きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「雨月」__金曜俳句への投句一覧(8月26日号掲載=2016年7月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年8月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【雨月】
饅頭を食べさせられる雨月かな
野外劇主役脇役雨月待ち
竹林の膨らんでゐる雨月かな
玻璃戸開け雨月の粒を入れにけり
ワイパーで拭ひつつ見る雨月かな
雨月とて傘の使いや寄合所
コンパスの円を重ぬる雨の月
しばし顔濡るるにまかす雨月かな
山小屋に雨の音聴く雨月かな
松島や湯船に月の雨の音
お別れを告げて雨月と歩く帰路
一枚のはがき雨月のポストまで
我にまだ化学反応あり雨月
雨月中奥の細道読み返す
灯台の白亜雨月の闇に溶けず
雨月雨畑のものら生き返る
海境(うなさか)のいよいよとほき雨月かな
雨の月馳せる想いは亡き人に
列車いま雨月の川を越えにけり
眼に探り合ふかな真意月の雨
紙切れに署名捺印して雨月
それはそれでテレビ中継月の雨
そこかしこ雨月を灯すモンスター
雨月なりテレビを見ても気が晴れぬ
月の雨父母存分に無口なる
見えぬもの見える怖さよ雨月かな
濡れそめし屋根の明るき雨月かな
濡れてまで雨月かだうか確かめる
居酒屋の果ててほろほろ月の雨
ぼそぼそと酒酌み交わす雨の月
操車終へ雨月明かりの駅舎かな
あて先のなき手紙を残す雨月かな
湯の町の雨月に湿る下駄の音
灯を背に雨月の傘の滴振る
諦めて空を見上ぐる雨月かな
ブラックの濃い目の香る雨月の夜
雨月なれば旅立たせずに済むものを
寝入りても未練残すは雨の月
水と水に挟まれてをり雨月かな
鄙の宿雨月を謝する女将かな
観覧車濡らして軋む雨月かな
月の雨窓下を過る救急車
ベランダの煙草消したり月の雨
屋根叩く音乱れをり月の雨
連れ合いの電話は果てず月の雨
地下広き店の水槽雨月かな
妻病みて雨月に傘とレヂ袋
盛り上がる初恋談議雨の月
ひと寝入りまだまだやまぬ雨月なり
木蝋に栄し町の雨月かな
透きとほる傘の下より雨月かな
高らかに船頭唄ふ雨月かな
退職してもう四度目の雨月かな
膝と膝寄せて雨月の駅待合
釜の沸く音や雨月の四畳半
福島の子等に見えつつある雨月
月の雨遣らずの雨となりにけり
長々し柳の枝の雨月きかな
雨月には恋しさが溢れて寝落ち
摩天楼ジャズの余韻の雨月かな
父に似し細身の骨や月の雨
筆跡のまだ濡れてゐる雨月かな
尾を引いて軒より落つる月の雨
庭草履濡れるがままの雨月かな
雨傘の連なり流る雨月かな
生き生きと亡者の原に雨月かな
さんざめく声漏れ出る雨月夜
夜更かして雨月の路上仄暗し
前夜書く手紙を破る雨月かな
盃をコップに替える雨月かな
かくれどき丁度雨月となりました
分度器を使ふ宿題月の雨
雨月とて秋成の露光らざり
雨月とはしとしとザーザー降る雨の
摩天楼暗く閉じこむ雨月かな
雨月かな鳥屋の古参のグワァと鳴く
わが胸にもう乳房なき雨月かな
雨月でも傘忘れ来る夫がいて
雨の月憾むがごとき蚶満寺
友逝けり雨月の朝は天高し
大利根の水がうがうと月の雨
茶屋町にすぐに灯の入る雨の月
雨の月運河の空の細くあり
卒塔婆道遠回りする雨月かな
子も犬も雨月静かに迎へけり
飽くるまで雨月の猫を撫でてをり
外灯に銀の糸引く雨月かな
ケーブルや雨月の中を駆けくだる
電報を受けて雨月を走り行く
酒飲めぬ子らの雨月を楽しめず
雨月なり白内障と別れし日
混沌と雨月の様に眠りたり
手が空けば雨月の夜の物思ひ
雨の月君の歩みの匂い消す
こよひ赤選む雨月の傘として
子に語るべきや雨月の父の恋
一筋の雨月の晴れ間布団干す
嫌われし雨月なれども待つ花よ
雨月来て炉のかたはらに招かれる
なよ竹の此岸うかがふ雨月かな
みちのくの闇大きかり雨の月
犬連れて軋む砂蹴る雨月かな
折鶴の羽根を休めてゐる雨月
雨月かな調べ途切れぬ自鳴琴(オルゴール)
瀬戸内の津々浦々や雨の月
月の雨扉開かばソロピアノ
警報の雨月の駅に人を待つ
晩餐や旅の雨月を言ひつのる
雨月雨吹きつける窓憲法論
吾妻橋渡りたつ吉雨月かな
さす傘の前かがみして雨の月
思ひ弛す手紙の余白月の雨
雨月哉花鳥風月闇馥郁
肩を寄せ合ひて雨月の傘の中
雨月なう大きな声で叫びます
行く先は闇へ闇へと月の雨
幾度でも戸口を開ける雨月かな
せんせいの雨月の気分のやうな選
子を寝かしつけて雨月の掌
花街に鯉を散らすや月の雨
一合の酒縁側に雨の月
湿りたるパイプの火皿雨月なり
早朝の足音目覚め雨月かな
嘆くこと好きな女と月の雨
心音を左手で聴き雨の月
肩半分濡らし二人で雨の月
神鈴の潮じめりして雨月かな
月の雨こころ眩しくなることも
丸窓にへばりつく子や雨月の夜
魚の骨歯間に残る月の雨
癌細胞増えし体内雨の月
裏道のネオンの淡さ月の雨
戸口出て雨月見上げる一人分
確率といふ不確かを月の雨
人だかりむしろ雨月で良かつたな
薄闇に田の面の光る雨月かな
世の中をみな恨みたる雨月かな
通夜の客雨月の中に佇みて
ワイパーの間に間に雨月見え隠れ
雨月なり防犯灯や役果たす
月の雨それぞれ月の満ちてをり
雨の月旦那の太鼓腹撫でる
一湾に風ふくらみて雨月かな
霧雨月徹して論ぜし世の流れ
窓を打つ雨月の音を聴く夜かな
黒猫の片耳立てり雨月かな
クラクションを遠くへ送り月の雨
部屋干しの樹海さまよう雨月の夜
お互いの気配を消して雨月かな
クレーンのシンゴジラごと雨月闇
野鳥園みな眠りおり雨の月
次の膳ごとに忘れて月の雨
吾もまた頬杖をつく雨月かな
傘持たぬ雨月見上げし君の肩
風止みて月星拝めぬ雨月かな
軒からの滴りやみぬ雨月なり