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兼題「葱坊主」__金曜俳句への投句一覧
(4月28日号掲載=2017年3月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年4月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【葱坊主】
横綱の牛の勝鬨ねぎ坊主
祖父の手をとるかとらぬか葱坊主
葱坊主白く乾きし高き畝
葱坊主寝癖のやうに綿毛立て
葱坊主こころは脳にあると云ふ
葱坊主重なる辺り風起こる
青空は涙にゆすれ葱坊主
托鉢の僧の列行く葱の花
人生はたつた一回葱坊主
月暈(つきがさ)の地に降りしごと葱坊主
畑中のバス停の道葱坊主
オレンジ色の自転車過ぎる葱畑
葱坊主もしもしの後から訛る
葱坊主雨降り初めて人走る
葱坊主風の故郷になつきをり
変へられぬ化粧の仕方葱坊主
背伸びして空なほ遠し葱坊主
葱坊主貸家普請の終はらずに
葱坊主何時もと違ふ地のクルス
葱坊主腕白坊主糞坊主
東塔へ西塔を添ふ葱坊主
人生の旬過ぎたるは葱坊主
葱坊主「真犯人はお前だな」
半白もばうずなりけり葱坊主
葱坊主チャンス気長に待ってをり
葱坊主夜は宇宙と交信す
建売に紛るる畑葱坊主
幼な子の褌きりり葱坊主
葱坊主座布団縁にすすめらる
葱坊主畑の隅に捨てられて
集落にタイの花嫁ねぎの花
床の間のからつぽの壷葱坊主
時をりは風にあらがひ葱坊主
てふがきて男女共学ねぎばうず
気長なり心遊びて葱坊主
鼻はただ顔の真ん中葱坊主
雑巾の放せぬ母や葱坊主
葱坊主揺るラーメン屋裏五坪
天空へ拳(こぶし)突き上げ葱坊主
葱坊主夢にはみ出て少年に
雨の中すっくと立てり葱坊主
葱坊主シャッターチャンスは早く過ぎ
雨粒に殴りかからる葱坊主
留学の叶わぬことも葱坊主
青空へチアポンポンや葱坊主
隣家との間うめたる葱坊主
葱坊主死ぬも眠るも立ち盡し
一列に土を湿らす葱坊主
定期入れ馴染んだ頃の葱坊主
葱坊主緊張隠す顔ばかり
ファールボール探す生徒や葱坊主
頭だけ暮れ残りたる葱坊主
葱坊主をのこのをらぬ家静か
こまい毛の撫づるたび落つ葱坊主
三日ぶり晴れて煌めく葱坊主
自転車は声を残して葱坊主
逆風で弾けそうな葱坊主
大きさのさまざまありて葱坊主
葱坊主日に数機発つ飛行場
葱坊主公約叫ぶ選挙カー
雨のごと光降りくる葱坊主
心配は明日しようと葱坊主
葱坊主せせらぎに沿う村の道
葱坊主命はひとつ大切に
葱坊主二行で足りる己の履歴
寝転べば城より高き葱坊主
寄り合いの進まぬ会議葱坊主
主人無き家庭菜園葱坊主
一斉の吹き出し笑ひ葱坊主
葱坊主なるようにしかなりません
入院の友の畑の葱坊主
輪唱の輪の中にある葱坊主
頭でつかちの君のやう葱坊主
朝風に音符と揺れる葱坊主
山からの風に靡きて葱坊主
葱坊主生命を想ふ日のありき
雨しずく頭に光り葱坊主
ぶらり旅帰りて庭の葱に花
葱坊主ぬけば勾玉出土せり
どんよりと一日くもり葱坊主
抜きん出て風を抗ふ葱坊主
晩鐘へ靡く夕日や葱坊主
葱坊主玄関遠き村の家
会場は改善センター葱坊主
をりとりてずしりとおもきねぎぼうず
大多喜の城下に並ぶ葱坊主
十周は遅刻の罰や葱坊主
愛の糸緩みもします葱坊主
捨てられし葱も上向く葱坊主
葱坊主ベール剥がして花の精
葱坊主パミールへ旅思い立つ
小雨来て道路工事や葱坊主
葱坊主ばふばふと雨過ぎ行けり
ゆるキャラが行列つくる葱坊主
