きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「九月尽」__金曜俳句への投句一覧
(10月27日号掲載=2017年9月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年10月27日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【九月尽】
やつとこさその気になれば九月尽
夏物に風を通して九月尽
リフォームの始まる忌明け九月尽
九月尽薩摩錫器を交はしけり
小さき子の髪風に揺れ九月尽
九月尽明日は四国を住みにけり
声高に鳴く鳥の来て九月尽
富士山に雲棚引いて九月尽
Tシャツの選別せんと九月尽
街灯のうすら明かりや九月尽
ペン先の心地よきかな九月尽
シンガポールに行って帰って九月尽
交叉点の妙に広しや九月尽
九月尽風の騒げる湯治宿
鐘鳴らぬ訳を告げらる九月尽
逆算もほどほどにせむ九月尽
家々に法被の干され九月尽
庭木伐り手首ちくちく九月尽
円空の鑿の切れ味九月尽
踏み寄れば穴に引くもの九月尽
九月尽夫の煙草の香に眠る
しろがねの雨をこぼせり九月尽
奥多摩の山靄の中九月尽
迷路なる東京メトロ九月尽
九月尽いつもと同じそれでいい
生き物は食べ物である九月尽
希望には九月尽にも激突し
死んだふりしている時か九月尽
カレンダー三回めくる九月尽
スイッチが強く押されて九月尽
店閉ぢる主の背中九月尽
芭蕉扇あふぎて九月尽来たる
飲みかけの珈琲冷めて九月尽
野の花の淋しくなりて九月尽
新宿のビル街尖り九月尽
愚痴を聞きながら紙縒りて九月尽
鯉の背に白き傷あり九月尽
九月尽算盤はじく妻たけし
岩峰の鋭く澄みて九月尽
九月尽読書親しき節の来る
九月尽深夜に真理が開示され
風呂桶のぬめりの消えて九月尽
おんなごの心難し九月尽
九月尽ただそれだけのお話しさ
九月尽子規球場に人のなく
人絶えぬグラウンドゼロ九月尽
無人駅残花に触れぬ九月尽
秒針の正子に揃ふ九月尽
生きてゐるだけで幸せ九月尽
叢のちぢこまりけり九月尽
背伸びして樵のまねや九月尽
午後からは雨音ばかり九月尽
ダ・ビンチの模型息ずく九月尽
人生にはぐれし思い九月尽
ミサイルに二度起こされて九月尽
蜘蛛の囲が松から樋へ九月尽
田園も森閑として九月尽
夕暮は昭和と思ふ九月尽
青空に夜具干す頃や九月尽
九月尽果てなき強談判かな
他人に言へぬ秘密抱へて九月尽
今年会う人を数えて九月尽
九月尽朝の便座にまず手を置く
杖をつく妻に付き添い九月尽
恋しき人やっと忘れし九月尽
九月尽支線へ貨車を切り離す
みをつくししっとり濡れて九月尽
九月尽小さき羽根持つもの消えて
島の夜へ光の道や九月尽
九月尽日本・世界も荒れ狂う
履くことのなきハイヒール九月尽
人生の多き宿題九月尽
九月尽悼む言葉をさがしをり
九月尽無理を減らすや請求書
九月尽不安はインクの残量か
九月尽神事の神社遠望し
九月尽湯浴みの音の響きけり
道端の雑草活けて九月尽
人生の長き道程九月尽
対岸の山羊が草食む九月尽
葉の滴もの言いたげな九月尽
九月尽母断捨離に疲れをり
九月尽闇の香りをふと感じ
手放し漕き今日を最後に九月尽
反物に妣の名札や九月尽
待ち人の来ることもなく九月尽
九月尽長期予報とねこのひげ
九月尽足裏の畳ひんやりと
あてどなく歩く武蔵野九月尽
通信生の旅立つこの日九月尽
本棚の位置をずらして九月尽
夕映の空早まりぬ九月尽
九月尽賽の河原は風猛て
勃勃たる癌細胞や九月尽
チャルメラの懐かしき音九月尽
長編の最後の頁九月尽
九月尽グランドゴルフもっとやろ
店先のパン焼く香り九月尽
整理する本を積むのみ九月尽
九月尽頃合いよしと山の声
九月尽茶房の歴史語る客
青春に年齢はなし九月尽
聖母子や美は愛にあり九月尽
九月尽命はひとつあわてるな
回転の早い売場よ九月尽
九月尽死人の顔の老い早く
九月尽朝から止まぬ小糠雨
停まれば山気下りくる九月尽
成果得ぬ調べ事あり九月尽
沢音も密やかになり九月尽
熟睡に悩み捨て去り九月尽
今日の次はかならず明日九月尽
庭木伐り句種拾いて九月尽
隠沼の下へ羅針儀九月尽
綿シャツに日向のにほい九月尽
九月尽さっぱり気質の母逝けり
書き直すリレー白線九月尽
ひもすがら降り込められて九月尽
連絡を待つとはなしに九月果つ
土佐犬のしつけ仕上がり九月尽
ミサイルに一喜一憂九月尽
エラー値のまた出るシート九月尽
待ちわびる公開講座九月尽
雲並び信濃の旅や九月尽
トーストもバターも固き九月尽
圏谷の谺は絶えて九月尽
心音を慰めとして九月尽
九月尽酒が尽きたら政論も
九月尽ピーマン熟し赤となる
九月尽走れよ踊れ小学生
首筋に黒子見つけて九月尽
九月尽やをら吊り広告赤む
女でも男でもなく九月尽
配布物五十六枚九月尽
終電車座席まばらや九月尽
九月尽タクシーにいて親の訃報
何もかも尻切れのまま九月尽
床に毛を見つけ見つめる九月尽
草々に風梳き込みて九月尽
街の灯のとろりと映る九月尽