「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

あかのまんまは、犬蓼（イヌタデ）の花のことです。粒状の紅色の花を赤飯になぞらえてこう呼ばれます。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』２０１９年１０月２５日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【赤のまんま】
子のにぎりしめたる赤のまんまかな
戦死者も交じる墓苑や赤のまま
境界に赤のまんまや故郷売る
ひょいと跳ぶ小川の岸に赤まんま
赤まんま三つ違いの姫路の姉
道端のどこにも咲いて赤のまま
通学の面影ひとつ赤まんま
芝生の端小犬匂いし赤のまま
解体の窓にあおぞら赤のまま
赤まんま声をかければよかつた子
足もとの赤のまんまや離郷の日
赤のまま初めて北へ一人旅
空っぽの田の畦飾る赤まんま
赤まんま訛り言葉を友として
赤まんま摘まうにも背が重過ぎて
赤のまま食卓塩の空き瓶に
縁石の裂目より出ず赤のまま
鶏も子も放し飼ひたく赤まんま
赤まんまよりおまんまの疎開の子
赤まんまあの日あのとき君と見た
昭和期の赤のまんまや子だくさん
ままごとの母米寿なり赤まんま
赤のまま列の頭は彼方なり
ことおこり足のすくむや赤まんま
赤のまんま我にもありし幼き日
赤のまんま頬寄せ合ひて童子仏
海暮れてをり赤のまま鋭角に
道祖神赤のまんまの供え物
夕されば赤のまんまに風の湧く
犬連れて野原の道知り赤のまんま
背伸びせしあとは動かず赤のまま
描かんとして赤ならず赤のまま
菜園に抜かれず残る赤まんま
生傷の絶えぬ吾子なり赤のまま
赤のまま煉瓦の塀の崩れをり
けもの道赤のまんまにうずめられ
赤まんまサンマを供えし彼岸かな
赤のまま土に汚れし球拾ふ
赤のまませんべい蒲団干されあり
赤のままロンドン橋は落ちにけり
旧街道ふっつり絶えて赤まんま
わかれ道赤のまんまのある方に
赤のまま滴やどして雨の夕
陽の入りの山はしろがね赤まんま
管理地の朽ちた看板赤のまま
赤まんま幼なじみの死を悼む
靴音のぶんの足あと赤のまま
赤まんまほんとはあの子が好きだった
幼なじみ思い出させる赤まんま
休田に昭和の香り赤まんま
お風呂にします食事にします赤まんま
赤のまま虫のすがらぬ重さかな
赤まんま少女は母となりました
赤まんま床にこぼれぬ朝の居間
失ひしものほど欲しや赤のまま
人見知りの強き町の子赤まんま
ほっぺたの赤い少女ら赤のまま
ままごとの居間の退屈赤のまま
明け方の雨のやさしき赤のまま
思ひ出に赤のまんまの揺れ止まず
道端の雑草深々赤のまんま
赤まんま箱の駄菓子をみなで分け
赤まんま普段の心大切に
ひとり旅の我に近づく赤まんま
鹿島立ち赤いまんまを見納めに
赤のまま何てことなく別れたり
駆除したる赤のまんまのゴミの山
悪友が居りし跡地の赤まんま
赤まんま過去に対してやさしくて
退院の母の迎えや赤のまま
赤のまま抜いても抜いても生えて来る
赤まんま雲の迅さや余呉湖畔
赤まんま散り敷く畦に夢すこし
たつぷりと桶にあかりや赤のまま
赤まんま君と逃げたい世の不条理
老ひて手をつなぐ散歩や赤のまま
赤のまま明るき雨を降らす雲
犬蓼の花マラソンの最後尾
鎌止めぬ赤のまんまと露草と
バスを待つ老婆の欠伸赤のまま
知らぬ人ばかりの故郷赤のまま
薪運ぶ若き禅僧赤のまま
廟所へと続く石段赤のまま
赤のまんま扱きアリバイ残し置き
雑貨店猫との散歩赤まんま
汝が影の映り込みたり赤まんま
その下に何が眠るや赤のまま
転ぶだけ転びたる子に赤のまま
刈られても踏まれてもなほ赤まんま
私家版の薄き一冊赤のまま
赤のままを何時も食べてたおままごと
母の癖上手に真似て赤まんま
赤のままみづの重さに近づきぬ
