兼題「春の虹」__金曜俳句への投句一覧
(4月26日号掲載=3月31日締切)
2019年4月15日12:34PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
「虹」は夏の季語ですが、春にも淡い虹がかかることがありますね。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2019年4月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【春の虹】
大瀧の畔(くろ)にあがるや春の虹
擦り抜けるをんなの體春の虹
春の虹恋か仕事か決めかねて
工煙の真つ直ぐのぼり春の虹
春の虹愛は呪縛と抗議され
一ト筋の寓話のごとし春の虹
定年が厨から見る春の虹
はじまりは曖昧なまま春の虹
海峡の波荒くして春の虹
バス停に忘れ傘あり春の虹
富士見坂息せき登る春の虹
春の虹月曜の朝走り出す
北の子のハートに届け春の虹
すこしづつ記憶の消えて春の虹
食卓に妻の手紙や春の虹
春の虹どんなに視ても五色なり
山々の春の虹には共鳴し
春の虹見届けたくてペダル踏む
春の虹木の葉に残る雨しずく
この空に所有権なし春の虹
高層の窓にゴンドラ春の虹
琉球のうた高らかに春の虹
すくすくと大人も育つ春の虹
春の虹片脚丸木美術館
原宿の綿菓子ふくむ春の虹
新幹線糸魚川駅春の虹
よくぞ来た独り旅褒め春の虹
天空に大地吊り上ぐ春の虹
春の虹よからぬ予感消え失せて
いつの日か夢を叶えむ春の虹
春の虹外出できぬもどかしさ
埋立地二つつなぎて春の虹
茶畑の畝の蛇行や春の虹
春の虹赤子泣き止む間に消えむ
春虹やキリンの舌の濃紫
片恋によはひ蹴とばし春の虹
元号の予想頻りや春の虹
春の虹琵琶湖に浮かぶ宇宙船
三角を引きて丸足し春の虹
銭湯の煙ゆうゆう春の虹
春の虹見ることもなく二度寝して
誕辰の装い軽し春の虹
借景に瀬戸七島や春の虹
島を出る船のくぐりし春の虹
屋上へ出るまで待つて春の虹
月曜の朝の陸橋春の虹
春虹や海釣り公園行きのバス
化野の煙の旅や春の虹
春の虹今会いたいと電話する
恋人は団地住まいや春の虹
春の虹黄色い畑の向う山
静観で治る見込みは春の虹
式終へて諸手に荷物春の虹
上京の車窓声なき春の虹
春の虹メールで愛を告げにけり
まあだだよと言ひて消えし子春の虹
痛恨の一打を仰ぐ初虹かな
春の虹けふもまたねといふ言葉
君笑う太陽のよう春の虹
春の虹東武蔵に西相模
水溜まり傘をたたんで春の虹
春の虹乗せ宍道湖の翡翠色
見しものは夢か現か春の虹
計画を聞かされながら春の虹
今津より湖を渡りて春の虹
春の虹今日のおやつは花林糖
一節をさらふ間に消ゆ春の虹
外壁の工事十階春の虹
春の虹山に訓練隊が行く
春の虹やがて山河は母となる
おむすびに塩の足らない春の虹
友はみな都会へ行けり春の虹
昼寝後の睫毛に重し春の虹
美しきものは儚し春の虹
春の虹ウルトラマンが腰掛ける
まだバスが来るに間のあり春の雷
春の虹父の言葉に育てられ
珈琲を電子レンジに春の虹
七色のウポポの声や春の虹
この次は逢へぬ予感す春の虹
明日語る人ゐて春の虹の色
ビオトープ見上げる空に春の虹
丸襟のブラウスとゐて春の虹
春の虹住吉川に二重橋
ラジオより実況の声春の虹
春の虹新元号に脚を掛け
麗しきむかしの恋や春の虹
春の虹パピプペポしてタチツテト
春の虹母はむすめを忘れけり
店員のまた入れ替はる春の虹
空っぽの人生空に春の虹
遠く見ることも久しく春の虹
春の虹誰に伝えむ消えぬうち
初めての彼女は理系春の虹
縄跳びの弧に春の虹重なりて
ふり返る彼の肩越し春の虹
見舞ひたる母の教へし春の虹
あたたかき眼差しになる春の虹
どうせなら妻に見せたき春の虹
少年は破片を拾ふ春の虹
くしゆくしゆと泣きそむる子や春の虹
春の虹華奢な少女のふわりと来
