兼題「キャベツ」__金曜俳句への投句一覧(6月24日号掲載=2016年5月31日締切)
2016年6月9日6:07PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年6月24日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
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【キャベツ】
地方紙のインクの滲むキャベツかな
リフォームのキッチン刻むキャベツ音
朝採りのざつくりキャベツ象の鼻
春キャベツむきて空腹しのぐなり
ざくざくととんとんとんと切るキャベツ
甘藍の芯の甘さを確かむる
甘藍の投げ売りに逢ふ日暮かな
ガサと切塩と並べて置くキャベツ
日曜日キャベツを刻む音の高し
くろがねの土振り落すキャベツかな
半島や棕櫚の道までキャベツ畑
キャベツ畑出荷を終えし若夫婦
キャベツ切り母の一日はじまりぬ
憂ひありキャベツ畑に月昇る
キャベツ切る恋の終はりし日のごとく
俎に弾み加えしキャベツかな
紋白蝶あおられ去りぬ甘藍葉
キャベツ高焼きそば好きにつらき年
夕食のキャベツ炒めに肉少し
キャベツ?くばりりとあをの濃きを?く
丸刈りの子のとびとびにキャベツ畑
独り身で働き者でキヤベツかな
丸ごとのキャベツを使いきる覚悟
飛ぶキャベツ止まって乳を飲む赤子
キヤベツ切る子沢山なる愉楽かな
キャベツ剥ぐひとりの昼のラーメンに
輪切りしたキャベツ複雑迷路かな
きざみ果て(つ)キャベツに赤を感じけり
甘藍のごろりとしたる青さかな
キャベツ剥く葉を朝露の転がりぬ
新キャベツとんとんきれば鳥も鳴き
ご近所に母の足取りキャベツあり
島の土固しキャベツの柔らかし
手のひらにひよッと弾ませ買ふキャベツ
主張せぬキャベツは我の青き日々
キヤベツの上(へ)豚肉如何にも威厳あり
今日生きてキャベツ畑の明日見る
千切りのキャベツの山を鷲づかみ
キャベツ畑越えゆく島の朝日かな
逆光に山むらさきやキャベツ畑
肛門をしめてゆるめてキャベツもぐ
芽キャベツのこの健気さを愛すなり
高原のくうき挟みしキャベツ剥く
キャベツの葉向くや草原広がりて
キャベツ千切りする毎に笊満ちて
後朝にをとこの刻む玉菜かな
皆同じヒト皆同じキャベツかな
キャベツ畑ひと風欲しき畑仕事
玉菜切るわたくし少し新しき
夜嵐の明けて甘藍瑞々し
甘藍を首斬る如く取入れす
やや哀しキャベツ畑の果てしなき
夕餉にはキヤベツ丸てふ船があり
大鍋にキャベツまるごと入れて煮る
新キャベツその中心の柔らかさ
たつぷりの愛に包まれキャベツ巻く
席題はキャベツと言うてどかと置く
新キャベツつかむ嬉しや畑に立つ
キャベツ畑うなりつぶせる様見たり
噴煙の流れて来たる玉菜畑
緑濃き甘藍の葉は?がしをり
甘藍や重みひと玉胎児ごと
一枚ずつキャベツ剥がせば音も鳴り
半玉のキャベツの芯に岐路のあり
捲れたる葉蔭の深きキャベツかな
不本意な半身のキャベツ売られけり
甘藍の八重のことばやさくさくと
採りたてのきゃべつ抱える家路かな
まだまだと刻みキャベツの細さ見る
キヤベツ掘る父の姿を空想し
キャンバスにまつすぐ描かれしキャベツ
跳ね上がるキャベツ盛られし肉料理
甘藍やコールスローは冷えてをり
あをむしを抱きて寥しかんらんよ
包丁に水の貼り付く新キャベツ
ぱつくりと丸く剥がるるキャベツかな
野菜室キャベツ主役として坐る
新聞の襞にキャベツの端が残り
