きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「誘蛾灯」__金曜俳句への投句一覧
(5月26日号掲載=2017年4月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年5月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【誘蛾灯】
翅はみな狂へるやうに誘蛾灯
誘われて夢破れたる誘蛾灯
原子力発電色の誘蛾灯
夢いくつ胸に消ゆるや誘蛾灯
亡骸を侍らせなほも誘蛾灯
手紙書く手をまた止めて誘蛾灯
わたつみのゆいてかへらず誘蛾灯
ゲーム機を怪しく照らす誘蛾灯
閉じている米蔵灯す誘蛾灯
猫の目の細くなりけり誘蛾灯
身を焦がし果てたる音や誘蛾灯
黄昏やいつ咲こうかと誘蛾灯
夕暮れて冥界照らす誘蛾灯
五分の虫生命燃やして誘蛾灯
ふらと外に出てみる夜の誘蛾灯
うつとりと死に直結の誘蛾灯
誘蛾灯夜遊びの子の誘われ
誘蛾灯師の句碑の建つ一の宮
誘蛾灯逢魔が時の風凪ぎて
行行(ゆきゆき)て南スーダンの誘蛾灯
誘蛾灯闇は優しきものらしき
エロスの夜タナトスのよる誘蛾灯
加川良教訓Ⅰや誘蛾灯
ことごとく命揺れをり誘蛾灯
猫カフェの建ちたる路地の誘蛾灯
ふくらはぎ打ちたくなりぬ誘蛾灯
スーパーの傍のカラオケ誘蛾灯
どつちにしてもああわからない誘蛾灯
誘蛾灯古びた湖畔一人旅
美しき夜の裏方に誘蛾灯
誘蛾灯学生時代ネオン街
日本三名園の奥誘蛾灯
雨粒をあおあお照らし誘蛾灯
さんざめく水の鎮もる誘蛾灯
雨に吹く煙草や誘蛾灯の青
誘蛾灯六肢開きてさざめきぬ
微かなる虫たちの修羅誘蛾灯
誘蛾灯吸ひ込まれゆく魂あはれ
誘蛾灯蜘蛛の巣もあり古ホテル
川音や木の間隠れに誘蛾灯
乱舞てふ艶あることば誘蛾灯
生き急ぐもの集めたり誘蛾灯
夕闇を衝く影絵や誘蛾灯
誘蛾灯さらふ分厚き掌
受皿に入らぬ骸も誘蛾灯
早朝は後の祭りや誘蛾灯
死ぬ物にお経をあげぬ誘蛾灯
ぱじぱじと時を喰らふや誘蛾灯
誘蛾灯覗き見る子のまがほかな
誘蛾灯に色を失くしたドレスかな
日の本に聳え都庁は誘蛾灯
命あるもの蝟集する誘蛾灯
一匹の迷へる虫へ誘蛾灯
客引きの言葉巧みや誘蛾灯
誘蛾灯集まる虫の極楽死
誘蛾灯いつもひとりで見る子をり
誘蛾灯正しく生きて死ににけり
誘蛾灯羽音落ちゆくしじまかな
虫だけでなく蝦蟇も居て誘蛾灯
散髪の音一面に誘蛾灯
いのち断つ音のかぼそき誘蛾灯
人界の際にありけり誘蛾灯
生きなけばいけない時に誘蛾灯
うるわしく近よりがたく誘蛾灯
誘蛾灯消えて一ト日の始まりぬ
誘蛾灯ともせばすぐに羽音かな
誘蛾灯あとがきばかり綴らるる
歌麿の枕絵かしら誘蛾灯
誘蛾燈せせらぎ近く露天風呂
遠きより誘蛾灯のみ生きてをり
誘蛾燈生は忽ち焦げはじむ
校庭の闇を近付け誘蛾灯
死はいつもとことはとなり誘蛾灯
犯罪の起こらない村誘蛾灯
