兼題「春闘」__金曜俳句への投句一覧
(3月31日号掲載=2017年2月28日締切)
2017年3月10日3:07PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年3月31日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【春闘】
春闘の拳小さく上げてみし
春闘や枕木歩くはいずくんぞ
春闘やお経を聞かぬ日々となり
春闘のビラや汚れし手を慰む
春闘の拳の上の蒼い穹
春闘や拳あがらぬ春討に
春闘の日のワイシャツの白きまま
先頭は下手な似顔絵春闘旗
はちまきを打ち捨て春闘敗北す
回答を待ちくたびれて春の土手
春闘や“時”ありあまってをりし頃
春闘を花屋に寄りて帰りけり
老眼鏡かけ春闘の委員長
春闘や旧友見付ける公園に
春闘や新車カタログ握りしめ
春闘の百円めぐるつばぜり合ひ
春闘の第一声はハウリング
溶鉱炉赤きるつぼや春闘旗
春闘の翻る旗過ぎて行く
春闘で分かれし友と今飲めり
春闘妥結上司と部下に戻りけり
春闘やダイヤル式の黒電話
春闘や議論尽くした月冴える
春闘の音頭取りの若い声
春闘も華やぎの日々も遠くなり
街かゆし春闘の記事切手大
春闘のジグザグのデモ行進
春闘といへぬ春闘空まさを
春闘や闘争指令第九号
春闘に全裸の人はいないのね
春闘の真っ只中のひとりかな
春闘や下ばかりみて空をみず
春闘を終え生卵割る昼餉
春闘の旗は遠くへ行きにけり
春闘や今重役となりし友
しゅんとうや父の背中で聞きし文字
春闘のポスター剥がす風に色
春闘のこぶし挙げたる日の遠し
春闘や「無能の人」と小漫画読む
春闘のピクトグラムとなる怒号
春闘の熱き思ひの渦中かな
春闘の看板もなくビラもなく
春闘のビル一面の反射光
春闘のマスコミ叫ぶストライキ
春闘はもつれ立ち飲み酒場まで
春闘終え赤き鉢巻たたみけり
春闘や表裏一体赤と黒
朋輩は産休中ぞ春闘旗
春闘のビラの斜めに貼られけり
春闘の労働気迫戻り来よ
春闘やむかし総評いま連合
春闘のデモや路肩に猫の死屍
春闘に鉄のにおいや組合旗
春闘やDJポリスも参加して
春闘にかつて職場闘争ありぬ
春闘や新聞テレビ連帯感
春闘や議論百出月高し
春闘や職場にいない労働者
春闘だ現場の不安かき集め
春闘の日比谷野音にひとりゐる
春闘に豆手ぬぐいも見えてをり
春闘やあのころわたし若かった
偽銃(にせづつ)か春闘威(おど)す人ありて
春闘の壁に斜めのゲバ字ビラ
春闘やいちご白書の懐かしく
春闘や失はれしは二十年
春闘よ風物詩からも消えゆくか
春闘や非正規のやや冷めたるも
春闘や赤鉢巻も拳骨も
新聞に春闘の文字冬明けぬ
春闘と言えば絶対赤いもの
春闘のアプリで作る標語かな
ビル群に廃る春闘スクラム歌
春闘やラッパに合わせ我が叫び
ボス増やし春闘大いに盛り上がる
春闘を昭和に忘る鉄路かな
春闘の用意されたる妥結かな
春闘の祈り賃上げ願いけり
春闘の旗に追い抜かされ無職
春闘の固き拳をほどきけり
春闘や白衣はだけるビルの風
声援のチューブを通り春闘旗
春闘や待合室の素の戦士
春闘や給湯室の係長
春闘や喧嘩も恋も乾杯も