赤まんま訛り言葉を友として
赤のまま秘密基地などなき街に
赤のまんま頬を赤らめる母卒寿
防人も哭きけむ壱岐の赤まんま
新道へ法面長し赤のまま
用水路の音だけ聞こえ赤のまま
自画像の隅にと摘むや赤まんま
読み書きは習はず終い赤まんま
赤のまま雀は涙こぼさざる
赤まんま童女となりし母の摘む
召し上がれ赤のまんまのご馳走を
行く原や阿弥陀は見えず蓼紅し
きりもなく子の摘んでくる赤のまま
マニキュアのこはごは触るる赤のまま
赤のまま海を未だ見ぬ九十歳
赤のまま話はけふもすれ違ひ
日に八便追試受けし日赤まんま
犬蓼や護岸工事の破砕音
ほめられもせぬ身ひとつや赤まんま
生贄のやうに動かぬ赤まんま
ふるさとは井戸跡のみや赤まんま
皺深き介護の手なり赤まんま
赤のまま普通のわたしそして日々
赤まんま群れても寥し紅濃くも
赤まんま雨のはじめは音のして
赤のまんま近道走る参観日
赤まんまみんなどうしているだろう
古民家の手水の脇に赤まんま
露草とともに荒地の赤まんま
五円玉転がり着いて赤のまま
赤のまんま罠は手加減なく仕掛く
原つぱに座れなき椅子赤のまま
墓参り終えし親子や赤まんま
赤飯に見立てゆずらず赤まんま
赤のまんま芥を溜めし用水路
ものいはぬ犬にものいひ赤のまま
走り出す遅刻の朝や赤のまま
秘密基地少年楽しむ赤のまんま
赤のまんま身体丈夫は母ゆずり
肥後守研ぐ子の肩に赤まんま
砂塵舞う行き交うダンプや赤のまま
ふるさとの誰そ彼淡し赤のまま
赤まんま連れ子のある同級生と
花嫁の門出ひっそり赤のまま
だるまさんのころんだうしろ赤のまま
瓦礫まだ積残されし赤のまま
赤のまんま掻き分け秘密基地は森
子を持たず母の気持ちで赤のまま
身に均す雨後の光や赤まんま
歌うなと重治うたう赤まんま
道の辺の赤のまんまをお持帰り
赤まんま夕の闇に沈みゆく
草取も赤のまんまに手を付けず
赤まんま分けて月山指呼の間
幼子の赤のまんまの予祝かな
犬蓼の花竹垣を毀つ雨
指切りは赤のまんまの帰り道
赤飯はおふくろの味赤のまま
赤のまんまままごと遊び少女たち
おままごと赤のまんまを戴きぬ
赤まんま摘んで急ぐや下校の子
電柱を囲んで楽し赤のまま
赤まんまいつしか雲にのれる夢
赤のまんまついつい非常ボタン押す
歩き出す時下は見ず赤まんま
日差し受け道の間に間に赤のまま
忘れていい時だつてある赤のまんま
陸上部赤のまんまを折返す
赤まんまこの世に果てがあるならば
左折ぐーっと赤まんま近づいて
風そよぐ今も昔も赤まんま
明日君に返す詩集や赤まんま
飛ばされたブルーシートや赤のまま
赤のまま赤点だつて点は点
廃城の宴の酒器や赤まんま
赤のまま黒猫拘束具を付ける
赤のまま不治の病を受け入れて
供へたる赤のまんまや地蔵尊
夕暮の少女のスキップ赤のまま
赤のまま尖りしことの自由かな
赤のまま古びしままのニュータウン
赤のまま揺れる餞無き別れ
をちこちへ首垂れてをり赤のまま
赤のまんま娘の初潮祝ふごと
お母さん役に憧れ赤のまま
青空に赤のまんまの頭垂れ
ありのまま悲しみ癒す赤のまま
教科書の赤のまんまや都会の子
関東の山は遠くに赤まんま
小間閉ざし赤のまんまを挿す尼僧
赤のまま手折り少女は出船追ふ
雲笑ふ減らずの口の赤まんま
泥土には赤のまんまが繁茂して
大きめの犬立ち止まり赤のまま
休田に紅さす赤のかなまんま
赤のまま隣の墓石は二等兵
被災者へ花言葉添へ赤まんま
父の家母の家あり赤のまま
昨日と同じ日課や赤のまま
轍より水干上りて赤のまま
日参し赤のまんまを抜いて行く
赤のまんま愚息ままごと卒業す
赤まんま幾度も一揆起ちし土地
船着き場月に照らされ赤まんま
赤ままを手に母還るつつがなく
垂れ落ちた電線受けて赤のまま
獣道赤のまんまを摘む子ゐて
立たされて赤のまんまを扱いてた

【不明】
買ってよと呼びかけられて異邦人