兼題「初冬」__金曜俳句への投句一覧
(11月24日号掲載=2017年10月31日締切)
2017年11月6日5:48PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年11月24日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【初冬】
初冬や庭師の気張る竹箒
たくましや初冬の街にカラス群れ
花もらい帰りたる式冬はじめ
暗くていやなあの時代冬はじめ
初冬の雲に突き刺す飛行船
部屋干しの多くなりたる初冬かな
鮮苔の色濃くなりて冬に入る
野の花の淋しくなりて冬はじめ
蒸し上がる薯蕷饅頭冬はじめ
初冬(はつふゆ)やシチューの野菜切られ行く
初冬や鼻腔の奥に扉あり
初冬の卓に見なれぬ封書あり
約束の通り初冬の朝の来る
初冬に本の整理や何やかや
銭湯の煙たなびく初冬かな
日本海ななめにうねる初冬かな
初冬のラジオの蒼きメゾピアノ
初冬の風に舞ふ葉と飛ぶ烏
初冬や素焼きの壺に花は無く
油圧式エレベーターの香や初冬
棚田にも冷たき雨の初冬かな
初冬のひなた選んで車椅子
初冬に白湯一杯の温さかな
はつ冬の畑一面光るもの
初冬や息子リストラしょげかえる
綿ぼこり薄日に舞へる冬はじめ
あけぼのの前まで走る初冬かな
初冬やちさく泡立つミルクパン
国境の兵に火を借る初冬かな
初冬のベランダによく日の当たり
よし行くぞ初冬の朝の寝床にて
新しいハンガー増える初冬かな
初冬やレンズ工場に夜の雨
看護師の訛り親しき冬はじめ
包丁を研ぐ音険し初冬かな
残り香を初冬の風に捨て放つ
初冬や少し濃いめのハーブティ
綻びの目立つ上着の冬初め
初冬や朝毎淡く梅の木が
初冬の鉢に実と花姫石榴
初冬よりヒートテックの肌着きて
初冬の湯気で開封する手紙
初冬や曳船過る運河かな
踵から鳥は水面へ冬はじめ
確かめて階段下りる冬はじめ
初冬や家組上げる木槌の音
あかときの珈琲の湯気冬初め
初冬の足に署名簿差し出さる
初冬の銀のバケツを満たす乳
夕灯愛しく点し初冬かな
雨細くありて初冬の光かな
日輪に朝の散歩の冬はじめ
折り鶴の残る病室冬はじめ
不確かな物が好きなり冬はじめ
初冬の老人らしく歩きます
初冬や王子のキスはなき目覚め
初冬や芽生えし緑幼くて
初冬の大根畑青々と
初冬や楽屋の小窓曇りけり
初冬の足湯に膝を揃へをり
生きる力吾にも鳥にも冬はじめ
初冬とて鈴を鳴らして来るじや無し
はつ冬や譜面をめくる音のして
果実酒の色染まりそむ初冬かな
初冬(しよとう)まであとまう少し家走る
夕陽落つ初冬の風に生死知る
靴底の重たき土や冬はじめ
初冬の暗がりから我呼ぶ時計
初冬の両手に提げし鍋支度
初冬に深呼吸して顔洗ふ
残り暦わずかになりぬ初冬かな
歯並びを治す子交じり冬はじめ
百段の先に初冬の海展け
名をもたぬ星座を探す冬はじめ
ストーブを点けては消して冬はじめ
初冬のビニールハウスにゐる日差
糠床の少し冷たき初冬かな
ポタージュに初冬の指を温めけり
吐く息のやうに初冬始まれり
初冬や玄関陣取る白菜箱
はつ冬の畦をたどれる家路かな
