きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「野菊」__金曜俳句への投句一覧(8月26日号掲載=2016年7月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年8月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

【野菊】
雲ひとつながれて淋し野菊かな
野菊咲く雑草だけでなき古道
野菊こそリボン似合ひし手花束
牛たちの喰べ残したる野菊かな
水音の絶えざる道や野菊摘み
野紺菊また古里に許さるる
吹く風のかたちのままに野菊かな
緑のタオルごと野菊毛羽立ちぬ
野仏に僅かばかりの野菊かな
頬杖に不機嫌になり摘んだ野菊
畦しろく固まつてをり野菊咲く
日の当たらぬところ隔てず野菊咲く
向こうから死んだ女房野菊折る
この道は野菊が歌ふセレナーデ
岸の子に手を振り返す野菊の日
裏庭に野菊きてゐる花屋かな
戦ぐ赤白黄紫みな野菊
ふざけてる野菊の如き君なりき
野菊添ふ虫の墓ある通学路
慎ましくでも逞しく咲く野菊かな
猫の鈴ひとつ野菊を目指しけり
赤い野菊白い野菊と揺れにけり
この風の吹かれるところ祖母野菊
野菊生け宿の廊下の薄明り
もろもろにかかはらずして野菊咲く
なんとなく意中の野菊とも思う
空瓶を乞ひて野菊を掲げ持つ
はるかなる墓碑に埋れぬ野菊かな
泣きもせず笑いもせずに野菊かな
はや野菊平標(たいらっぴょう)の尾根行けば
帰心とは白き野菊にしやがむこと
帰り道近しと思ふ野菊晴
野菊待つ山辺の小径急ぎ足
ふたおやを亡くし野菊を好きになり
野菊摘む我が一病の癒えなむと
道問えば風に揉まれる野菊かな
河原にはうす紫の野菊立つ
くさくさし原に寝転ぶ野菊あり
一叢の野菊を揺らす犬の鼻
呆けたる妻の手折りし野菊かな
亡き妻のやうにやさしく野菊摘む
特急の列車のたびに反る野菊
遭難碑手向の花に野菊かな
飛ばされし帽子を拾う野菊の間
百段の尽きて野菊と貯水池と
懺悔などする気もあらず野菊かな
彼と過ごす日々はいつまでも野菊
事故跡のガードレールの野菊かな
草刈りや誰彼となく野菊避け
野菊叢砂漠の女顔隠し
鬼ごっこ子ら無心にて野菊踏む
小学生野菊に路を譲りけり
野菊みな潰す工事の技師の職
野菊揺る墓石を撫づるごとく揺る
野菊咲く故郷想い佇みて
少雨ともしつかと立ちてゐる野菊
産土の路野菊より始まりぬ
エキストラ野菊と共に出番待つ
野菊咲く松前街道海へ果つ
丹誠を野菊の様に偽装して
野菊見て聞こえる様な風情かな
花占の跡吹かれをり野紺菊
巡礼の歩の高さなる野菊かな
きのふまで無き黄色野菊揺る
畦道の野菊に向ひ声かける
言荒く野菊を蹴りし友逝けり
大木の下野菊あり墓磨く
クラス会飾り気無しや野菊咲く
野菊摘んでどれが体かわからない
いつの世も野菊に宿る魂あり
誰かある野菊一束濡れ縁に
スクールバス言葉で発す野菊晴れ
外来種野菊はいずこ分けゆく野
石仏の目鼻薄れし野菊かな
聖子ちゃん民さんらしくない野菊
提灯の旅寝の空の野菊かな
野菊咲け99%側の力
足許に野菊の咲ける地蔵かな
野菊咲く今も沖縄は戦場
野菊咲く雨に逆らふ姿勢して
野菊径目鼻うすれし石仏
どこまでもつき抜けし空野菊かな
もてなしをせぬ山荘に咲く野菊
野を出でて海を渡りてなほ野菊
刀より鎌鍬似合う野菊かな
縁側の埃掃き飛ばして野菊
風を待つ海を見下ろす野菊かな
流行の髪型の彼野菊咲く
おほかたは知らぬ唄なり野菊摘む
身罷りし人去りし人野菊濃し
黒服の一団とほる野紺菊
建付けの悪き家かな野紺菊
後戻りできない道の野菊かな
野菊立つ隙間すきまに愛らしき
ボール埋もれ野菊の中の左中間
どう見ても99%側野菊
寄り添ひて立つや野菊の声もして
不揃ひなはなびらのまま野菊かな
少年に野菊の君は遠かった
石仏や議論激して野菊ける
逞しく咲きし野菊や車椅子
野紺菊供えて飯豊(いいで)山晴れ渡る
廃線の線路伝いに咲く野菊
野菊には野菊の風の吹きにけり
野菊晴みすゞの詩集そらんじる
野菊晴わが町風光動かざる
誰が活けし野菊小さく傾ぎをり
人は皆何かに耐えて野菊晴
小さき手野菊の許に掛け寄りぬ
長生きの果ての転院野菊原
いま獣過ぎりしところ野菊晴
お別れに野菊一束手渡さん
そうそうな惚れた女野菊似て
合間から犬が顔出す野菊かな
野菊咲き遺伝子増減何も無し
万有の引力を持ち咲く野菊
野菊生け何を伝えん風の吹く
建売のやうな墓石の野菊かな
明るくても多き哀しみ野菊咲く
戦争に向かひし国や野紺菊
民衆が市民になる日野菊咲く
山裾の野菊手折りて墓参り
まだ残る電話ボックス野菊かな
純白と知らずに咲いてゐる野菊
少女描くはがきの裏に野菊の絵
遊び飽き子ら車座に折れ野菊
野菊にも敬礼してる政治家よ
母と行く細き山道野菊咲く
十五歳はじめて詠う野菊かな
子の娶りさんさんと日や野菊晴
ははの花圃野菊ばかりとなりにけり
石みつつ野菊の傍の墓となる
歌碑の立つ小高き丘の野菊かな
三畳にギター捨てきし野菊かな
電報に列車飛び乗る野菊闇
名園の野菊名札をつけられし
朽ちかけた木椅子を覆ふ野菊かな
山城の戦さの跡や野菊知る
司令官野菊の為に部下乱す
野菊にも花の番地のあるらしき
空高く白一色の野菊かな
高原の霧晴れ渡り野菊かな
触れてみよ毅然と立ちし野菊かな
雨上がる涙顔する野菊たち
渡しへの道の野菊や母も居て
野菊とて一輪ごとに顔ちがひ
野菊ごと蹴つて若手へロングパス
青空に手を入れるごと野菊咲く
廃線の跡の途切れて野菊咲く
行きずりの人に道問ふ野菊道
横たわるマネキン人形野菊咲く
ポチ眠る野菊の群れて咲くところ
黒板の別れの文字と野菊置く
校門の内に野菊の道はじまる
背に眠る子に握られし野菊かな
野菊摘む鉄橋の音はるかより
もう乗らぬ自転車かこむ野菊かな
フレンチのディナーを飾る野菊かな
野菊咲く無人駅にて待つ電車
色褪せし名簿に挟む野菊かな
鳴く鳥の名前は知らず野紺菊
薄暮哉野菊一輪色浮来
優しさを束ね投げ活け野菊かな
会ひたくて恋しくてゆく野菊かな
ただ草と思いし後の野菊かな
コースター降りて野菊にしやがみこむ