春の虹もつとも淡き町に立つ
助手席を寂しいままに春の虹
ホノルルにいま着陸す春の虹
汚染袋山の端にや春の虹
春の虹転職書類に写真貼る
春の虹器用に嘘をつく人と
ぼうとして生きる日もあり春の虹
あのことを聞かんとすれば春の虹
スパンコールスパンコール応答せよ春の虹
軽便の駅まで遥か春の虹
余命とも希望とも見ゆ春の虹
わが余生まだある五欲春の虹
春の虹学童疎開記念館
春の虹いまだ七分といふほどに
集団で走れば出来る春の虹
神々も恋を始める春の虹
教室の時間をとめる春の虹
近づけば遠ざかる人春の虹
きぬぎぬの田の神迎ふ春の虹
スーツには少しの野心春の虹
初虹や口笛のサビ掠れをり
九官鳥あたらしき名を春の虹
慰めし電話のありて春の虹
薬局は北向きに建ち春の虹
春の虹両脚しかと山と海
消えぬやう少し歌ひぬ春の虹
耳朶の穴風の通ひ路春の虹
三英傑(さんえいけつ)輩出したる春の虹
マラソンのゴールに立てり春の虹
巡礼の列森を抜け春の虹
相傘の別れや遠く春の虹
春の虹めざして鳩の飛び行けり
たしかにねそうですそれが春の虹
春の虹月日はすぎるためにあり
観覧車半ば消えゆく春の虹
路地裏のはざまの空に春の虹
北浦の宿の湯船や春の虹
春の虹亡き子の婚礼かもしれず
春の虹目薬二滴さしにけり
京訛りうなじに透けし春の虹
佇立して春の虹見る被災の子
春の虹おや珍しと眼開く
春の虹蛍光色の雨上がり
曙の睫毛に重し春の虹
春の虹湖より出でて湖に消ゆ
片想いまあるく生きて春の虹
舟を出す三途の川の初虹かな
備忘録どこへ行ったか春の虹
春の虹うすら東京スカイツリー
春の虹人事異動にわが名前
ふざけ合う下校の子等へ春の虹
万力を使はぬ床屋春の虹
春の虹ベランダへ出す籠の鳥
春の虹思わず叫ぶ「ラッキー!」
一片のバウムクーヘン春の虹
この思いかたちにできず春の虹
春の虹偏差値高き志望校
スカールのオール止まれり春の虹
中絶の手術を終へて春の虹
気が付けば道が濡れたる春の虹
耕せば畑から昇る春の虹
それぞれの窓に輪郭春の虹
春の虹フラスコ底の白き粉
高速道路(ハイウェイ)にまだ塗りたての春の虹
幼稚園の窓の全開春の虹
この街に生きると決めた春の虹
花時計植え替え済んで春の虹
春の虹埋立地より立ちてをり
てのひらに消えてゆくなり春の虹
春の虹子羊のごと消へにけり
湖に徐々に出来行く春の虹
エンドロール途中に出でて春の虹
病院は丘の上なり春の虹
来し方のあまき思いや春の虹
頑張れと言われるのは嫌春の虹
春の虹母と比べる生命線
春の虹市民病院跨ぎをり
夕暮れの睫毛に重し春の虹
春虹を留め洋上フルコース
豆腐屋に豆腐を買ひに春の虹
一斉に向かふスマホや春の虹
絵本には消ゆることなき春の虹
四部合唱漏れくる窓や春の虹
信濃路の田の神迎ふ春の虹
春の虹途中下車して君の駅
硬膜下術後目覚めて春の虹
春の虹消えて無くなるものばかり
一村の沈みし湖に春の虹
取返しつかぬ一球春の虹
デジカメに撮れば味無き春の虹
春の虹明石大橋すっぽりと
春の虹目を離したら消えさうで
空港橋時速百キロ春の虹
山頂に花の環生まれ春の虹
野を街を洗ひて生まる春の虹
冷めやらぬ情事の火照り春の虹
春の虹緑のかげは濡れぬまま
春の虹いま平成を出たところ
春の虹希望絶望灰色に
フリガナの欲しき名字や春の虹
春の虹進路決まりてピアス穴
空低く垂れ込め春の虹が出る
春の虹人は写さぬ鏡とか
目の痒み収まる午後や春の虹
古地図ではここは湖春の虹
始まりも終わりもなくて春の虹
【春の雪】
さりげなく別れの予感春の雪
春の雪黒土に触れたちまちに
天よりの名残りの便り春の雪
華やかに積もりて溶けて春の雪
掌にひそと溶けゆく春の雪
【春の風】
土を踏み草を踏みては春の風
櫛をもて分ける七三春の風
抜けばすぐ出てくるティッシュ春の風
伸びをして掴む鉄棒春の風
春風の裏にまはりて出す私信
おにぎりもおむすびもあり春の風