きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「人参(にんじん)」__金曜俳句への投句一覧
(12月22日号掲載=2017年11月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年12月22日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【人参】
人参を引く小気味良きピーラーよ
置き去りの人参久しぶりの祖母
人参を生で食ひしは餓鬼の頃
人参の切り方違う友がおり
揚げたての人参天麩羅売れに売れ
人参や白きシチューの海の中
人参を置けばパレットめく食器
温もりを集め人参赤きかな
細切りの人参盛って華やぐ椀
人参の苦み少なし時代相
郊外に人参多き市場かな
人参と交はす言葉はイェッポヨ
人参や風がなるほど甘きもの
人参に魂あれば見せて見よ
人参を食ぶと泉下の師に誓ふ
人参のほのかな甘み冬真近
幼子の手を引いて買う人参かな
成人映画みる老人みな人参
人参の少し染みたる割烹着
間引かれて人参積まれ限界集落
一本の人参華やかに切られ
アフガンの水路滔滔人参掘る
おさんどん先ず人参の皮を剥く
京人参ひときは洗い浄められ
芽よ出でよにんじんの種子等の声
人参はいまだに嫌ひカレーの日
人参も残さず模範患者なり
親近が湧くので人参ジュースかな
人参をぶらさげストリップ小屋に
人参をかじり三合コップ酒
薬だと思ひ人参食べなさい
山畑に人参掘るや母と来て
焼人参つまみに父の昼の酒
人参の葉風に揺れ吾が想ひ
ささやかな夕餉人参まこと赤
褒められしこと人参の顔明し
人参を積んでトラック光らせて
竹かごの人参かこむ絵筆たち
人参に始まつてゐる好き嫌い
人参の煮つけ山盛り合宿所
蒼天に人参掲げ農学部
ママ友と人参メニューで小一時間
土つきの人参洗う朝げかな
人参は目撃させるべからずと
独り身の夕餉人参刻む音
人参も混ぜておやつのケーキ焼く
人参や山国なりの無骨物
人参の栄養カロチン、キャロット語源
人参煮る「ペルシャの市場から」聞こえ
人参のフライや古希の歯槽骨
思案続き人参千に切り溢る
日の色の人参土中より抜きぬ
人参の毎食出てくる患者食
人参を生で齧ればうす甘し
人参ポタージュ啜りテンション上げるなり
人参の葉干したるままの山の宿
人参抜き唐・天竺に夕陽射す
人参や停止線沿ひの蛇口
人参の人参色にしてみせる
ぴっちりのラップうつくしき人参
ピーラーの人参うすく馬黒く
優勝馬の今宵人参山ほどか
やんちゃ坊主人参に譬へし祖母の顔
人参の葉のつくづくと長さかな
冬日より赤き人参買ひにけり
音たてて人参囓る永久歯
人参やフル充電の色となり
人参の一ミリほどの種を蒔く
紅葉(もみじ)という大根にまけじすり人参
人参の我慢してゐるやうな丈
人参や一皮剥けて浮かれ出す
コンビニの朝の鏡のここが人参
馬売られ小屋に人参残りをり
人参をぶらさげられて過労死か
人参とポテトチップと映画館
人参の色に魂せられ鍋の中
井戸端に人参洗う寒さかな
夜の納屋人参の香の占拠せり
人参は地底のマグマの色なりと
人参を妻は桜の花に切る
人参が人参になる赤い色
人参を潰して子どもハンバーグ
水に流せ風に捨てよと人参むく
人参の朱に薬膳の華やぎぬ
直会の人参つまみ席を立つ
老ひといふ現実見据え泥人参
黒ごぼうダイコンの白に赤人参
人参のスープとろける夕日かな
イタリアに行つてみたいと人参切る
人参の水のあふれて噴火口
人参を千切りにして食ふ愉悦
親方が人参の値段決めます
ちいさく切った人参のかどをとる
蓼科に生う人参や入日色
いい人とみなが言う人にんじん煮る
人参をみずえで描く三時すぎ
十勝川色無き人参の骸
泥付の人参洗う寒さかな
怒りともあきらめともなく人参切る
炒飯の人参つまみ出されたり
人間ヒトの列・人参と馬・出勤時
人参やアリスの国の落とし穴
粕汁や人参の色目出度けれ
人参が紅一点の漆椀
十字路の人参切れば寄する波
愛馬逝き人参供え馬頭尊
人参のことさら小さく切られをり
人参を入れない母を嘉したり
人参もケーキになれば食ふ子かな
鮮やかな人参添えて宴終えり
人参を葉ごと並べて朝の市
人参を人刺すときに使ふ夢
大人にはなれます人参食べずとも
人参の生き生きとして土中より
おふくろと人参選ぶ道の駅
人参の甘きにジンを流し込む
微塵切りされし人参凝視する
人参の夕焼けに濃き厨かな
人参の香に晴れし夢ありしころ
晩年やこのごろ人参好きになり
人参の葉をそつと落としけり
ぽっぽっと抜けし人参群れにけり
人参の赤き重さを籠に置く
人参の細かに宇宙食のカレー
京人参古都の歴史の赤さかな
鼻先の人参目先の慇懃
人参を掘り終へ夕日山の端に
知らぬ子とにんじんの髪の毛探す
肉じゃがや人参きちんと分ける奴
人参の椀に残りし園児食
人参のすでに長老めきし髭
人参をこりこりと噛む兎かな
人参を多用五つ児の離乳食
だからなに人参サラダ高く盛る
独り身に金時人参輝けり
人参の届かぬ先の闇の奥
人参の色に笑つてゐる赤子
人参の連なる海の夕日かな
人参を快挙の記事で包みおく
十年も勤めた会社人参剥く
年輪のごと人参の朱に見えし
人参の間引き菜一把ハイエナジー
ピーラーにいよよ人参艶増せり
京人参マグマの色に掘り起こす
人参を洗う手にある夕日かな
上州や人参を売る道の駅
人参の葉のくたびれてしまひけり
人参を折りて大地の音ぞ聴く
人参はいないとつぶした離乳食
気まぐれな女のかじる生人参
人参と呼ばるる童かの国に
人参を抜きトロッコに色生まる
人参の膾で終える巡礼地
人参のケーキなら子の食べるかと
遠目にも人参朱し朝の市
日の目ひとめ見てジュースになる人参
さあここに人参めしのひと椀を
段々畑人参抱えて青き空
人参も寒さも人も好きになる