兼題「剪定」__金曜俳句への投句一覧
(2月23日号掲載=1月31日締切)
2018年2月4日5:01PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2018年2月23日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【剪定】
雪晴れや水仙残し剪定す
一伸びをして剪定を終へにけり
剪定やはなびらの枝そのままに
こぼれ落つ剪定の音集めをり
剪定の親方私語を慎まず
あをあをし匂ひから来る剪定師
富士を入れ月を浮かべて剪定す
剪定の音は二人か三人か
山を越え剪定の音響きけり
先見据え剪定ハサミ庭師かな
剪定の鋏さしこみ線を描く
剪定の鋏の音に迷い無く
駅前や剪定中の改札員
剪定の海に向く庭大日向
剪定やB型乙女座の庭師
剪定の音の明るさリズミカル
揺り籠の子や剪定の手ぞ止むる
剪定のサクサクサクと鋏音
剪定や切られたる樹の香りけり
剪定や犬が走れば猫止まる
親方に会わんが為の剪定なり
剪定の終わりて空がよく見えし
剪定のひらりと一葉プラタナス
会心の剪定終えし皓歯かな
剪定や己の未来を約束す
剪定の盆栽傾げ鼻眼鏡
手薬煉を引きて剪定鋏かな
煙草とて剪定の手を休めたり
異議ありし坊主になりぬ強剪定
真似事の剪定戻らぬ失敗
剪定のアルミ脚立の軽きかな
剪定の音の止みたり時分時
剪定板幾可学模様を雪に描く
剪定の鋏に孫の写真ある
剪定や風無き午後ぞ曇りける
剪定の祖父に汚さる赤子の手
剪定のアラベスクめく木枝かな
剪定の一枝をただで貰ひけり
整然と剪定済みし柿の里
剪定や無理難題の鍵解けて
銀座並木の剪定人の見ず
剪定の済み果樹園のすっきりと
剪定の鋏の音へ大没り日
剪定の軍手小鳥のごと跳ぬる
過活動膀胱なのか剪定夫
剪定や視線は空に溶け込みて
剪定の男樹上に熊のごと
剪定の枝を積みあぐなぞえかな
剪定の枝踏みしめる足七文
ありがとうさよならと言い剪定す
剪定の脚立の天に置く鋏
剪定や律儀な伸びの枝いかに
足すよりも引くやうにして剪定す
剪定をして曇天のよく見える
落し物また掛け直す剪定師
剪定の虚空に響く便りかな
剪定に個性伸ばしてをりにけり
剪定終ふ狭庭にざはと風見ゆる
大空へ梯子立て掛け剪定す
剪定をされまじと枝は風に揺れ
山深く剪定の音谺する
剪定や選ばれぬのが良きことも
剪定の小枝あつめて達成感
剪定の木の香に満つる狭庭かな
剪定や弔いの列遠ざかり
剪定や男勝りの大鋏
あまた飛ぶ剪定の枝無口ほど
ラジオ音剪定音の合奏かな
曲尺の測るがごとき剪定す
剪定の傍に口出すだけの人
剪定の脚立の位置てふ勘所
剪定板どんどの腹で実を祈る
剪定のはさみの音ののどかなる
切株に憩ふ小昼や剪定夫
剪定や樹の声を聞くプロの技
剪定の諸木を洗ふ今朝の雨
剪定の試し鋏の枝拾ふ
おほぶりに剪定の音の積もりけり
剪定の鋏で交わす会釈かな
剪定の人も山河に溶け込みぬ
紫煙振り撒きにはか庭師の剪定す
剪定や心にもいらぬ枝のあり
七十年剪定なしの大銀杏
剪定の子の口笛のよく通る
剪定に海の光を広げたる
剪定の影だんだんに人形へ
あの空へ剪定の枝飛んで行け
樹勢果て剪るまでもなく折れし枝
剪定の自ずと起こるリズムかな
剪定の空をステルス戦闘機
剪定板狼煙のごと天翔ける
剪定の音冴え冴えと空に散る
剪定の鋏のうつくしき残響
剪定枝積んで唯一の影創る
剪定の枝に糸ありそれも断つ
剪定の途中じぶんの手相みる
剪定の子はまだ茶髪妹あり
剪定夫ひとゑだ残し帰りけり
剪定の終りし狭庭風走る
剪定の梯子を雪に深く刺し
剪定やその上青き北の空
剪定をしてぼさぼさの頭かな
剪定はしてよししない方がよし
剪定の鋏の歎き三拍子
「子に譲る」と庭師最後の剪定終ふ
青空をぱちりぱちりと剪定す
剪定の手薄なはうへ体躯寄す
剪定を禅と思いてひもすがら
よくもまあ切りに切ったり選定師
剪定やハサミの音にお茶どうぞ
植木屋が梯子要らぬと剪定す
はさみ持てさて剪定を迷ひけり
剪定の脚立支える息子かな
剪定の刃ものに映る気概かな
剪定や赫奕として遠嶺あり
剪定の男の褪せたキャップかな
剪定に景の明るくなりにけり
突き抜けて剪定の庭空青く
剪定の一枝ごとの小気味よさ
剪定に蕾大きを貰ひたり
剪定を見ならいたしや部屋ながむ
剪定を終へて水平線の見ゆ
病床の夫(つま)見守りて剪定す
啓蒙し啓蒙されて剪定す
剪定の枝を燃やすも雨の雲
剪定の枝間を風の匂い来る
剪定のまだかと憂う雪庇
剪定や耳にかけたるボールペン
剪定の音の響いて雲流る
剪定に払われし枝地に積もる
剪定や迷ひ少なきをんな技師
剪定果つ池に落ちたる枝ぬぐひ
営巣に良き日差とて剪定す
剪定や夕日の中の桃かざす
剪定やトトロの家が見えてくる
剪定の坊主の枝の集まりぬ
きらきらと散る鋸屑や剪定す
剪定のトウヒの先のオリオン座
剪定の鋏にも魂供養せり
剪定の隙間の空の置き所
剪定の鋏いつしかあたたかき
剪定や広瀬河岸に美術館
剪定の音やむところ遠鴉
剪定の鋏を研ぎて待つ日和
剪定の父の背中の丸みおり
剪定す四半世紀のキーウイ棚
富士見える十段脚立剪定す
剪定に男女の違ひしるきかな
剪定のていねいすぎる音つづく
剪定の具合確かむ首傾げ
剪定の農夫の指に鋏胼胝
【不明】
節分や季節の変わり目邪気多し
ガーガーと初烏鳴き日は昇る
【締切後到着分】
剪定の枝もつぼみも寝かされぬ
剪定の空へ地下足袋飛ぶ高さ
剪定や透けて白雲広ごれり
あんな松こんな松へと剪定す
剪定を終へて見届く昆布茶かな
剪定の空より指図せり親父