兼題「春炬燵」__金曜俳句への投句一覧
(2月22日号掲載=1月31日締切)
2019年2月21日8:24PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
暖かくなってきましたが、寒さが戻ることもあり、炬燵をしまう時期はなかなかに難しいですよね。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2019年2月22日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【春炬燵】
布団ごと引いて窓辺へ春炬燵
宿題を覗き込む父春炬燵
恋敵腹探り合う春炬燵
ホームレス集う川沿い春炬燵
長編の大団円を春炬燵
死ぬ順を話し合つてる春炬燵
春炬燵猫が恋して我一人
春炬燵人を想ひて手紙書く
木箱から孔雀の索子春炬燵
小夜食や互い無口に春炬燵
置き去りの婚約指輪春炬燵
文鳥の籠のあかるし春炬燵
煎餅の湿気りごろなる春炬燵
ペンで書く御礼の手紙春炬燵
たばこ屋の減りゆく街や春炬燵
足先に猫弄ぶ春炬燵
春炬燵火の消えしまま置かれたり
春炬燵猫は出かけてをりにけり
バーバパパはピアノになりぬ春炬燵
あいうらのまだ温かき春炬燵
手鏡で髪梳く妻や春炬燵
恙無く終えし法事や春炬燵
手紙読む手がふと止まる春炬燵
存在が留守番役へ春炬燵
もう鳴らぬ携帯電話春炬燵
春炬燵夜半の蛇口の雫かな
死後のことあれやこれやと春炬燵
対面にリーチ掛けらる春炬燵
春炬燵結局家族同然に
あれそれで用の済みたる春炬燵
春炬燵爺と婆との口喧嘩
爺婆の鼾輪唱春炬燵
賭けもせぬ馬応援す春炬燵
猫たちが入ったり出たり春炬燵
千金の思想つんどく春炬燵
春炬燵出稼ぎの父帰る頃
ふられてもふられても好き春炬燵
春炬燵柱時計はカチコチと
御茶漬の塩気つよかり春炬燵
卵ならそろそろ孵る春炬燵
暖房を皆切ってから春炬燵
平日の非番の午後の春炬燵
春炬燵余震に馴るることもなく
リモコンに手が届かない春炬燵
夫(つま)と我(われ)と猫の温度差春炬燵
春炬燵独り身は背を丸くして
回し読む「折々のうた」春炬燵
雑誌しんぶんマンガ満開春炬燵
春炬燵だから論語を暗誦す
春炬燵口を利くのも億劫な
春炬燵奨学金の申請書
春炬燵掴まり立ちを始める子
その話さつきも聞いた春炬燵
まだ眠る父のいびきや春炬燵
春炬燵何が起こるか気配して
うたた寝の明るく覚めて春炬燵
春炬燵相談事をひねり出す
テレビ消されれば目覚める春炬燵
老いの背は陽射しにまかせ春炬燵
眠る妻起こさずに置く春炬燵
春炬燵夫婦向かいて言い泥む
水とほるからだの軽し春炬燵
退職の朝につまずき春炬燵
邯鄲の枕はいづこ春炬燵
春炬燵溢れし椀のシミいくつ
老人のテレビに飽きて春炬燵
春炬燵丸付けながら繰るチラシ
いつの間によそのこどもと春炬燵
流されしままの人生春炬燵
足洗ふことの叶はぬ春炬燵
ケアマネに説教さるる春炬燵
春炬燵いまだ木立の眠りをり
つま先まで伸ばしてひとり春炬燵
若き日の書込みを読む春炬燵
春炬燵畳の豆を集めたる
春炬燵掴まり立ちを覚えたる
誰か呼ぶ声遠く聞こへ春炬燵
巻き戻す記憶の時間春炬燵
耳遠く屋根打つ雨や春炬燵
引っ越しの算段せねば春炬燵
春炬燵いやになるほど妻を待つ
長居して悔むことなき春炬燵
ジョギングは三日坊主や春炬燵
春炬燵中に甘酒仕込みけり
燻りて燠の頑固や春炬燵
春炬燵畳みて広き四畳半
妻といてメールで会話春炬燵
鏡台をそびらに浴びて春炬燵
くれないの雨に夢みる春炬燵
掃除機の音迫り来る春炬燵
うとうとと韓流ドラマ春炬燵
申告の数字揃ひぬ春炬燵
朝夕に手足突っ込む春炬燵
足首と膝コキコキと春炬燵
大道に婆小商ひ春炬燵
昼日差し夫の肩もむ春炬燵
見当たらぬリモコン二つ春炬燵
読みさしを散らかしたまま春炬燵
コマーシャル飛ばさずに見る春炬燵
ページワン負けて不貞寝の春炬燵
ぺしやんこで眠るキジ猫春炬燵
決別を先延ばしにし春炬燵
父の座に猫の居座る春炬燵
春炬燵わがもの顔の出前ピザ
春炬燵懈怠心を育てをり
古雛の貰い手のこと春炬燵
出漁の声猛々と春炬燵
春炬燵万太郎の粋偲ぶ宵
人柄の余音の中の春炬燵
行く末もほぼ定まりて春炬燵
老眼鏡何処へやつたか春炬燵
春ごたつ窓に動かぬ松の影
ゆめ・ねがい飲み込み温し春炬燵
春炬燵うとうととして夕暮れぬ
本読んで居眠りす夫春炬燵
雨足を気に掛け宿の春炬燵
縁側に人集まりて春炬燵
横座にもすはる人なき春炬燵
返済を延ばす相談春炬燵
春ごたつクマの踵を前にして
語り部のすぐ打ち解けし春炬燵
消しかすの溜まる一角春炬燵
ぢーちやんに追ひつく歳や春炬燵
ナースにはナースの暦春炬燵
春炬燵泣きつ笑いつ役終える
薄汚れ見ぬふりできぬ春炬燵
春炬燵塾のない日は居眠りを
春炬燵次女の受験を言い訳に
春炬燵陽を浴びぼーっと座したまま
言われなきゃ立たない父や春炬燵
掛布団花柄にして春炬燵
春炬燵この地は六月までは役
手を拭きてまずは腿まで春炬燵
積読を横に積み上げ春炬燵
度忘れの字を指で書く春炬燵
おとうとの箸左利き春炬燵
春炬燵良性頭位眩暈症
春炬燵ほどよくだめになつてゆく
たましひの抜けた寝すがた春炬燵
久作のやうに笑ひて春炬燵
看取られぬ老いの死もあり春炬燵
春炬燵一人黙々昼ご飯
春炬燵要(い)らないような要(い)るような
過ぎし日も夢とやなりて春炬燵
春炬燵子らが潜って隠れんぼ
春炬燵その気になりぬ昼下り
人間てお金がかかる春炬燵
団欒でパンジー置かれ春炬燵
寂しがる一人の脚や春炬燵
春炬燵足を伸ばしてアレ伸びず
告白の刻を逃して春炬燵
さよならをしたくて出来ぬ春炬燵
保護猫をまた貰いきて春炬燵
四名の定員のあり春炬燵
父も母もおまけに妻も春炬燵
ひとときと永遠の狭間春炬燵