きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「麦踏」__金曜俳句への投句一覧(2月26日号掲載=2016年1月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年2月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【麦踏】
麦踏や貨車空のままつづきけり
空はパラボラその焦点に麦踏す
窓に白髪の翁や麦を踏む
麦踏や若者は皆東京へ
あめつちのあはひ麦踏む点々と
麦踏の遊び気分もくたびれて
胸底に滾る思ひや麦を踏む
麦踏むや汝の言の葉踏みゆきつ
麦を踏むつのる颪に背を丸め
麦踏の手放さぬなり単語帳
アイリッシュダンスもどきで麦を踏む
幾世代続く生業麦を踏む
親存すうちは麦踏む線路かな
麦踏は核に震える人宥め
無駄話夫と並んで麦を踏む
里帰り麦踏み訓話友と飲む
麦踏は核の不毛に抗いて
麦踏の妻ヘッドフォン落暉おつ
麦踏や飛行機雲に背伸びして
黙々と麦踏愚痴は訥々と
後ろ手で麦踏む婆の達者なり
麦を踏む人点景に下総大地
畦道に赤児寝かせて麦を踏む
背と腹を交互にさらし麦を踏む
麦を踏む黒き足跡ローム層
麦踏みや遊びたき子も田に連れて
横向きになりて農婦ら麦を踏む
麦を踏むTPPは別にして
麦を踏む勤しむ姉の手拭いかな
麦踏や腕を組んだり揺らせたり
手伝いの子供ら去りて麦を踏む
麦踏や子らがおとなに変わるとき
麦踏は白杖要らず辿る足
麦踏みのゾンビの如き歩み見せ
麦踏の農夫(ひと)いつの間に野に消えぬ
夕焼けや麦踏む人のハミングかな
ともらいの列眺めつつ麦を踏み
麦踏みのその踏む足の優しかり
麦踏んだあと染め来るみどり色
麦を踏みては地を撫づる背中あり
鬱屈を以て踏みし麦さやさやと
麦踏むや風は山からも海からも
手拭ににじむ薄日や麦を踏む
麦踏や老いが骨身を攻め立てる
麦を踏む腰のラジオの寄席を聴き
左利きの夫と向き合ひ麦を踏む
麦踏や鳥よこかぜに流さるる
はらからの電話麦踏むこと添へぬ
麦踏は凍える朝に促され
二毛作は死語に近し麦を踏む
後ろ手に組み麦を踏む野球帽
麦踏や大地と言葉交はしつつ
麦踏を遠くながめし車窓かな
畝深き父祖の土地なり麦踏まな
麦踏の一人遅れてたわむ列
励ましつかつ労りつ麦を踏む
麦踏の地下足袋の跡乱れなく
麦踏や親子の会話弾ませり
なれそめに麦踏の足そぞろなり
我が誇り馴れたリズムで麦を踏む
移動する父祖の地までは麦踏めず
そよぐ麦とほくにためらひて芽踏む
麦踏や子に三歩先行かせけり
関東の吹つ曝しに麦を踏む
麦踏や子はあそびつつ親を見る
麦踏や可愛がりって何かしら
麦踏や藁しく土にやすみたる
頑なに機械を入れず麦を踏む
麦踏めばすぐ立ちなおる青さかな
麦を踏む足ゆるやかにゴルゴダへ
野を高く飛ぶ鳥のあり麦を踏む
麦踏や風のかたちに鳥の群
麦踏の足跡幾つ万歩計
麦を踏む平均台を渡るごと
麦踏や麦の葉つけて老いにけり
麦を踏む頭上にジェット機三里塚
麦踏や飛び交ふよいしよよつこらしよ
麦踏や細くなりたる父の肩
トルストイ好きの父亡し麦を踏む
麦踏みのつもりの大地父祖の土地
麦踏の次のステップ考えぬ
レンズ向け風物詩かも麦を踏む
麦踏みの一歩に土の重さかな
声かけし村人とほく麦を踏む
麦踏やリードの長き犬が友
麦踏みの父母見おろして児の遊ぶ
麦踏の畝やわらかく老い一人
漁村にも畑あり麦踏ただ一戸
考へをひとつにまとめ麦を踏む
遠山を蹴って麦踏終りとす
麦を踏む背中合はせで話しつつ
雪止みて麦踏む農夫の忙しくて
雪残る嶺をはるかに麦を踏む
麦踏んで誰彼となく独りごつ
背を丸め農婦麦踏む頬被り
麦踏は押し競饅頭めきてあり
麦踏や旅心もてもどりくる
麦踏や雪の連嶺遠くして
麦踏や天あり地あり唯一人
麦踏のうしろを通る三老婆
麦踏みの五寸程にもなりにけり
暈ある陽高々掲げ麦踏めり
麦踏みのたとへば一人旅ごこち
麦踏に手持ち不沙汰の粋をみる
麦踏むや父の残せし地下足袋に
とほき日の約束のごと麦を踏む
麦踏の踏まれ上手になりにけり
母逝きて一年あまり麦を踏む
麦踏をされぬ三男坊のぼく
麦踏や後ろ手の指右前に
リストラをされぬやうにと麦を踏む
イヤホンに津軽世去れや麦を踏む
伍萬回麦踏悲恋握飯
みづからを諫めるごとく麦を踏む
麦踏みの祖母の姿の散歩道
麦踏の今は愉しき田舎かな
出稼ぎの父の分まで麦を踏む
今生の地べた確かに麦を踏む
殺生を気遣いながら麦を踏む
麦踏や阿蘇の裾野を覚えけり
熊の毛を被りし子も麦を踏む
麦踏みの離ればなれの夫婦かな
無口とは我が家のしるし麦を踏む
麦踏の猪鹿その他お断り
麦踏みの訓話語れず泣く孫に
麦踏や泣きのギターを聞きながら
麦を踏む人の背を射る夕日かな
麦踏むや杖になじみの握り艶
麦踏や踏まれることに慣れました
大阿蘇の夕日に麦を踏みにけり
大空のもとで麦踏逞ましく
母はやや父に遅れて麦を踏む
麦踏や浮き足立つを窘める
麦踏や体を張って庇う土
麦踏めばひかりあなたに千曲川
くつがへる事なき想ひ麦を踏む
麦を踏む一歩踏み出す勇気かな
廃校や麦踏み訓話思い出す
日曜の校長先生麦を踏む
麦踏みやまだ濡れてゐる馬の首
麦を踏むTPPを憎みつつ
ざくざくと菜を切るごとく麦を踏む
長くなる己が影踏む麦を踏む
麦踏や吐息の白く安堵する
麦踏の背を風景の一部とす
麦踏や那須連山へ大落暉
麦踏の蹠の皺の盛り上り
少し麦踏ませてもらふ下校の子
麦を踏む胸のラジオの時報かな
浅間嶺や麦踏む人の影遠き
麦踏の園児にパンの配られし
麦踏や過ぎ行くばかりの人と物
十文の父の地下足袋麦を踏む
麦踏や終日寡黙押通す
麦を踏む村から町へ変わる日に
麦踏みや夕日傾き顔赤し
蒼天に向かふ平らや麦を踏む
麦踏の母の背を見て子らも踏む
人生の歩みの如く麦を踏む
万歩計五千の数字麦踏めり

【寒見舞】
干支の絵がひれ伏して来る寒見舞い
寒見舞い少し遅れて安堵する
南国より何もないがと寒見舞い
【生姜酒】
残業の亭主の電話生姜酒
【(不明)】
氷柱には遠く朝日の明日かな