きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「飛魚」__金曜俳句への投句一覧(7月29日号掲載=2016年6月30日締切)

櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年7月29日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

【飛魚】
波がしら切つて飛魚生るる日
サーファーの背に飛び魚の絵がありて
飛魚出汁の胸に染み入る祥月命日
一斉に射掛ける如し飛魚とぶ
はぐれたる飛魚いよよ天翔り
飛魚のはだへに残る空の色
飛魚のもはや誰にも止められず
そばつゆの出汁はやっぱり飛魚で
飛魚のひたぶるに海振りはらひ
飛魚や子らに流線なすこころ
江戸前の飛魚一貫ヘイお待ち
飛魚の真直に急ぐいのちかな
飛魚の海見し眼海の色
釣人を囃すがごとく飛魚跳べり
飛魚の黒潮を斬る疾さかな
選手権飛魚たちの饗宴だ
ひとり旅飛魚見ゆる沖に出て
低飛行飛魚会得肺呼吸
飛魚のやうに生きたし帰りたし
飛魚や玄界灘の国境
船足を上げれば増ゆるとびをかな
飛魚の最長飛翔記録かな
釣り船を追ひ越してゆく飛魚の群れ
飛魚の夕日に塗れ鰭展ぐ
飛魚の漁師料理や土佐訛り
蒼白の飛魚空に泳ぎおり
飛魚出汁や博多の夜の〆の椀
飛魚の甲乙の無き飛型点
我が孫も子飛魚や頼もしき
甲板に海したたらすとびをかな
水面てふさかひ飛魚乾き切る
競い合うゴール見えるか飛び魚よ
飛魚よ空に軍艦鳥がゐる
飛魚の眼窩に満つる空のあを
肺呼吸知らぬ飛魚躍り出づ
跳ね上げる波の力よ飛魚よ
飛魚の青きうねりを越えにけり
飛魚の値下げ合戦見てみたい
飛魚のめんつゆほめる妻笑顔
飛魚の海あをければ海にとぶ
飛び魚や虚空に刃光けり
飛魚や三百六十度まさを
飛魚の距離を違えし放物線
飛魚や飛び込み落ちる船の中
飛魚の見聞録が胸鰭に
飛魚や人間遠く遠くなる
空を飛ぶ飛魚の眼は雲映し
紺碧に魚飛び交う物語
飛魚の羽根でつくったひれの酒
飛魚のつひに海より逃げ出せず
イルカ避け飛んで舟入る夏の魚
あれはもう太陽の糞つばめ魚
石投げて網に追い込む飛魚の漁
飛魚や空気抵抗無きがごと
飛魚やけふくつきりと普賢岳
飛魚干物購ひしとて旅便り
飛魚やみる前に跳べと人の云ふ
なぜ飛ぶの飛魚答う気晴らしさ
飛魚の群れて大漁旗靡く
飛魚の目から泪が落ちてく
飛魚を珍しがりて旅の人
空に出て親に逢うたかツバメ魚
飛魚や背びれ胸びれ全開す
トビウオと異名を取りし人ありき
飛魚の尾で海面をはじくなり
飛魚や親に内緒の孫の旅
飛魚を揚げて願ふは運気かな
飛魚の薄羽に見ゆる進化跡
飛魚の飛び損いて捕わるる
飛魚の飛びの迎へる帰る島
飛魚の翅の欠片といふ雫
飛魚の思いつめたる飛翔かな
飛魚やしりとりのごと飛び替はる
後鳥羽院遠流の島へ飛魚とべり
鉛筆の追ふ飛魚の放物線
飛魚やドローンのごとく海をゆく
飛魚の飛べる姿に皿に盛る
飛魚や空に恋して飛びたがる
