兼題「枝豆」__金曜俳句への投句一覧
(8月25日号掲載=2017年7月31日締切)
2017年8月2日5:23PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年8月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【枝豆】
枝豆のさや切りそろえてある路地の店
枝豆の葉はそよそよと日もすがら
枝豆のときどき色を確かめて
枝豆の産毛微かな反抗期
枝豆とおしぼり置かれパリの宵
枝豆を食みて帰心の募りけり
キノコ雲立ちて枝豆青臭し
枝豆の弾けて猫の跳び行かむ
球音に歓声枝豆置き去りに
枝豆や裏表なき父の酔ひ
焼き占めの皿に枝豆盛ってみる
枝豆の土のこぼるる厨かな
もてなしは枝豆にまづ始まれり
枝豆を食ふことにもう飽きてをり
やはらかに乳の味して枝豆の
枝豆やぼつぼつ語り手は動く
枝豆は実にビールが大嫌い
枝豆の枝の剛毛沸騰す
ひたすらに枝豆だけに手が動き
円卓にまず枝豆を囲みけり
カナダからan edamameの手紙来る
枝豆のからいつまでも含みけり
枝豆の緑うれしき夕餉かな
枝豆のなんとも云えぬ薄す毛かな
茹で汁の蒼き匂ひや月見豆
枝豆を抱えて無沙汰詫びにけり
空論の飛び交う真下枝豆よ
枝豆や暮れるに早き山の畑
枝豆の微妙な膨らみについて
枝豆や緑(あを)香り立つ艶めきて
枝豆の山動かずや通夜の卓
酒のなき卓のはずれの枝豆や
枝豆のライブハウスのそこここに
枝豆食ぶ夫の寡黙に婿三人
枝豆の隣席激し流れ弾
無造作な山の枝豆白き皿
枝豆や勢揃いとはいかぬけど
枝豆の指や失恋忘れたし
蜆より気楽枝豆湯に放ち
枝豆の湯気立つままに運ばれ来
枝豆の枝で耳掻くをとこ哉
枝豆を洗ひしあとの水ぬるし
これもよし枝豆だけの老人会
だだちや豆庄内藩は議論好き
句会後のまず枝豆の出番かな
枝豆を食して途切れる愚痴話
枝豆のまろきを選み墓のこと
枝豆やひと夜で消える決まり事
枝豆は地に落ち意義を持つ物か
枝豆の残骸山となりて朝
枝豆や中日全勝ただ一人
枝豆にいつまで続くあと一つ
枝豆の茹で汁夕空のごとし
所在無く枝豆食むや老夫婦
枝豆や二人目つくる話など
一人っ子の出荷されない枝豆
枝豆食う見よう見まねを見まもりぬ
火襷に枝豆いろを失はず
枝豆とジュースが並ぶデートかな
飛び出して来る枝豆の味見する
多忙なり連夜枝豆宛がわれ
枝豆茹づ腹は北山宴待つ
枝豆や夜空に語る缶ビール
畏みて爪立つ枝豆引き抜かん
枝豆をつまむ手とまる二死満塁
とりあへず枝豆といふ二人かな
茹で加減塩梅よしと枝豆に
酣や枝豆鼻を飛び出でぬ
枝豆の両端を切る愛と恋
枝豆の緑先月を仰ぎけり
枝豆を食べつつ初恋をしのぶ
団欒を大事にするや枝豆は
手の癖の伸ばす莢入れ枝豆食ぶ
紙皿を枝豆の青溢れ出す
枝豆を扱く前歯と赤い爪
枝豆の正気の色をしてゐたり
冷凍の枝豆口に投げ入れる
新しい家族のカタチ枝豆に
枝豆の殻うづたかくうたた寝す
枝豆の先を落して決めること
枝豆に塩かけ過ぎて選む皿
枝豆や同じ時間を共有す
茹で上げし枝豆いよよ翠なり
枝豆を摘まむ下戸の手きりも無く
枝豆に喉ピクピクと痙攣す
枝豆は畑の隅で良く育ち
山盛りの枝豆みなの手が届く
枝豆と小言ひと皿課長補佐