誘蛾灯遠き田圃に音も無く
猫追うて暗闇坂の誘蛾灯
誘蛾灯昼は無聊を託ちけり
水黒く波うつてゐる誘蛾灯
地に落ちて暴れる羽虫誘蛾灯
借景の富士は闇なり誘蛾灯
誘蛾灯怪し光りが人も引く
をんなひとり誘蛾灯避け歩きをり
虫たちになんの咎あり誘蛾灯
誘蛾灯死の演出機目線浴び
誘蛾灯照らす扉の乳鋲かな
誘蛾灯落ちたる翅に眼の模様
誘蛾灯むらさき色の殺意かな
ただそこにあるだけでいい誘蛾灯
誘蛾灯終着駅の最終便
虫たちの修羅の果てなり誘蛾灯
後戻り出来ぬ気持ちや誘蛾灯
誘蛾灯小声遠退く気配して
人呼んでいるようにも誘蛾灯
その昔田園地帯誘蛾灯
誘蛾灯の音を聴きつつキンカン塗る
誘蛾灯やをら教官室青む
誘蛾灯無知の知かとも言ふべき死
射干玉の誘蛾灯てふ罠と闇
焦げ音に大小ありぬ誘蛾灯
高階に住みて懐かし誘蛾灯
乱舞して二匹落ち行く誘蛾灯
自然体誘蛾灯にも負けぬ様
焦ぐる羽を打ち鳴らしをり誘蛾灯
猫の子の遊び奪ひし誘蛾灯
羽音追ふ羽音もありて誘蛾灯
誘蛾灯の下は奈落か流人墓地
球場の火の消え誘蛾灯残る
山里のコンビニ鳴らす誘蛾灯
レコードに針を置くとき誘蛾灯
誘蛾灯へと競ひ合ふ影二つ
ばあさんの笠をかぶせる誘蛾灯
わかつていますがついつい誘蛾灯
誘蛾灯灯りに美化し死への旅
人生はバンジージャンプ誘蛾灯
密やかに待つ人遅し誘蛾灯
果樹園は拝火教らし虫篝
病床の妻の眼差し誘蛾灯
雨音の遠のくあとの誘蛾灯
誘蛾灯だけを灯して寝入りけり
因果とて苦界の徒か誘蛾灯
誘蛾灯コンビニエンスストアの
鬼平の視線の先や誘蛾灯
路地裏にそれぞれ違ふ誘蛾灯
赤提灯男を誘う誘蛾灯
白々と朝を迎えし誘蛾灯
誘蛾灯ともして行ける女の手
美しき模様を焦がし誘蛾灯
路地裏の油の匂い誘蛾灯
誘蛾灯けふも明日も吾ひとり
悪友の犇めくバーや誘蛾灯
誘蛾灯大きな影も狂い飛ぶ
白樺や別荘裏の誘蛾燈
誘蛾灯青ひ光りが魅惑する
水郷は真夜に包まれ誘蛾灯
駅前のシャッター街の誘蛾灯
誘蛾灯の明り頼りにゆく夜道
ラジオからジャズの調べや誘蛾灯
ぬるき夜をジジジと忙し誘蛾灯
音立てて命の終ひぞ誘蛾灯
突然の辞意挨拶や誘蛾灯
昨夜の惨ぬぐうてともす誘蛾灯
コンビニの常連客と誘蛾灯
誘蛾灯寝静まりたる我が家へと
白き肌かげをひろげる誘蛾灯
誘蛾灯だよりに角を曲りけり
終列車待つ吾れのため誘蛾灯
誘蛾灯うんか飛び交い限り無し
なんの虫はいつくばって誘蛾灯
しようがないことであります誘蛾灯
誘蛾灯虚しき工事現場かな
努力中てふ目隠しや誘蛾灯
誘蛾灯の音はランダム寝付かれぬ
誘蛾灯真下や独り露天風呂
夜の熱を青く吸い取る誘蛾灯
誘蛾灯炎に舞ふ蛾の妖しき絵
誘蛾灯日暮れて仕舞ふ野良仕事
誘蛾灯音立てて風生ぬるき
誘蛾灯点し客呼ぶ庭の宴
源氏名は蝶といひます誘蛾灯
誘蛾灯青き地獄の寂々と
もめん縄けむり出させて誘蛾灯
阿武隈の激つ瀬音や誘蛾灯
誘蛾灯マンゴーファームの丘暗し
道東の湿原近く誘蛾灯