キャベツから後とんかつをと妻指南
口中で転がしておりキャベツかな
カットされ迷路現る春キャベツ
キャベツ畑に沿う街道を托鉢僧
芽キャベツのコロコロ遊ぶ十時半
手に取れば甘藍重く手に移る
肝心なものは包めぬキャベツかな
栽培の本にキヤベツの御(おん)姿
虫喰ひを水抜けてゆくキャベツかな
大玉のキャベツ掬いて腕に抱く
キャベツ焼く畑の煙や煙草銭
甘藍の夜来の雨を弾きけり
玄関に置かれし朝のキャベツかな
青虫におどろくキャベツ無農薬
浅間峯やキャベツで埋る大地かな
甘藍や何を守って丸くなる
キャベツ半分も重たし祖父の腕
新キャベツ探し歩いて何軒目
トンカツや食べ放題の添へキャベツ
小海線キャベツ畑の中をゆく
キャベツ剥ぐ襞に多弁の詰まりをり
箱あけて隙間だらけのキャベツかな
青春の味のキャベツの芯の齧る
焼きそばの屋台の裏に積むキャベツ
器量より目方で選ぶキャベツかな
大玉のキャベツに刃入れ真二つ
見習ひのコックの刻むキャベツかな
暮れてゆくキャベツ畑の畝の果
半分で間に合ふ暮らし新キャベツ
丸々と我が田のキャベツ行儀よく
愛刻む如くにキャベツ刻む女
禅僧の刻むキャベツの芯尽きぬ
キッチンにキャベツを刻むママの音
列島へ旅立つキャベツ競りの声
描けよとキャベツの外葉言い放つ
音立ててキャベツ弾ける夜の畑
脇役の人気のドラマキャベツ食む
玉菜巻く星のある夜はなほ固く
キャベツ一個サラダにロール千変万化
青虫よこぞって集え甘藍畝
外の葉の折りて甘藍売り場前
自転車にキャベツ抱く子を乗せ走る
玉菜畑溶岩の転がる道端に
地の震ふ国の甘藍碧き石
野の光り一家総出のキャベツ畑
アジアからの妻玉菜の名まづ覚ゆ
ペンションの裏老シェフのキャベツ畑
千切りのキャベツの薄き絆かな
キャベツつゐにコロッケにはなれず
キャベツ切るアルペンルート開通す
糖尿にキャベツばかりをサクサクと
母のリズムで刻むキャベツの細き出来
高騰の四百円のキャベツなり
軽トラの荷台一面キャベツ摘む
骨はずす如くにキャベツの芯除く
侘びるままキャベツに塩を掛けるだけ
なんとなく甘える男キャベツむく
キャベツ持つ手と手触れ合ふ水面下
ほんたうに千回切りしキャベツかな
キャベツ畑蝶乱舞せし時在りし
キャベツ刻むリズムで解る機嫌かな
笑顔咲くキャベツ丸まる平和かな
甘藍にアンデスの笛聴かせけり
キャベツ剥く手は今日明日を占へり
次の恋もきつと似た恋キャベツ切る
蝶の舞ふキャベツ畑に遊びしは
小糠雨去甘藍稍膨居
ザクザクとキャベツを刻む日曜日
虫食ひの多きキャベツを選りにけり
酢キャベツの旨み増したる夕餉かな
高原のキャベツの露はころころと
かんらんや秘めたる想ひきつく抱く
部活帰りの娘山盛りキャベツ喰ふ
秘め事を暴くがごとくキャベツ割く
星満天キャベツ畑にかこまれて
白きこと恥づ内側のキャベツの葉
合宿の駅を出てすぐキャベツ畑
青春の蹉跌に刻むキヤベツかな
大皿に千切りキャベツうずたかく
刻まるる嵩に年季のキャベツかな
高原の空の果てまでキャベツかな
強風に甘藍葉の抱き合う
サッカー子身の締りたる夏キャベツ
キャベツ抱くときに優しくなる両手
キャベツ食み妻の口から「痩せなくちゃ」
食堂の母ありキヤベツ盛られけり
キャベツの芯あますことなく老母の手
星々に神話キャベツの密に巻く
キャベツ刻む空振りしつつ刻みけり
山盛りの刻みキャベツの香りかな
青青と犬の目に満つキャベツ畑
一枚づつキャベツ剥がして黄昏るる
朝採れのキャベツの重さ日が昇る
大鉢に筋金入りのキャベツかな
体調を整へながらキヤベツ食べ