飛魚や鳥は魚から出たものか
父母の生まれ故郷や飛魚の海
波の音にいかな夢見るとびのうを
飛魚の隠岐を見てきし眼かな
水上の飛魚飛沫纏ひ飛ぶ
外つ国のミサイルの落つ飛魚の海
飛魚や別府航路のハネムーン
飛びさうで飛ばぬ飛魚見る父子
湯浴びして飛魚のごとき両手あげ
飛魚の翼広げたる鉢料理
飛び魚や海往く蝶に寄り添いぬ
飛魚は空も海でも見ているよ
飛魚の羽根もたたみし干物かな
飛魚も火星を見むと波の上
飛魚や眠る白骨を越えて飛ぶ
飛魚や飛びたくない日空を見る
飛魚の流人の島へ乱れ落つ
飛魚や弓矢飛び交ふ壇浦
飛魚や食べればブツブツ慰霊祭
飛魚や生急ぐことなかりせば
ほんたうは鳥になりたき飛魚よ
夢のまた夢飛魚のごとく飛べ
きらめきを一筋ひいてとびのうを
飛魚の飛ぶ先にあり新天地
不時着をして飛魚の焼かれけり
飛魚や波蹴る月に届くまで
飛魚のいつか天馬になる蒼海
猫ねらう跳べぬ飛魚一夜干し
飛魚や水面と空のトンネルを
飛魚の羽をたたんで売られをり
飛魚翔ける玄界灘の夕日かな
飛魚は大海に飛び迷いなし
飛び魚の空をめがけて水面斬る
飛魚やマストの太き綱の鳴り
飛魚は胃を大海に跳ね回り
ふるさとの島の近づきつばめ魚
飛魚や皿鉢料理の主の顔
あご飛んで捲る絶海一頁
尻を振り飛魚群は逃げる逃げる
散骨の船かも知れず飛魚よ
飛魚の種子島より高きかな
飛び魚に考の姿を重ねけり
飛魚の放物線めく入水かな
飛魚や手網の中にダイビング
おどろいてアゴ(飛魚)が飛び立つ船の音
食膳の飛魚目が無しなにゆゑか
飛魚の水着く意志を疑はず
あごの飛び鰭の若さをひろげけり
飛魚や巾とび高とび棒高とび
飛魚は日の真ん中を横断す
飛魚の飛行島をも飛び越えぬ
夕餉にはあごの出し汁さっぱりと
飛魚やイ號潜水艦飛翔
飛魚を摘み損ぬる網漁師
飛魚や陸なら何に相当す
あごダシに丸餅入れて食う雑煮
飛魚や滑走路なく発つ銀機
飛魚の中々飛ばぬ一尾だけ
飛魚の飛ぶや漁師を見下ろして
飛魚の頭確かに似たる人
飛魚や越えてみようかポセイドン
飛魚や海はときどき鋼色
魚の神の領域護りけり
飛魚の飛んで小紋は青海波
飛魚の舞台なる日の日本海
飛魚や飛んで空まで行けないね
飛魚も滞空時間伸ばしたい?
値が下がり飛魚たちよ胸を張れ
群青の波に跳ね飛ぶあごの銀
群青の潮を垂らして飛魚干され
潮風にあご干す浜を吹かれ行く
飛魚や薩摩訛りのまま蝦夷へ
飛魚の鰭干しひれ酒酌み交わす
あご飛べば影も従ふ日向灘
飛魚の翅に定規の赤目盛
飛魚は高く飛びいい物見付けたり
飛魚や息止め空に弧を描く
飛魚や海に溶けゆく蒼き空
飛魚はあごに成りして美味さます
飛魚の逃げし破滅の近し星
始祖鳥と言ふ飛魚に似たものも
波の間を滑空するやあごの群れ
今日の空見て飛魚の何思う
飛魚は海の中外自由なり
海原に飛魚光るダイヤの如く
青空に焦がれ飛魚海を出づ
追うイルカ逃げる飛魚御蔵島
陸のこと海に祈りぬつばめ魚
飛魚や故郷へ行く連絡船
飛魚に幼き眼だけど跳ぶ
飛魚や飛躍すること誰々ぞ
飛魚の水恋しかば水に落つ
海よりも空が見たいか飛び魚よ