雑草の迫り来るゆめ葱坊主
片恋の叶ふも辛し葱坊主
世の騒ぎ俺ら知らぬと葱坊主
童心になれず葱坊主を叩く
葱坊主中学校は畑の中
葱坊主数へきれざる過疎の村
跡継ぎの消えたる畑の葱坊主
万歳の形した猫葱坊主
だいたいは仮性包茎葱坊主
都市近郊薄汚れたる葱坊主
葱坊主極端な物は除外して
葱坊主この踏切はいつ開らく
東京に姦しさうな葱坊主
行つたきり戻らぬ亭主葱坊主
葱坊主県道沿ひのネズミ捕り
葱坊主初参観日の帰り道
葱坊主皮のまるみを出でて角(つの)
葱坊主相寄りもせず立ちつくす
そのうちにどうにかなるさ葱坊主
葱坊主夢は叶うと師の訓え
老猿や葱坊主なら呉れてやる
裂けし地にへばりつきたる葱坊主
葱坊主いつか必ずむけるはず
悪童はみんな帰りて葱坊主
天啓の声聞くごとく葱坊主
葱坊主らしきがひよこと来て叱る
優良はなかなかとれぬ葱坊主
犬の尿受け流したる葱坊主
トロツコの発車の笛や葱坊主
葱坊主見向きもせずに鳥越える
連むにはあまりに多い葱坊主
葱坊主温泉宿を案内せり
忙しき事も無けれど葱坊主
まつすぐに青き整列葱の花
雨風につむじ曲げたる葱坊主
葱坊主いつせいに庭ふくらみぬ
葱坊主放蕩息子帰りけり
また元の遠さに戻り葱坊主
シャツの袖まくれば白き葱坊主
葱坊主切りて捨てらる定めかな
山羊の眼も春に惚けて葱坊主
電気屋の二階が下宿葱坊主
球心と放射のいのち葱坊主
葱坊主娘ふたりは不惑過ぐ
でたらめな歌遠ざかる葱坊主
新しき風入れ替わり葱坊主
張ち切れんほどの球体葱坊主
塾過ぎる畑を過ぎる葱坊主
葱坊主事故物件に巡り遭ふ
葱坊主早くも老いてしまひけり
職退いて夢に近づく葱坊主
見送りは葱坊主だけバスを待つ
通学路あそび遊びの葱坊主
にぎやかな一列であり葱坊主
警笛の続く踏み切り葱坊主
団塊世代の集ふごと葱坊主
葱坊主地平線上丈揃ふ
群がりてはじめて淋しき葱坊主
葱坊主ひとりの空は広すぎる
暦見る間もなく揺れる葱坊主
うなだれもよそ向きもせず葱坊主
日に二本のバスに乗れずや葱坊主
葱坊主鈍行の窓夕日満つ
なぞなぞのつづきはあした葱坊主
葱坊主実はをんなで子を産みて
仮縫ひの葱坊主刺し風のドレス
葱坊主千本どれが第五列
登山路を降り来し里や葱坊主
葱坊主雲は形を変へて飛ぶ
葱ボーズポーカーフェイスしてゐたる
葱坊主町の映画に行つたきり
葱坊スとほくに始発列車の灯
天婦羅になつて出で来る葱坊主
葱坊主遠く退く筑波山
空っぽは吾も同じこと葱坊主
葱坊主好きも嫌ひもなく育て
葱坊主夢の向こうの未来(あす)知らず
葱坊主牛の角と小よき名持ち
寒さゆえわが葱坊主霜に焼け
下校児が叩いて帰る葱坊主
あをあをと太く孤高の葱坊主
甘き風葱坊主やら撫でてゆく
葱坊主ばうずであるを疑はず
葱坊主「俺が」「俺が」が多すぎて
Uターン迎へる顔や葱坊主
その列にわれも加はり葱坊主
葱坊主解かれし家の背戸辺り
薄闇は地に溜り来て葱坊主
約束の時間を破り葱坊主
制服の少女の黙や葱坊主
息の根のオーラ出てます葱坊主
ちぎられるとき鳴くらしき葱坊主
葱坊主春の消失点いまだ
葱坊主みな長髪となりにけり
小さき手に拐われてゆく葱坊主
いつまでも隣気になる葱坊主
夢の中心遊ばせ葱坊主
日を受けて日を振り撒きぬ葱坊主
放課後のマリンバの音や葱坊主
従順に犇めき合つて葱坊主
葱坊主隣は隣気にするな
而立とはまだまだ青き葱坊主
暖かき雨降る道や葱坊主
円くゐて尖りゐて其は葱坊主
人ひとり壊るるを見し葱坊主

【不明】
採血の静脈沈み朝桜
夕桜猫の眼光りて翡翠色