兼題「菊人形」__金曜俳句への投句一覧
(11月24日号掲載=2017年10月31日締切)
2017年11月6日5:44PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年11月24日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【菊人形】
たたかひを知らぬ菊人形の兵(つわもの)よ
菊人形胸のあたりが暮れており
菊人形兜巾篠懸纏ひけり
憂鬱を優しく見てる菊人形
菊人形錺職人無口哉
良き琴を菊人形に教へらる
大見得や苦心の果ての菊人形
悪役とアイドル並ぶ菊人形
菊人形衣装ばかりが菊の花
花の香を虚ろにこめて菊人形
客引けて手直しさるる菊人形
色合わせ苦心の作や菊人形
菊人形身八口より風起こる
菊人形まずは日舞の稽古から
大見得を切って動かぬ菊人形
菊人形去年と同じ観客も
隠密といへど目を引く菊人形
菊人形どう見ても洋風である
殿よりも姫着ぶくれて菊人形
ひととせのあまりの早さ菊人形
水だけでひと月暮らす菊人形
あたらしき菊人形の小指かな
菊人形少年隊の顔白し
香に酔うて後ろに傾ぐ菊人形
菊人形洋風なのがひとりゐる
菊人形枚方公園駅のそば
たましひは花の数だけ菊人形
時代劇歴史学んだ菊人形
切腹も美しきかな菊人形
すべらかし未だ乱れず菊人形
花やかに悲しんでゐる菊人形
市長賞今年は隣菊人形
考える暇与えず菊人形
咲き切らぬまま心中の菊人形
吠えられて眉毛動かず菊人形
血潮着て与謝野晶子の菊人形
夜に入りて貌際立ちぬ菊人形
たましいまでボロボロになる菊人形
繚乱をその手に制す菊師かな
夕暮れて処を得たる菊人形
語りかけ菊人形は笑み浮かべ
顔と手の老いることなき菊人形
青い目の子のままごとや菊人形
入鋏する人の立つ駅菊人形
菊人形演劇部員一人借り
菊師また新婦の襟を整へる
菊人形動かぬ信念見ならわん
会場のくまなき日差し菊人形
雨しとど傘かざされぬ菊人形
向き合ひて視線違へし菊人形
枯れかけてなほ見栄を切る菊人形
いまはプードル抱いてをり菊人形
敗残の兵どもの菊人形
荒武者もやはらぎ見せる菊衣
大粒の雨を涙の菊人形
丑三つの菊人形の寝息かな
かぐや姫の衣重たき菊人形
縫ふやうに挿す一色や菊人形
老菊師静御前を丹精す
手づくりの菊人形に化粧する
山に行き菊人形の掟かな
菊人形腕組みしつつ反り返る
戦ふ気なき信長の菊人形
菊人形イクジイイクメン並びおり
瞬かぬ眼が語る菊人形
ミサイルの空睨みつけ菊人形
祖母の背に隠れて覗く菊人形
失せ物は消えてそのまま菊人形
羽衣の白際立ちて菊人形
菊人形浪速本多の髷隠す
菊人形明るき雨となりにけり
待伏せが夜目にも白き菊人形
落魄の首塗り直し菊人形
菊人形はにかむように立ち尽くす
真夜中の菊人形に飢ゑかすか
菊人形戦さに遠き美男なる
菊人形香り楽しむ母娘連れ
草摺を赤に替へたる菊人形
明治風美男美女なる菊人形
夕闇に白さの勝る菊人形
緋縅の萌ゆる顎菊人形
菊人形衣の上の鎧かな
討つ人の不動のままよ菊人形
菊人形戦知らぬ手花に触れ
児雷也の蝦蟇を担ぐや老菊師
夢現永遠に隔つる菊人形
菊人形見つめてをりし天守閣
菊人形おんな菊師を従へて
菊人形作者の声のよくとおり
枚方はひらかたと読む菊人形
ドイツ語は少しわかるの菊人形
ぼんやりを見られているか菊人形
着せらるる菊人形の目と合へり
菊人形ハローウィンに初参加
端整に作る偽物菊人形
四方の風菊人形の背のきりり
振り袖の風に逆らふ菊人形
臨終の席に微笑む菊人形
菊人形白虎隊には小さき菊
武蔵野の景色濃くなる菊人形
紅刷いて菊人形の白虎隊
見し菊師菊人形に似たる顔
人見知りにも程がある菊師かな
胴殻の胸の痩せぎす菊人形
剣豪の間合ひ詰まらぬ菊人形
信長の歌舞く衣や菊人形
風語る異國のうわさ菊人形
菊人形祇園祭の鉾もあり
駆け落ちの前に菊人形つくる
一族の誰かに似ている菊人形
菊人形あいつの顔だいやあいつ
髪白き菊人形のくらさかな
悪役も澄ましてをりぬ菊人形
秘宝館めきて正午の菊人形
今は昔思い出多き菊人形
菊人形菊師の色悪らしき顔
安兵衛の竹光折れし菊人形
菊人形あらかた仕立て一服す
菊人形人形はみな美男美女
星空の真夜に語らふ菊人形
顔は稚拙がよろし菊人形
菊人形見得切りしまま運ばるる
彩りの鎧膨らむ菊人形
岐阜城の公園菊花展の巻
水撒いて菊人形に闇もどす
弁柄の菊人形ぞ立ちにける
繕へば胸の薄さや菊人形
お国のため菊人形のふらふらす
菊人形面立ちはみな似通える
だみ声で菊人形の絵解きかな
さつきより少し左か菊人形
口に袖あてて徒花菊人形
スカートを穿いてみたいの菊人形
菊人形影にたましひありにけり
行くあてを探す媼と菊人形
菊人形花の気貰う傘寿かな
目を引くや田舎駅舎の菊人形
菊人形人待ち顔の昼下り
身長はエゴイズムほど菊人形
灯の消えて語り出したる菊人形
菊人形ファイティングポーズを取って居る
菊人形野武士もっとも華やげり
通過列車行けば菊人形揺れる
吉良邸の片付けをする菊師かな
薙刀を翳す法師の菊人形
信長の首抱きたる菊師かな
産みの親の気配漂ふ菊人形
心地良き体の匂ひ菊人形
手際よく首替えられし菊人形
傾きて菊人形の濡れた肩
男にはおんなの匂い菊人形
菊人形関係代名詞ふふふ
花に埋もれ想ひひそめて菊人形
死地へ行く武者に水遣る菊師かな
満開を着る太閤の菊人形
新鮮な水溜まりあり菊人形
菊人形檜葉衣より着せ初むる
目標はワールドピース菊人形
菊人形裸電球葦簀張
傷ひとつなく斬られたる菊人形
老菊師苦心の跡やよしず張り
胸の花ばさり取られる菊人形
信長の菊人形は空を見ず