きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「桜湯」__金曜俳句への投句一覧(2月26日号掲載=2016年1月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年2月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【桜湯】
桜湯や晴れて年金生活者
停電も桜湯ならば心の灯
湯上りの喉元過ぐる桜の湯
桜湯や両家和解の空の色
桜湯やドレスの友のはにかみて
桜湯や縁に口紅さし残し
桜湯に占ひたまえ母の恋
手に囲ふ桜湯の香や頬を染む
桜湯のほどけて深呼吸のごと
貧にして全きふたり桜漬
桜湯やチェホフの伏せて置かれをり
仏具屋の小さき裏庭桜漬
桜湯や語り合いたき遠き友
桜湯や膂力といふはおみなにも
桜湯の香にもてなさる仏具店
桜湯や見つめる時間の豊かさよ
桜湯や不束者と前置きし
桜湯や妻に恋した日のごとし
につこりと笑つてをりぬ桜漬
桜湯や茶碗に開く八重の花
桜湯に話し品良くなりにけり
古伊万里に香る桜湯鄙の宿
さくら湯のひらくや静御前舞ふ
桜湯のかほりにひらく記憶かな
桜湯や話す言葉もゆっくりと
さくら湯にほっと息つく寒さかな
開きたる桜湯もまた水中花
さくら湯のひと間を愛す余生かな
北欧の椅子を窓辺に桜漬
桜湯や吉野は雲を生み続け
桜湯の色ほのかなるその空気
桜湯の花の開きし恋実る
桜湯に噎せてむすめのをとこかな
桜湯の湯気のかたちにほのあかり
桜湯や互ひに伴侶なくする身
桜湯のブラジルにまで沁みとおる
桜湯をたれ待つこともなく啜る
客去りし碗に桜の紅残り
桜湯や我はやつぱり日本人
桜湯のじわりとひらき白磁かな
桜湯や枯山水の濡れ初むる
桜湯を最後の旅で妻求む
桜湯や金婚といふ半世紀
子等摘みし桜湯飲みて卒業す
肩書をとれば善き人桜漬
桜湯の花の開いて成談に
桜湯の寂しい夜なのメール来し
相方のにほひと桜湯のかほり
桜湯のほどけるときの時間かな
桜湯を出されとまどう男あり
夜遊びの過ぎし男に桜漬
桜湯にたった一つの過去浮かぶ
桜湯や妻と眺めた吉野山
御挨拶桜湯指輪綿帽子
桜湯や指に関節多かりき
桜湯の新鮮なる香去年のもの
摘む日からその桜湯に思ひ寄せ
さくら湯の心ほどける音のする
桜湯になりてやうやうなごみけり
桜湯の香り四方山色めきぬ
桜湯や五行で終わる日記帳
桜湯や採用通知母と読む
桜湯ややがては親となる二人
桜湯や眠りてほぐる幼き手
桜湯に華やぐ妻の愛らしや
桜湯をまず船頭に婚の朝
嫁に行く友入れし湯の花開く
教会で振る舞われし花湯飲む
湯に落す数に迷ひし櫻漬
桜湯はおさな児の香り色も又
さくら湯や桜を飲んで纏いけり
桜湯の味を忘れず50年
華やぎに塩味効かす桜湯かな
桜湯をふふみて拭ふ紅の跡
桜湯や香りに混じる潮味
霧雨の西行庵や櫻漬
さくら湯の結納に飲む座のぬくみ
吉野山見ゆるかぎりの桜漬
桜湯のもどかしさうに開きをり
桜湯や見合い話の詰め急ぐ
桜湯に明け放ちたる陽の入る
詩を読める桜湯感謝電車行く
桜湯や小さな笑みを返事とす
桜湯やまだ見習いの若女将
桜湯や茶碗の底のほの明り
ひとり飲む妻が残せし桜湯を
桜湯の椀より甘き風生る
桜湯のひらけば汐の香りかな
あとさきを考えつつの桜の湯
桜湯やたゆたふものの美しき
桜湯の花味わい尽くし成れの果て
わだかまり少し解れて桜漬
桜湯や妻の御機嫌直りしか
桜漬バク転したる碗の中
櫻湯の画数多き風呂場かな
桜湯や訳知り声の母の姉
桜湯や飲み干して尚華遺す
目を閉じたままにいただいた桜湯
桜湯で初恋談義はな開く
桜湯や可愛がられて弟ン坊で
桜湯のちひさき宇宙啜りけり
桜湯の出され長居の客を辞す
桜湯や太古のごとき己が婚
桜湯や広がり具合がきっかけに
気散じの書なるも端座桜漬
桜湯や閑話休題してゐたり
桜湯に相好崩す背広かな
桜湯のもてなしぶぶ漬けは帰れ
それぞれの思いか桜湯ほんのりと
桜湯のふくらみに座の和みけり
桜湯や解き放たれし時匂ふ
桜湯の蕊濃く去年の恋浮かむ
桜湯に去年の生き体浮かみけり
桜湯や母の語りし一代記
桜湯や足止めの雨止まずとも
厠ではいろいろ発生櫻の湯
桜湯のこころもとなき見合かな
桜湯や京の路地奥奥座敷
桜湯を無言で飲んだ初デート
桜湯に秘密語つてくれるなよ
桜湯や一口ごとに眺めをり
桜湯やあなたは先に嫁ぎけり
桜湯をそっと拵へ水晶婚
桜湯や川音高き旅の宿
桜湯を偽れぬから生きて居る
桜湯や呆けし母の真澄むとき
塩味(しほみ)足したき桜湯の実は透けり
桜湯や馥郁とした湯気を立て
桜湯や去年の想ひ出ぎゅっと詰め
桜湯の一つ足りなく嫁となる
桜湯淹れつまどろむや一周忌
桜湯や初顔合せの和みかな
ペン措いてまた桜湯を吹きにけり