きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「トマト」__金曜俳句への投句一覧
(5月26日号掲載=2017年4月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年5月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。

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【トマト】
渇水の刺々しきや蕃茄熟る
パン屑の落つる焦げ跡焼きトマト
トマト捥ぐ小3の手と父の手と
トマト切る妻の苛立ち匂います
清流に沈めて青きトマトかな
色のよき味なきトマト育てたる
過ぎし日の熱き想ひやトマトむく
太陽の恵み集めしトマトかな
トマト煮るかみさんと刑事コロンボ
齧りけるトマトの内臓は真青
トマトの断面や万華鏡の綺羅
幾万の明りさざめくトマト園
肉球に膿ありトマト破れけり
アンチョビにトマトほどよく焦げにけり
銀歯きらりトマトをかじる乙女かな
立て板に水の口上トマト切る
箱入りのトマト緑がほのと有り
トマト熟る風のつけ入る隙もなし
ミニトマト普段は母にあげにけり
なまぬるきトマトの好きな絵描きかな
太陽になる決心をするトマト
夕日浴びトマト切りつつボレロ聴く
トマト植ゑ何故か明るき宵の庭
すずなりの未練や青きミニトマト
割れてゐる午後の日射しのトマトかな
佐藤派と塩派がいますトマトには
マヨネーズ不要のトマトを愛しけり
皮剥かれトマト涼しくなりにけり
待つといふ心晴天プチトマト
包丁の切れ味試す熟れトマト
肉色のトマト真昼のぬるさ食ぶ
まだ青きトマト頬張る農家の児
切るまでは笑顔のやうなトマトかな
トマト食ぶ肋すき透るごと赤
ベランダの菜園主役ミニトマト
トマトにはあらずトメートと言ふべし
中津川フォークジャンボリートマト貰う
驟雨霽れトマトの赤き雫かな
トマトみな尻を向けおり昼の市
青臭きトマト捥ぐ手や上京す
斬られ役いつもトマトを懐に
胃の中を真っ直ぐ落つるトマトかな
弾け飛ぶトマトの汁や空まさお
もぎたてのトマトの熱に歯を立てぬ
包丁の重さでトマトを切る歓喜
初生りのトマトを捥ぐと農日記
トマトとり朝のキラキラ君もいて
胡瓜に味曽トマトに醤油の田舎ぶり
品書に冷やしとまとが加わりぬ
青臭きトマトに蹉跌よみがえる
若いママ得意料理はトマト味
お日さまもトマトも真っ赤子どもの絵
きつかりとトマトを割りて朝は来ぬ
初生りのトマト供へて鈴打ちて
まるのままトマト齧れば滴れる
日照雨過ぐトマト余さず光らせて
スーパーのトマトの高値買えひかえ
トマトから昨日の雨のひとしづく
このトマト色敵ならば吾負けむ
琺瑯のシステムキッチントマト切る
幼な指種をホジホジトマト食む
ミニトマト弁柄色に熟しけり
プチトマトの蔕稚児の散髪かな
我が畑の酸い味も良きトマトかな
ひと言で変われる心トマト熟る
地トマトをわれは愛する愚直にも
丸かじりしたきトマトの熟れ具合
これが愛とトマト山盛り届きけり
野仏や頭にトマト載せられて
トマト喰み語らずでよき夕餉かな
白皿にとまと置かれて朝の卓
白地図にトマトの汁の噴射跡
完熟のトマト熟女にある魔性
ミサイルの飛びてトマトを囓りけり
好き嫌ひ父子で似たるトマトかな
完熟のトマトより早や暮れ初むる
この地球真つ赤なトマトかも知れぬ
子を連れてトマト畑の密林へ
弁当に色そえているミニトマト
コンドルに見とれトマトを零しけり
ケチャップになる決心をするトマト
少年の頃は砂糖でトマト食い
まめやかな男となりてトマトもぐ
全身を銀色に染めトマト捥ぐ
トマトさへ芽生えて実りて熟れゆくを
蓋開けて鍋にひろごるトマトかな
箱詰めのトマトの尻や天を向く
Jアラート鳴りさうトマト弾けさう
トマトむく雨止まぬ日はひとりごと
朝採りのトマト山積み道の駅
義侠心たまに引きだし青トマト
見るトマト食するトマト飲むトマト
青トマト君の故郷の野が香る
逮夜の歯立てて吸いたるトマトの気
後朝の盥にたっぷりとトマト
みちのくの風にトマトの太りけり
たつぷりと塩を振りトマト食う昔
