酒二つ
生姜酒薬と思へば美味なりし
米朝師悼む今年や生姜酒
生姜酒ふと神さびて父の声
瞑りて喉一本に生姜酒
まひるまの生姜酒の香淡きかな
生姜酒こぷりと鳴いて猫跳ねる
溜息のつくるさざなみ生姜酒
生姜酒嫌味の二三聞き流し
風邪の子の指す生姜酒ほつちりと
格別の仕込みを隠す生姜酒
B面をしばらく聴きぬ生姜酒
サーファーのわらわら集ふ生姜湯
サラリーマン不自然に生く生姜酒
一人夜に棋譜並べつつ生姜酒
いつもより広い部屋なり生姜酒
客室へ長き廊下を生姜酒
未来にも生姜酒は残りしか
生姜酒五臓六腑の温みかな
風強し祖母の香りや生姜酒
隣り家の早や灯の消えて生姜酒
今日もまた乾布摩擦と生姜酒
言ひ訳の小振りの器生姜酒
生姜酒差し出す母の顔青し
白髪の親子同士の生姜酒
薬飲む手つきとなりぬ生姜酒
火渡りの山伏猛し生姜酒
生姜酒作ってはくれぬかと要望し
障子しめ湯気ちんちんと生姜酒
闇に来て往くかぜのさき生姜酒
夜に入りて雨となりたる生姜酒
下戸なれどまなじり決し生姜酒
暖めて発散せよと生姜酒
生姜酒汽車にずいぶん乗った日に
三回忌残るふたりの生姜酒
二人して枕並べて生姜酒
生姜酒人恋しひと言へぬから
子供部屋遥かに生姜酒啜る
生姜酒二本を四人で分けあへり
晩酌の〆となりたる生姜酒
生姜酒目口耳も塞ぎけり
医学書を閉じし机の生姜酒
生姜酒一つ残りし白熱灯