きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「柘榴」__金曜俳句への投句一覧
(9月29日号掲載=2017年8月31日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年9月29日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

電子版も発行しています

amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。

【柘榴】
何時までも貰い手の無き石榴かな
恋のようはぜる理由知る柘榴かな
右からの看板の文字柘榴の実
割れ柘榴落ちさうながら逞く
半畳を打ちて柘榴の披きけり
何鬼か柘榴食べてる我が家族
栞なき日記柘榴の割れてをり
柘榴噛み思ひ出したる初潮かな
まだ淡き宵の明星ざくろの実
潔く赤き牙剥く柘榴かな
群青に何を叫ぶや割れ石榴
柘榴食み甘く酸っぱき汁の味
悪ガキと盗みし柘榴浜で食べ
家裁へと向かふタクシー柘榴割る
山の雨駆け込む小屋の柘榴かな
地に落ちし柘榴ついばむ鴉あり
人と鳥狙ひ合ひたる柘榴の実
足停めてほれぼれ見上ぐる柘榴かな
実柘榴や石橋多き高瀬川
割柘榴美しきひと老ひてさへ
柘榴食ぶ片頬上げて笑ふ癖
慶弔のいづれの報らせ柘榴裂け
ほら柘榴皆それぞれに迸れ
鼻濁音にならぬ「ざ」の音の柘榴かな
爆ぜくづる手の石榴輝きて
ひとつずつざくろのつぶをつぶしている
Iターン誘われてゐる柘榴かな
ざくろのごと苦しめ死ぬな詩は謳ふ
血の色の道化の口の石榴かな
実柘榴や老人ホーム白き壁
実石榴の散らばる道の湿度かな
裏門の石榴を覗きゐる男
その実より花愛しみて祖母植えし
忘れ得ぬ詩語あり柘榴爆ぜにけり
青空は果てなきものよ実柘榴よ
この星もむかし火の玉割れ柘榴
地区の名に鬼多き土地柘榴なる
のせてみる柘榴一粒くすり指
分類の付かぬ欲情石榴ひとつ
ふるさとの門に柘榴の笑い顔
チューしたき気持ちなのかも石榴なる
のぞく種子秘密めきたる柘榴かな
復縁の可否を石榴に問ふ二人
柘榴手に美神は小首傾げけり
柘榴の実裂けて隣家の引越せり
アラブ人戦渦逃れて柘榴食べ
実柘榴や猫には猫の思案あり
口ゆがめ高笑いたる石榴かな
色深む机上の柘榴画きけり
泣く赤に柘榴握らす老婆かな
上品な柘榴を選りて朝の市
柘榴食へと言ふ老人の喉仏
朝もりて嫁入りしたる柘榴かな
人知れず裂けていくなり柘榴の実
地獄絵図の隅に有りなむ柘榴かな
黙りこみ薫りもせずに柘榴かな
帰りがたき家へと帰る夜の柘榴
頑なといふ実柘榴の噛み応へ
庭柘榴割りて我が家の鄙びけり
薄闇の家路灯(ひとも)る朱の花
嫁(ゆ)きし娘に子の頼りなく石榴植え
熟柘榴片恋ぞ香り甘かる
裂け目より蟻の這出る柘榴かな
実柘榴や閻魔の前で嘘言うて
そのかみは海の果実か柘榴喰む
診断は胞状奇胎なり石榴
あまりある空の高さや柘榴の実
深窓を触るる柘榴の若き実よ
子どもらに取れぬ高さの柘榴かな
昨日までの花実となる柘榴かな
おそらくはA型である柘榴かな
柘榴紅し予兆のごとき雲が出て
実石榴やかつてはここに誰の家
叫ぶごと割れて柘榴の近つ空
商隊の届けしざくろ陽の匂い
柘榴裂ける大音響のありさうな
身の内の赤さはずかし柘榴の実
艶やかで甘酸っぱい果皮柘榴割る
実柘榴や羊捌きて披露宴
実柘榴や少女の恋のあっけらかん
大名屋敷の跡形も無く柘榴の実
朱の色まこと可憐な花柘榴
艶やかに柘榴の割れ目陽に照りぬ
撓るまま枝に重たき柘榴かな
柘榴熟れタンスの中を覗きこむ
柘榴の実二号の画布に一顆占め
口あけて真っ赤な実まで逝きにけり
薄暗き靴箱の皿柘榴熟る
実石榴や横溝正史読みふける
実柘榴や白色尽くし喫茶店
実柘榴の熟れてよりなほ重さうに
実柘榴の迎ふるのみの終着駅
柘榴盛る籠のほつれに目をやりて
柘榴熟る日当りのよき長屋門
新妻の馬上に囓る柘榴かな
柘榴割りがつがつ食べる友と我
心音を確かめてゐる柘榴の実
自己主張強き女の石榴裂く
実柘榴や内緒の恋を口にして
卓上の柘榴夜更けにつぶやける
割れるまで胸に納めて世の石榴
割れぬまゝ外の国石榴甘さ秘め
実石榴やシュークリームの午後三時
天邪鬼柘榴食べてる孫の顔
饒舌の過ぎて身を割る柘榴かな
柘榴割け気魄失ふ日々となり
柘榴噛む山の味して好きになる
手に受けて柘榴尊く有り難く
割れてより人間らしくなる柘榴
酒醸す水に翳さす柘榴かな
人肉に似たる柘榴と聞きしかな
柘榴熟るはちきれんばかり孫の腿
柘榴粒クレオパトラの首飾り
黄朱赤いろ深みゆく柘榴かな
おさまりのつかぬ苛立ち柘榴の実
柘榴紅く割れて夕焼旅の果て
をんならの揃ひて笑ふ柘榴かな
実柘榴の物言ひたげに熟れてきし
描かるる柘榴の影の深さかな
半世紀描き続ける石榴かな
皆笑顔とは言ひ難し柘榴かな
柘榴なる鬼子母神あるお堂かな
実柘榴や祖母八人の子を産みし
口裂けて真っ赤なる実がばらばらと
堕ちてより叫び止まざる柘榴かな
筆先の点点点は柘榴の実
残虐な怪物となり柘榴食べ
すさまじき柘榴の林粛として
墓守が土産に持たす柘榴かな
少年を嘲笑ふごと柘榴割れ
海に日の没する時や石榴熟る
食ひ物に惜しき柘榴の飾り物
父は両手で支え持つ柘榴の実
辛うじて柘榴とどまるトタン屋根
見上ぐれば口あんぐりと柘榴かな
四つ辻に石榴の花の散つてゐる
失恋の男の嫌う柘榴かな
実柘榴の不思議な色のまま画かれ
腫物もわが身の一部熟柘榴
実柘榴や撒馬児干(サマルカンド)の陽の欠片
真実は何とでもなる柘榴割り
実柘榴や銭湯多き漁師町
実柘榴や和音哀しきバラライカ
石榴割れ大団円となりにけり
実を削がれ痘痕ばかりの柘榴なり
女子会の石榴カクテル話(わ)の弾む
児の抱く柘榴空爆つづくガザ
柘榴爆ず往復葉書戻りけり
口紅のやうに柘榴の汁垂るる
玄関が今灯されし柘榴かな
好敵手石榴笑むごと登場す
卓上に柘榴洋画の部屋となる
割柘榴駅舎日暮れて影ひとつ
黒塀の屋敷の庭の柘榴かな
熟れてよりはじめて気づく柘榴かな