朝焼けの色よりも濃しトマト捥ぐ
トマト赤しサンドイッチの初デート
トマト色全ての嘘を隠したる
午後の日の葉の萎れたるミニトマト
スーパーの帰り透けるはトマトかな
太陽と浮気したあげくのトマト
トマト嫌いあの娘が今やヤングママ
山小屋の朝のトマトの丸齧り
明後日には採り頃となるトマト一つ
塩粒をあらはに冷やしトマト来る
金婚式トマト嫌ひと告げにけり
ジーパンのにほひをつけて食ふトマト
ごつごつと青きトマトの少年期
齧られてトマト歪んだ笑み浮かべ
はじけそふトマトの露のフレッシュさ
部活終え塩添へトマト丸かじり
朝トマト蔕の産毛の白きこと
九条やトマトを投げてみたくなる
志望校変へたと言ふてトマトがぶり
御目見得の茄子色トマト収穫す
包丁の切れ味ためすトマトかな
トマトほどの甘みだったか初恋は
トマト煮て味深まりぬイタリアン
柔肌のトマト初恋遠き過去
ミニトマト孫と取り合う頃はいつ
止めてくれるなお母さんトマトです
山の水弾くトマトを丸齧り
疵もののトマトにかける魔法かな
捥がれてもまだ赤くなるトマトかな
ベランダの一番トマト赤を増し
でこぼこのトマトそれぞれお人柄
雨やみて青空映すトマトかな
炊き立てと刺身醤油でトマトかな
なんとなく個性隠しがちなトマト
トマト捥ぐはるか光るは千曲川
トマト切る音心音に重なりぬ
その色は深き情けか熟れトマト
回教の声や帝都の蕃茄熟る
とんかつのトマトは後でそっとよける
トマトには醤油をかけて一人酒
かぶりつくとまとに袖を濡らしけり
トマト達今年はどんな食べ味か
トマト畑赤い光の転がりぬ
割烹着眩しやあかあかとトマト
白髪染めやめる宣言トマト食ぶ
ベランダの光あつめてミニトマト
採りのこしトマト一つに露ひかる
若き日の父のトマトや四角形
収穫の初めのトマトまず口へ
ランドセルの中のトマトや四時限目
添え木日々傾けさせてトマト熟る
来世とか信じていれば今日トマト
朝採れのトマト配るやバスツアー
切り口はサンドイッチのトマトかな
大ぶりのトマト一つの昼餉かな
もてなしは井戸水に浮くトマトかな
寡婦となりトマトを育て食べもして
竹篭のトマト厨の灯を映し
ブチュってやっておしまいトマトなら
赤茄子の赤朝露に透きとおる
太陽に嫁ぐ決心するトマト
芽掻きしてトマトの挿し芽楽しめり
トマトよりトマト漲るこぼれ汁
青トマトガリリと噛みし人はいま
日の陰りトマトを持てば速度増し
プチトマト摘んで園児は天使顔
画家植えし貸菜園のトマトかな
丸かじりトマトの香りぴゅっと出で
粗塩の濡れてトマトの朝が来る
トマト苗ていねいに植え地に託す
湯むきしたトマトを食めば愛こぼる
トマト苗ぼかし堆肥で土作り
赤茄子や星爆ぜて星生みにけり
崖つぷちトマト掴めど堕ちにけり
臨月を迎えしごとくトマト熟る
トマト苗なすキュウリ苗並べ植え
トマト切る公園暮らし長引いて
気が付くとケチャップになっていたトマト
赤茄子や店の真中でなほ赤く
好き嫌い聞かれし君のトマトかな
包丁の切れここちよしトマト切る
トマト色のズボンにトマト転がれり
青臭きトマトや無人直売所
春近きとまとを喰い畑仕舞
ものを見る高さ低さやトマトもぐ
父遺せし畑に実生のトマトかな
娘来たるちよいとトマトを庭で取り
トマト食べ短距離走に挑むかな
水臭き仲になりたるトマトかな
朝靄の中からトマトもぎ出しぬ
毛に肥後の土濡れてゐるトマトかな
小粒だがこれが陽の味熟れトマト
水と陽と風の賜トマトもぐ
トマト食わぬ天動説の息子かな
太陽と電撃結婚するトマト
ミニトマトの子沢山をかの国に
赤茄子や互ひにこすりあふ牝牛
遠鳴りの聖歌や坂道をトマト
もぎたてのトマトを入れてサラダにす
ブランチのトマトサラダのアンニュイ
追伸のトマト郵送召し上がれ
完熟のもぎ立てトマトおもてなし
彩りをトマトの赤に救わるる
熟考の結果トマトは赤になる
これ以上赤くはなれぬトマトかな
民宿の朝のトマトの匂ひかな
破裂して焦燥のトマトかな
あかトマト季節知らずに口にする
その照りに日の温もりのトマトかな
土色とお日様の色持つトマト
パルメザンチーズの溶けて焼きトマト
トマト苗九十の母に届けたし
みずみずしフレッシュトマトキスしましょ