春闘に欠かせぬ社員若干名
一声で春季闘争果てにけり
春闘や君を同志と呼びし朝
春闘や花束抱えし人が居る
春闘や怖いもの知らずでありし日々
春闘や参加の意義に団結す
マルクスの「疎外」正さむ春闘よ
春闘の仕事と同じ温度かな
春闘の旗の色あせ妥結せず
春闘や乗換駅は丸の内
安倍さんの鼻息うかがう春闘か
春闘や獄中のこと語りつつ
張りつめし春闘の夜若日本
春闘や煙草のけむり充満す
鉢巻の廃る春闘穏やかに
春闘のポケットに鳴る銅貨かな
鉢巻きはせぬ春闘の強(こは)き声
春闘やシュンとしちゃってしらけ気味
春闘の下手こそよけれ労働歌
腕章鉢巻ワッペンの春闘
春闘のすでに見飽きし顔並ぶ
春闘に斗といふ文字のありし頃
春闘の鉢巻の色とりどりに
春闘の先陣切つて秘書課かな
春闘の赤鉢巻を禿頭に
有耶無耶のうちに春闘終りけり
春闘やボスの上には鳥が飛び
春闘のニュース読みたる職場かな
春闘は賃闘なりや目刺し焼く
春闘の旧町名の組合旗
春闘の交渉の和を求む旗
貸布団敷きつめられて夜の春闘
春闘の幟ことしも同じ位置
春闘の風化の如く語らるる
春闘や闘ふ人は減るばかり
春闘や拳突き上げ台詞めく
春闘や監視カメラが隅々に
春闘の後ろで野次を飛ばす役
春闘や無人駅舎の古時計
春闘や企業戦士の今はなく
春闘の落書きだらけの便所かな
春闘の鉢巻破線波となる
春闘と書けぬ吾と猫欠伸する
春闘や長生きしてもしなくても
春闘の袖に花柄カバーかな
春闘を終えていつもの父の顔
春闘の折目正しき組合旗
春闘や生活かかる戦旗
春闘の赤い鉢巻雨上る
春闘の寂しき首を連ねけり
春闘や絵画館前ぬかるんで
春闘を引き継ぎ年金生活者
春闘の空へ数多の拳の芽
春闘や正社員との恋祈願
春闘や太田ラッパさえ懐かしき
春闘や反応薄き労働者
団結して頑張ろうなしの春闘
炭住の入日春闘敗れたり
赤旗もなく春闘の始まりぬ
春闘よなるか抵抗貧困の
ブルータス春闘無視する我が友よ
春闘の闘の字画を略し書く
春闘の可否に依るらしバスのスト
春闘や駅の動かぬ時刻表
春闘よそなたは今頃どこにいる
春闘の労使は違つてゐる眼鏡
深酒やニュースは春闘を報じ
春闘ははかどらぬから銭湯に
春闘の渋谷で食べるパンケーキ
春闘や組合の旗きれいすぎ
春闘の妥結を聞いて力ぬけ
七輪の煙さ春闘頓挫せり
春闘の列信号にちぎれけり
春闘を見て模倣する子供かな
春闘の鬨を閉ざすや社長室
ストライキ打つ力なくも春闘と
春闘の賃上げ要求POP体
春闘や炊出しカレーライスかな
春闘やスクラム組んで交渉す
「ガンバロー」三唱春闘に突入す
春闘の鉢巻君の笑わざる
充ち満ちて重き命を春闘へ
春闘に敵も味方もありません
春闘に思ひ出す日々若き吾
春闘のうるはしきひとスクラムに
竹光でト書の戦い春闘会
春闘と書かれし箱の焦臭さ
春闘のビラ玄関に貰ひけり
春闘や昭和の風に武勇伝
春闘や労働者という語を聞かず
春闘や春討とかで拳(けん)降ろし
かの頃やがんばろうてふ春闘歌
春闘の呼びかけ諸君などと言ふ
春闘の隅に重ねしままの椅子
春闘や交渉術に姿変え
春闘や春一番の知らせこよ
春闘や陽も翳りたる会議室
春闘の形ばかりとなりにけり
しっかりと構えていた頃なつかしく