きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「刈田」__金曜俳句への投句一覧
(10月28日号掲載=2016年9月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2016年10月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【刈田】
人生の転機は三度刈田かな
ランナーの刈田の道を岬まで
今生の豊かに枯れぬ刈田道
近道して刈田の中にひとりかな
奈良古りて今年の罅や大刈田
その先もその先も黄金(きん)刈田かな
火の山や刈田あらはに風通る
たちまちに鳥の集まる刈田かな
箱庭のような刈田や遠眼鏡
刈田にて鬼ごっこする声高く
晩鐘や刈田に小さく農夫老い
大往生真青に晴れて刈田道
藁燃ゆる煙に憩ふ刈田かな
来年はコンビニになる刈田かな
空よりも広き刈田や日照り雨
刈田まで漕ぎつけしかな笛太鼓
刈田道ポニーテールの遠く揺れ
あご撫でている父の背と刈田道
みな父の手なる刈田の見事さよ
コンバイン跡は泥濘む刈田かな
鴉二羽刈田畦より徒歩で入る
乗る人の同じバスゆく刈田かな
刈田には風の跡さへ見えずして
刈田今雀一族食事時
刈田にて腰を伸ばせば陽が沈む
数分も歩けば刈田の道途切れ
雀らのむなしく遊ぶ刈田かな
苅田行く又三郎は前屈み
五能線苅田に長き影を曳き
雌伏して時の至るを待つ刈田
山遠く人の影無き刈田かな
いつまでも整列してる刈田かな
刈田置き息子娘は都会行く
まだ藁の匂ふ刈田の夜の雨
見ゆるもの総べて動かじ刈田風
轟音の響き終わりて苅田かな
新幹線乗るや一面刈田かな
念願の新車の届く刈田道
東白浄土あらわる刈田かな
駅へ行く近道となる刈田かな
深呼吸している暁の刈田かな
俺おまえ苅田野球の名コンビ
旅靴の坩を擽る刈田かな
仁王像苅田で見あぐ老農夫
全面が全てドッグラン刈田
燦々と皺の目尻や刈田風
夕星の見下ろす刈田薫り立つ
刈田道小さき手をとり急く心
夕暮は刈田の道も詩情生み
近道は刈田の端へ対角線
大いなる営為のあとの刈田かな
丁寧な始末の刈田ひっそりと
はざかけと道の並びて刈田長し
ふるさとの匂ひ懐かし刈田道
鬼ごっこ苅田をかけし友いずこ
わんぱくらひねもす遊ぶ刈田かな
梅干しの種を残して刈田かな
夜泣き児を背負ひ入り行く刈田かな
台風(あらし)去り刈田に浮かぶ白い雲
風下りてゆく千枚の刈田かな
大の字に寝転ぶ刈田仰ぐ空
棚田道あつといふ間に刈田道
一筋の麦穂哀しき刈田かな
刈田暮れボツチの影の濃かりけり
ピナツボ山の裾見えてくる大刈田
着陸船降りてきさうな刈田かな
刈田道街までバスで五十分
新築のまた増えし苅田そば
待ちかねし刈田めがけて群れ烏
刈田道黒くて大きすぎる糞
狩田道七日遅れの法事客
星空と睨み合いたる大刈田
今朝からは近道となり刈田かな
刈田もうトランペットを子が鳴らす
靴底を突くもの残る刈田かな
母に注ぐ父の盃刈田の夜
同行二人鈴の音に暮る苅田行く
父さんは刈田の中のパチンコ屋
見下ろせば棚田に刈田徐々に増す
日のにほひ濃く残したる刈田かな
いずこより糞てんてんと降る刈田
山ばかり撮る足元の刈田かな
夕日射す刈田の跡の旅愁あり
車窓より刈田の続く会津旅
母にして刈田突つ切るほどの用
童らは刈田後を跳び遊ぶ
おおなゐを越えし今年の刈田かな
村の灯が遠くに見える刈田かな
洗濯竿立てて刈田でボール蹴る
牛啼くや刈田を抜ける風ひとつ
はざかけに鴉たたずむ刈田あり
近道の刈田を走り遅刻せず
終着は苅田の中の無人駅
刈田行きともしび一つ人の声
夕日でも影はちょっぴり刈田かな
刈田風しんせい深く深く吸ふ
ショッピングモールが横に刈田かな
苅田道背中に風の吹いてきし
刈田道ゆく犬のでこ賢さよ
稲むらに子供を乗せし乗せられレ
一仕事終えて夕陽を見る刈田
旅鳥のまなざし遠き刈田かな
被爆地に数年来の刈田かな
鴉みな兎のやうに食む刈田
三日月の蒼く乾きて刈田道
日に二便苅田のなかの停留所
置き去りの刈田の風と破れ笠
来月には人手に渡る刈田かな
あの頃の俺とは違う刈田かな
刈田道行く制服のチェック柄
行く雲と乙が身の差よ刈田かな
単線の脇に広がる刈田かな
本塁のはや置かれたる刈田かな
刈田には鴉と雀が共存し
始まりと終わりの見える刈田かな
眺めをり刈田落暉の最後まで
散髪後刈田に似たり襟足の
美しく隠すモザイクめく刈田
すつきりと刈田にも似て老後かな
犬の声かたまつてゐる刈田かな
三途まで持っていく過去刈田焼く
野仏の背中さびしき刈田かな
刈田来る鳥の類ひも変はりけり
休み果て刈田と親を後にする
高圧線風になりゐる苅田かな
静謐の古墳浮かべて刈田暮る
風今やとまどふばかり刈田かな
菜園に苅田の藁を貰いけり
畦に立つ刈田の株の整然と
刈田風来て猫の目の細くなり
棚田には人のちからの刈田かな
軽トラも帰ってしまって刈田かな
ランニングハイの群過ぐ刈田道
高速道柱脚奪う刈田かな
頬かすめ刈田の風や鳥も飛ぶ
汽笛聞こゆ苅田を過ぎる軽便車
陽の中に刈田のほつと休みをり
見渡せば夕日に沈む刈田かな
刈田より飛びくるものの吹き溜まり
信濃路や上に下にと刈田あり
宿下駄のざつくばらんや刈田道
黄金の波消え去りて刈田道
朝もやは私を越して刈田道
おそろいのランニングシャツ刈田風
たおやかに刈田に水の流れたる
くわくわと苅田を渡る鳥の声
夕日受けにゅうの行進刈田かな
刈田行かば思ひ出あふるあふれくる
祖父と刈田歩みし幼なき日のありき
酔ひ易き甲府ワインや新刈田
山越せば海まで続く苅田かな
一両の列車コトコト刈田行く
刈田原素顔に還る母郷とも
歩まねば老ゆると思ふ苅田道
意に染まぬ人に嫁し行く刈田道
刈田道棚田の積みを一つ圧し
刈田に立ち無いものばかり探す日々
鉄塔の影が刈田を裂きにけり
秋深み稲架組残る刈田かな
パンを買ふ行列にこり刈田中
疲れたと顔には出さぬ刈田かな
セピア調ポルカドットの刈田かな
日は晴れて刈田の匂い浅き夢