風呂温度一度上げたる初冬かな
初冬の旅立ち地図に無き国へ
初冬の目もとに増やすパールかな
初冬の列車の席のあたたかき
通勤者やや速歩なる初冬かな
発掘の埴輪の破片冬はじめ
初冬に組み上げるビル壊すビル
ペン立ての色華やかに冬はじめ
新たなる手品を覚ゆ冬はじめ
初冬の手の甲にするためし塗り
初冬並みまだ大丈夫世相見る
蒼天の枯山水や冬に入る
追ふやうな音を初冬のハイヒール
冬はじめフォークソングをくちずさむ
冬浅し南の山の膨らみぬ
ぶらぶらと初冬の浜を歩きけり
かすかなるモルタル匂ふ冬はじめ
初冬の空より落ちて竹とんぼ
はつ冬や父の遺せる村田銃
鎧戸の錆びて初冬の雨しとど
初冬やジェット気流に腰掛けむ
くつしたが布団のなかで脱げ初冬
冬はじめ馬の毛並に爪たてる
ベスト着て痩せ我慢の初冬かな
初冬の窓にビーナス裸像かな
ささやかに湯の花とかす初冬風呂
冬浅しビタミン剤を3種買ふ
身中に異音の出るも冬初め
はつふゆのてそううらないのおばさん
はつ冬やイムジン川の向ふ岸
初冬や借手決まらぬ角の部屋
国境一万六千尺初冬
お土産を買う幸せや冬はじめ
古都に住む夢をともして冬はじめ
内子座の薄き座布団冬はじめ
初恋は齢重ねず冬はじめ
チェロ弾きの丸き背中に冬浅し
初冬やビルの隙間に易者の灯
初冬のハンドル固く握りいずこへ
初冬や紙縒り差す煙管は形見
初冬や俥夫の駆けをり吾妻橋
初冬や機械の声の乗車口
初冬やまだ来ぬピザの配達便
卵からカラザをつまむ冬初め
苗植えし初冬の畑鳥遊ぶ
冬初め夫婦茶碗を新しく
家苞に絵入りの蝋や冬はじめ
初冬や御逢日の路上ぞ塞ぐ
冬初め垣根の旧家世継なし
初冬や東京の人速き足
初冬やハンドクリーム新調す
初冬を谺してゐるおめでとう
初冬(はつふゆ)や枝切られ行く大地かな
初冬の日を胸元に閉づチャック
あと3分起床むさぼる初冬かな
はつ冬やからだほどけていきさうな
初冬の街に風雲低く垂れ
初冬の便座を上げてするゆまり
イヤホンのボリューム下げて冬はじめ
初冬や背筋を伸ばし出勤す
冬初め素早く髪を乾かしぬ
走り廻る子どもら笑ふ初冬かな
石畳乾きてをりぬ冬はじめ
風の色白さを増して初冬かな
日だまりをまろびゆく猫冬はじめ
初冬の発声練習女声より
あの頃を思い起こすや初冬朝
初冬の牛丼店の二十五時
ぬくぬくと走る初冬のサドルかな
初冬の配線縒れて余所のおと
初冬に兄姉に送るベスト編む
流木の影うづくまる冬はじめ
初冬やホットミルクの白き湯気
ウクレレの調弦狂ふ冬はじめ
初冬の旅により無事祈りたる
博多帯きりりと締めて冬はじめ
内外の厳しさますや初冬夜
はつ冬の起きぬけにかぐ鼻血かな
冬はじめギター奏でる白き髪
通学子声の明るき初冬かな
初冬やのべつ幕無き小言かな
初冬やおせち予約し薪割る
初冬や白き野菜の出番かな
冬はじめ眉間しわ寄せ課金せり
かき氷食べた夢見た冬はじめ
初冬やエーゲの丘を木馬乗る
【不明】
夜寒さのコンビニ前の赤信号
息づかい聞える近さ赤い羽根
シャッターを降ろし鍵かけ夜寒かな
赤い羽根付けて貰いてシャイな夫
赤い羽根つけらるる夫空仰ぎ
粉薬器用にサッと夜寒かな