兼題「鬼灯(ほおずき)」__金曜俳句への投句一覧
(8月31日号掲載=7月31日締切)
2018年8月29日2:41PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
鬼灯は、アジア原産のナス科の多年草の実です。盆棚の飾りにも使われます。さて、どんな句が寄せられたでしょうか。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2018年8月31日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
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【鬼灯】
鬼灯を透かすや鈴を振るやうに
鬼灯の内に秘めたる鬼の意思
鬼灯を今鳴らしたは父だろか
鬼灯に緑と夕日混じり逢う
孫の手に容易にくづれし鬼灯
君に受く鬼灯笛といふ秘密
鬼灯の夜の帳に浮かびたる
鬼灯は光らぬものと知り二十歳
鬼灯を拝げ迎ふる祖霊(おやみたま)
ほほづきや姉妹気丈の泣きぼくろ
鬼灯や雨粒に濡れ若返る
教え子と分けし鬼灯ふと出さむ
鬼灯や能楽堂の廊の闇
口惜しくてもひとつ鬼灯種を出す
鬼灯や茶屋へ駆け込む雨女
鬼灯の破片を追いかける遊び
大山や鬼灯ひとつ暮れかぬる
鬼灯を燈して津波到達碑
鬼灯を供に離るる故郷かな
花屋盛る鬼灯のかご造花めく
ブブブーッと鬼灯ならす兄妹
ほほづきや舌と合性ありて鳴る
情熱にあらず鬼灯赤きかな
鬼灯をぶいと鳴らして花川戸
昼行灯夜鬼灯と似て非なる
仕事の手止めて鬼灯揉みほぐす
鬼灯や墓をほのかに照らしけり
鬼灯の作り話をまた聞かせ
鬼灯や生花となるは枯れしとき
鬼灯を初めて鳴らす五十路かな
用水に鬼灯流れ來日暮かな
鬼灯や夜半によく揉むふくらはぎ
鬼灯に生きると書いて放りをり
ほほづきの朱を無造作に子らは抜く
鬼灯の色にこだはりありぬべし
鬼灯や獣生まれしやうに鳴く
鬼灯の何かを呼ぶための朱色
袋裂きさらに鬼灯らしくなり
鬼灯をさつと鳴らして兄貴らし
鬼灯を吹けど幼子目を赤く
背の子をあやす鬼灯キュキュキュキュキュ
観音の市に鬼灯購ひぬ
鬼灯や隣家の赤子泣き止まず
青鬼灯身持ちの固いままで良い
破れても 頬づいて待つ 鬼灯の笛
鬼灯をつむとき袖をつまみたり
鬼灯や受付横の募金箱
鬼灯を鳴らせぬままに風の笛
鬼灯や別れ噺の白々し
湯畑の竹篭に鬼灯の束
鬼灯や色の中に泣く赤ん坊
鬼灯が鳴るとは誰が言ったやら
くしやくしやにする鬼灯を掃き出しぬ
鬼灯や何のためにか育てたる
鬼灯が鳴るとは嘘じゃあるまいか
仏壇の奥をほほづき照らしをり
鬼灯の置かるる卓の端あたり
鬼灯や遠くなりにし幼き日
鬼灯で 風船作る 祖母の皺
鬼灯を吹ける少女の時間かな
ほほづきの赤より赤し君の紅
鬼灯を鳴らして夜を呼びにけり
鬼灯一つ掌(てのひら)にある家路かな
鬼灯や器用な坊やと褒められて
舌先の鬼灯鳴らす母の母
鬼灯を吹くや親子で口揃へ
野仏に鬼灯供えて在りにけり
鬼灯やメリーゴーランドの様にある
鬼灯の中に火種のあるらしき
