きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「流灯」__金曜俳句への投句一覧
(8月25日号掲載=2017年7月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年8月25日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【流灯】
流燈をそっとせせらぎに置きもして
こつちから流灯あつちまでいつも
雑踏の波の彼方の流灯よ
流灯や鬼出づる五条大橋
児の流燈追ふて走りし闇の岸
ゆるやかに手を振りてゆく流灯よ
流灯を海峡せまく迎えけり
沖待ちの灯りあまたや流灯会
流燈のひとつ離れて薄闇へ
流灯の島々よぎる速さかな
流灯の振り返りみる吾妻富士
流灯のくぐる速さによぎる橋
流燈会異国の嫁のはしゃぎ振り
流灯の光り尾を引き離れけり
流灯やうちも流せとせがんだ日
浄土めく沖の漁火流灯会
流灯の灯せば離し難くなり
流灯に取り残されし我が身かな
流磴を置きし刹那の水に吾
閑けさや流灯を待つ笛太鼓
波音の高まり来たる流燈会
流灯や回収船も揺れ揺れて
息をするごと流灯の揺らぎけり
流灯の闇に袂の湿りかな
思ふとはただ流灯を送ること
姉と兄(あに)弟妹(おとうといもうと)流灯会
ときどきは自然渋滞の流灯
流灯に無言の意思のありにけり
流灯や後ろめたさは誰ぞ知る
流灯やゆらりゆらゆら異界へと
流灯を置くや大川動き出す
流燈のいつしか街の灯に紛る
流灯の揺れる水面へ鐘響く
流燈の振り向きもせず行きにけり
流灯や水に鎮める心あり
流灯の混み合つてゐる湾の底
流灯の冥きに浮かぶ船の影
先頭は姉の流灯なりしかと
ふるさとに若き妹流灯会
あの世しかわからぬ父母へ流灯す
手にかかる水のつめたき流燈会
流灯の岸を離れて戻らざる
流灯や人はちりぢり帰りおり
流灯の緩やかなれどもう追えぬ
流灯の去りて川音ばかりなり
流灯や袖を濡らして都会の子
月明かり流燈に先立ち照してる
流灯も孫も騒ぎも去りにけり
流灯の間もうつる揺らぎつつ
流灯か星かまたたく水平線
流灯に千の祈りと物語
流灯の造りや脆し波に消ゆ
流燈の波ひとつ越し速さ上ぐ
流灯の外つ国目指す速さかな
流灯や揺蕩うものの二三あり
流灯や月の淀川長等橋
本流に乗り流灯の速度増し
流燈に来年もとと別れあり
流灯の行方確とは定め得ず
我浮かれ流灯の日祖母は泣く
流灯の風に反乱起こしけり
流灯の妻とおんなじ早さかな
独白は下手に向きて流灯会
手離れを惜しむ風あり流灯会
流灯の行方は海か星空か
追いかけて追いかけないで灯籠流し
流灯をそっと差し出すやうにかな
流燈会足元案ず老親と
男らの肩盛り上がり流燈会
流灯の家路の空の星あかり
流灯や目で追ふ先の闇にあり
懐かしき香が流灯の闇にふと
流灯や寄り添ふやうで嫉妬せり
声明の闇は絹なり流灯会
流灯やひとつやふたつではなくて
人疎ら犬猫多し流灯会
初恋の人すれちがふ流灯会
流灯や期限なき夢はふりけり
流灯の行方を追へば水匂ふ
流磴となりてきままな母の行く
流灯会抱かれてみたる記憶あり
流灯のもとを流るる水ひややか
流灯の道ぬつたりと優しけり
流灯やあの子の船とぶつかって
流灯や心の闇をなほ深め
流灯のもはや豆粒水の果て
流燈の父は祖父母に追ひつけず
見上げれば星流灯の尽きる頃
小雨降るうみ流灯を流すべし
流灯の闇に向いてひとつ千
流灯や流した手もて明日集む
流灯の付かず離れず遠ざかる
流灯の肩寄せ流る太田川
流灯のしばし淀みて離れ行く
流灯の放せば迷ひなく海へ
流灯のひとつは雨にたたずめり
波に乗り父母の流灯遠ざかる
水音の消へ流灯の浮かみけり
流燈の群れて哀しき川流れ
流灯に魂あるごとく離れけり
流灯やエンジンふかし夫遺し
流灯の先に明るき扉あり
手の甲の水を押しやる流灯会
流灯の子の名ばかりの川ありぬ
混みあへる流灯ひとつづつ放つ
流灯会海の何処かに深き穴
流灯の岸へ影伸ぶ千羽鶴
横文字の祈りもまじる流灯会
流燈の果て月光のばかりなる
流灯や海にかすかな鈴の音
流灯や水面に光揺れ止まず
流灯の群去りてまた川となる
流灯や舟屋に闇の汐満つる
流灯の火のなきときの薄明り
流灯会果ててさざめき始む岸
流灯の細き入江にふかぶかと
闇にとけ闇に没する流灯会
流灯会厳粛なるもの笑ひ易し
流灯の舫ひて沖へ送り風
またひとつ吾を離れて流灯に
学帽を目深に被り流灯会
初孫を抱いて灯籠流しかな
流燈会送る人みな影絵かな
流燈をしばし放せず水に置く
灯をつけてみて流灯の昏き青
去りがたく残影を追ふ流燈会
流灯の集まるごみの溜まり場所
流灯も便利屋まかせこの世かな
添い歩くひととき夫と流灯と
星映す川に流灯準備成る
流灯の二手に別れ沈みゆく
流灯の一度回りて吾妻橋
流灯やどの子も何かしら光る
水面には流灯と震災の塵
流燈や子の泣声も風に乗り
手を離る流灯映す川面かな
流灯も人もなしたる列しずか
流灯や川の先なるビル灯り
流灯の行方定めぬ暗き川
流灯のたぶんはぐれてしまふべし
流灯や波に逆らふもののあり
沖に待つ者のゐるかに流灯会
流灯の交わり猛る大火かな
流灯や大数の法則ざわわ
流灯や川に雀が来て居ます
流灯のついさつきまでわれ照らす
流灯や明かりの帯を携えて
流磴のひとつづつ消え星となる