兼題「鶏合」__金曜俳句への投句一覧
(2月24日号掲載=2017年1月31日締切)
2017年2月3日5:29PM|カテゴリー:未分類|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年2月24日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【鶏合】
闘鶏や飛ばぬ鶏は跳ぬるなり
鶏合蹴爪の色で勝負あり
闘鶏のまだ鎮まらぬ鼓動かな
色褪せし素袍の袖や鶏合せ
負鶏や最後の声を尖らして
まさをなる空へ勝鶏羽撃けり
立ち合いについつい変化鶏合
闘鶏の傷を宥めるやうな風
鶏合スマホの指の止まりけり
円形の襟毛破れつつ鶏合
境内は羽の飛び交ふ鶏合
鶏合たちまち荒れる風と風
首落ちて尚猛るなり鶏合
鶏合戦の国の子ら思ふ
ことごとく蹴爪は切られ鶏合
鶏合争い嫌ふ人の手で
鶏合掛け声男女一斉に
勝鶏のひと羽ばたきや飛びもせず
辻堂の肌着のをとこ闘鶏師
闘鶏や柔らかき地に羽根落とし
闘鶏の朝より鶏冠(とさか)際立ちて
闘鶏の眼に明日を探しをり
燃え上ぐる炎一塊鶏合
闘鶏の舌に真実あるらしき
遠つ国の訛で仕切る鶏合せ
砂利道の小さな血潮鶏合
人間は人間が好き鶏合
鶏合尾羽を掴みて止めにけり
勝鶏のなほ敵打つを引き剥がす
劣勢に浮足立てる闘鶏師
かはたれに炊煙高し闘鶏師
鶏合人の命の長きこと
闘鶏の転びてもすぐ起きあがる
闘鶏を抱き狡獪の眼を持てり
迫りくる蹴爪恐ろし鶏合
闘鶏の後から見る羽毛かな
闘鶏師勝負の綾に一喝す
闘鶏の敵を一瞬見失ふ
鶏合素性怪しき古屋敷
闘鶏を終へたる一の宮の杜
飼主の勝杯高く鶏合
鶏合酔客多き過疎部落
鶏合せ亡き人の分まで生きる
この時代鶏合は過去になる
負鶏の忿怒抱かれて解けにけり
鶏合いつしか翁は杖担ぎ
鶏合半分近くは眠り出し
闘鶏の突つき癖の抜け切らず
鶏合信じられない結果かな
鶏合この世の女忙しき
見るにだに哀しと思ふ鶏合
生きて死ぬそれだけのこと鶏合
なほ砂を蹴る負鶏の面構え
美しきひとの来てゐる鶏合
闘鶏を終へ産土神の鎮もりぬ
休田に自転車停めて鶏合
ベトナム人鶏合には出資して
集まれる人声明るき鶏合
鶏合けんか仲間の顔浮かぶ
勝鶏の昂る羽の収まらず
鶏合闘ふ前の羽繕ひ
鶏合旅の武蔵も立ち止まり
勝ち鶏もいづれ負け鶏無慙やな
久々に酒酌み交わし鶏合せ
肉垂は鉄火のごとし鶏合
負鶏の極彩色の羽拾ふ
鶏会隣の爺の自慢顔
酒臭き掛け声のなか鶏合
闘鶏や遠くからする鬨の声
静けさの輪の中にあり鶏合
正面の相手見つめぬ鶏合
鶏合せ見たくないと目をつぶる
鶏合後の正面だあれ
鶏合遠巻きに見る少女かな
勝鳥の熟れたる如き鶏冠かな
どつちかが必ず負ける鶏合
鬨つくる勝鶏も尾羽打ち枯らす
皇統と縁なき者ら鶏合
琉球の汐風やさし鶏合
闘鶏や愛しき人の目に涙
鶏合に勝ちたる鶏は高く鳴き
風に乗る血生臭さや鶏合
四本の絡みて鶏の蹴合かな
鶏合熱気女を寄せつけず
鶏合目をあはせてのダンスかな
やさしさの匂ひあふるる鶏合
蹴合する鶏の眼差し真の生(しょう)
一族は土着の島や鶏合
闘鶏や家族旅行の写真帳
負鶏の食欲のまだ失せもせず
闘鶏も今年限りや過疎の村
闘鶏の細き尾羽根の舞ひにけり
鶏合せ鋭きまなざしは家系なる
霧雨に戦意昂ぶる鶏合
鶏合競いし蹴爪血色なり
もて余す哀しき性や鶏合
闘鶏の羽音や影も交わりて
鶏合いつかミンチになる牡ら
青空や人の世にあり鶏合
鶏合のちの寂寥深かりき
鶏合蹲(つくば)ふことを知らぬまま
島を出し祖父の末子や鶏合
挑みたる人の目に似し鶏合
闘鶏や眼鏡の枠におさまらず
椰子の風闘鶏抱きて少年来
鶏合せ吊革に手を掛けられず
飼ひ主の手に目を瞑る鶏合
鶏合遠き昭和の思い出よ
闘鶏や細き娘も二児の母
太き羽根飛び鶏合終はりをり
鶏合あの若冲の絵にはなし
鶏合畑仕事の帰り道
潰されし目の負け鶏の抱かれたる
血と砂が混じりて闘鶏果てにけり
闘鶏や日に点々と飼われおり
闘鶏の嘴研がれいて静かなる
血に染まる鶏合なる土けむり
勝鶏のにぎりたつ血の熱さかな
ひとときを血を高ぶらせ鶏合
自転車のリームの錆や鶏合
負鶏の主舌うちし銭を投げ
闘鶏に若き女を誘ひ出す
自転車のスポーク越しや鶏合
鶏あはせ土ぬくぬくと闘はず
北京(ベイジン)の胡同(フートン)に見し鶏合
鶏合闘う軍鶏の首の長さよ
キリストは鶏合見て微笑まれ
鶏合南の国で驚きぬ
闘鶏の互ひの首を差し出しぬ
どうしても雌がちらつく鶏合
少年の十バーツ賭鶏に消ゆ
男らの夢の瑣末や鶏合せ
勝鶏の黒き血痕蹴爪にも
闘鶏の漢の肩にこぬか雨
鶏の眼に乗り移りたる闘鶏師
鶏合仕掛ける二人顔赤し
カジノ解禁賭鶏のドツと走り出す
鶏合命の引き際存ぜぬと
負鶏に生き方学ぶこと多し
闘鶏師神と悪魔の宿りたる
しづけさの戻る砂地の鶏合
鶏合この縁談を賭けてをり
鶏合男らしさを出し惜しむ
入念なブラシ出を待つ闘鶏に