照れながら鬼灯を吹く老婆かな
鬼灯の衣剥ぐ指の汚されず
鬼灯や小さき恋のめばえらし
鬼灯や糸に油の浸むる音
ほほづきの衣は和紙の五枚はぎ
鬼灯の越境けふもたしかめり
鬼灯や花屋の夫婦住む二階
鬼灯や恋した頃は青かつた
鬼灯や帰れば一つ仕事あり
母が娘に鬼灯鳴らす自慢げに
ほほづきの赤まんまるに漲れる
鬼灯や卵割るとき夢零す
少年から少年口移しの鬼灯
鬼灯の風の優しい音なりて
鬼灯や和菓子のやうな風情あり
鬼灯のてるてる坊主下げてみる
窓越しの 夕暮れ色と 鬼灯と
鬼灯を横に教頭照れにけり
鬼灯や寺に嫁ぎし従妹あり
ほほづきの頬三つほど覗きたる
鬼灯を鳴らして赤い橋の上
鬼灯や指に昭和を知る母娘
鬼灯のオレンジ迫る指の先
鬼灯に岩塩のつぶてがあそぶ
鬼灯を笛にせし父もうゐない
鬼灯の記念日嬉し三つかな
鬼灯を吹くとき祖母の顔がふと
鬼灯や心は時に見えやすし
鬼灯や娘の口にビイと鳴る
ほほづきに優りし吾子の睾丸よ
遠縁の男がくれた鬼灯や
鬼灯や卵子五百を棄て女
鬼灯や柑橘類の下にあり
懲りず買う姉も鳴らせぬ鬼灯を
鬼灯の中身と外見同じ色
鬼灯の緑(あを)み赤みの一枝に
仏壇の鬼灯枯れて静まれり
鬼灯に亡き人映す灯籠か
鬼灯のひとつ点るる掌
鬼灯や夕餉の会話ともしけり
鬼灯を吹きて夫の白髪ゆれ
鬼灯の籠下げし人電車にも
鬼灯をならす少年ひとりなる
酸漿の実に太陽の落ちにけり
鬼灯や少女のままでゐられずに
誰がために鬼灯熟れた実を灯す
鈴鳴らす鬼灯ひとつ予約せり
雑貨屋に鬼灯所在なさげなり
鬼灯を鳴らせば幼の日に帰る
鬼灯の朱鮮やかに眩暈する
鬼灯を一本挿して村の茶屋
鬼灯の各々持つや世界観
鬼灯を鳴らして祖母を想ひけり
青鬼灯三人組のお巡りさん
鬼灯の花に気持ちを添えにけり
酸漿の実を吸ふ際の紅の口
口唇に鬼灯あてて誘ふひと
鬼灯や大庇より鳩舞へり
鬼灯や開けば赤い笑顔あり
鬼灯をインテリアとす夕餉かな
ほほずきの種もみほぐす指づかい
鬼灯や鳴らせぬままに半世紀
鬼灯の鳴る音ひそか大人びて
種出して鬼灯袋作りけり
この晴れを期してほほづき色づけり
虫喰のほほづき余白の増えし家
鬼灯や鴉の低く鳴いてをり
もぎ取りて少年鬼灯差し出せり
ぶら下がる鬼灯何に見えて来る
野辺の墓手向く鬼灯夕日さー
鬼灯や閻魔の座する小さき寺
酸漿を手懐けてより泣かせけり
鬼灯の種楊枝の先青く染む
くちびるで鬼灯鳴らす娘かな
鬼灯を鞄から出す校舎裏
鬼灯のうづもるる庭戸のすき間
ほほづきのつるりと舌に触れて泣く
その先は鬼灯のみが知りしこと
葉隠れや鬼灯色の恋をして
鬼灯が遊戯場にある人工馬
鬼灯を輪に編みて墓石に掛く
鬼灯の存在感に今気付く
半七のやうに鬼灯鳴らしけり
名ばかりの笛鬼灯のぶうと鳴く
鬼灯の実はいつか見し獣の目
万太郎の脚引つ張るな青鬼灯
鬼灯が明るくしたる仏間かな
鬼灯を口にふくんでみたものの
鬼灯を枯れさす独り夕餉かな
いつ鳴るや鬼灯楊枝青くして
鬼灯のすべて諦め萎みをり
鬼灯や時間の少し巻き戻る
鬼灯をよく鳴らしをり女の香
思春期やほのかに熟れし鬼灯よ
鬼灯や路地に女の深なさけ
鬼灯の袋の中は夕焼か
鬼灯の夢の心を開きけり