畑より枝豆提げて巫女来たる
枝豆や蓋付きジョッキ高高と
残されて三日は枝豆食べ続け
枝豆を洗ふ井戸水また汲んで
枝豆の匂ひてきたる月の宮
枝豆や途切れ途切れの会話かな
枝豆を挟んで映画談義など
枝豆の塩加減から談判も
枝豆をふふみて愚痴を聞きにけり
ときに乗り枝豆食う間に越後越ゆ
枝豆の殻積む吾は聞き上手
大酒飲み枝豆におとがひ落ちぬ
枝豆や皿に緑の深きかな
枝豆を虫も食ってないなんて
枝豆や殻まで飛ばしホームラン
枝豆の飛んで屋上遊園地
枝豆や一人暮らしの恋しけれ
枝豆を盛りて和解の席とせし
枝豆の三粒が嬉し押し出せり
無口からちょっと生意気に枝豆
枝豆をさやから外す役の祖母
枝豆をつまみに夜に浸りけり
塩水が空席埋めていた枝豆
とりあえずの似合う枝豆とアレとぼく
「イウナヨ」という名の枝豆を賜わりぬ
緑から緑飛びでる月見豆
枝豆や茹でてさみどり鮮やかに
枝豆や口づけ少し鹽の味
枝豆や中国産とそつけなく
唇の赤く枝豆ただ青く
枝豆の刺身醤油の皿に飛ぶ
枝豆や好きでも嫌いでもない人
枝豆を黙黙と喰ひ夜の更ける
枝豆やほどよき母娘別れかな
地に落ちて枝豆猫のエサになる
枝豆や本家分家の畑堺(はたざかい)
枝豆や肌と同じの色を着る
王様は丹波黒豆の枝豆
枝豆や会話ほどよく途切れをり
枝豆の皿洗ひゐる男かな
マラカスを置いて枝豆二つ三つ
枝豆やたそかれどきの下駄の音
孫の鼻枝豆鉄砲大当り
枝豆の葉陰の闇の深かりき
枝豆を独り占めする夕餉かな
枝豆とビールで埋まり外野席
枝豆や個人情報よく聴きし
山と盛り両手づかいで枝豆を
産湯より上げたるごとき月見豆
鞘噛めば海の香ぞする枝豆や
枝豆や妻の話を聞き流す
枝豆を食す明日は雨やもしれぬ
枝豆を囲みし君よ空青し
枝豆を食めばブラスの響かな
ずつとずつとその他大勢の枝豆
枝豆の産毛にとまる蟻ひとつ
父となる今宵枝豆茹でにけり
枝豆や酒席の真中の咲ひ声
訳もなく枝豆飛ばすおなごかな
枝豆をつまんだ指を舐るなんて
青丹よし奈良漬けの枝豆を出す
枝豆や自分で育てし物である
枝豆の好きなわが子に父想う
空席に枝豆だけが残されて
愚痴りつつ枝豆つまむ雨の夜
枝豆や押出す豆を取りこぼし
ひと盛りの枝豆尽きて中座かな
枝豆やダブルヘッダー二試合目
朝採りの枝豆茹でて母想ふ
土被り枝豆の茎抜いてをり
枝豆のなくなるまでの話かな
とりあえず付き合うなんて枝豆
八百屋まで百歩の距離や月の豆
枝豆や子を産み落とし頃のこと
畑より抜き枝豆の荒々し
子供たち枝豆茹でておきましょう
枝豆の顔をいちいち見る子かな
壊れゆく母の手にある枝豆よ
ほろほろと噛めば寥しき枝豆を
うまいぞやしなす枝豆我が畑の
枝豆の泥撥ね返してたわわなり
ありふれた生き方でよし月見豆
枝豆の飛びて碁石を崩しけり
枝豆やあなた好みの妻になる
だだちゃ豆不良老人にはなれず
枝豆があれば酒の肴は御満悦
枝豆を茎から外す手の速さ
枝豆を受け止む口に生まれたり
枝豆や床にこぼれし豆ひとつ
枝豆やひとつひとつが生命なり
百年を生き枝豆の茹で具合
もう一株と枝豆抜きてくれし父
枝豆の緑増したり茹であがり
枝豆や父子で競ふ殻の嵩
筵へバサリ枝豆の株の束
枝豆を抜くや砂塵で前みえぬ
枝豆の青を散らして加薬飯
延延と枝豆毟るむしられる
縁側に広ごりし枝豆の色
枝豆を食い人を喰う男かな