きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「毛布」__金曜俳句への投句一覧
(12月20日号掲載=11月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

本格的な寒さが襲来しています。寝る時に毛布が手放せない人も多いのではないでしょうか。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2019年12月20日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【毛布】
少しづつ馴染むホテルの毛布かな
地震の夜の簡易毛布をわかちあふ
おそろしき柄の毛布に寝まりけり
怖い夢みたと起きくる子に毛布
毛布薄きカプセルホテル立地良し
ほの温き猫の寝跡や古毛布
晴天や毛布おねしょの記憶あり
美しき涙転がる毛布かな
ほころびて曖昧模糊の毛布かな
日曜の朝毛布の中の至福
一枚の毛布路傍の父と子と
独り夜を更かす毛布やもう五年
難民に毛布を贈る賢母かな
毛布の端握る癖の子小夜更けて
毛布より洩れし嗚咽や午前二時
夜深し父看る母の背の毛布
あたたかき友人のごとし毛布かな
引き揚げて親子くるまる毛布かな
一枚の毛布に野心包みたる
決断は毛布の中にありにけり
紙の小屋の戸口を塞ぐ毛布かな
毛布鼻まで上げて髭面のやう
添い寝する猫の気に入り綿毛布
新しき毛布も馴染む肢体かな
母の名が薄く残りて古毛布
柔らかな毛布が包む子の寝顔
洗はれて水より重く大毛布
繭となれ毛布よ我は蝶とならん
一枚の毛布分け合ひよく眠る
陽を吸いて毛布軽やか午後の空
羊肉を食べて毛布の匂うかな
ばらばらや祖父母の家の柄毛布
マチュピチュは晴れか曇りか毛布干す
寺巡る力車の赤き膝毛布
猫去りてくぼみ残れり敷き毛布
而して妻に毛布を明け渡す
目覚めぬ朝一体となる毛布かな
干されたる毛布の果ての白き山
心疲れ毛布が中に逃げ込まむ
嬰児の半生を知る毛布かな
老犬の毛布に埋る朝ぼらけ
お化けたちに負けない毛布さへあれば
洗濯を繰り返したる古毛布
毛布膝に日本橋より川下り
お互いのいびきを知らぬ毛布かな
兄弟で取り合う毛布の端と端
羅紗毛布裁断せしは父の技
毛布だけ担ぎて山の男の香
青白き毛布の目覚めくりかへす
花柄の毛布に母の気高き死
息子来て予備の毛布のデビューかな
引越や毛布に包む子の箪笥
故郷の話毛布に包まりて
カシミヤを皮膚としまどろむ朝毛布
ひとり旅鉱泉宿の毛布かな
フローラの香りのしたる毛布かな
毛布干し我が身も暫し光り浴ぶ
胎内に解放されぬ毛布の中
一心に仔猫踏む踏む毛布かな
柔らかく君の毛布の匂ひ立ち
ぬかるみをはだしの子ら来毛布届きて
友の問ふ山谷ブルース古毛布
一枚の毛布あなたは独り占め
性別にこだわり捨てし毛布かな
とつておきの毛布出番の無いままに
泣き虫と弱虫包む毛布かな
六畳のわが海溝へ毛布落つ
毛布かけ鼻をすすりてティッシュ取る
毛布だけでは眠れない夫婦かな
民宿の毛布程よき温さかな
生きてゐし毛布に顔や体育館
縮れればなお離しがたい毛布かな
しんしんと藍の夜気降る毛布かな
お揃いの毛布整え待つ2020
国籍の察せられたる毛布かな
毛布持て新機種を買ふ最後尾
毛布超しの仔猫軽きや夜に目覚む
古毛布純毛とあるタグ付けて
山寺を軋ませ毛布運ばれ来
火車西へ二泊三日の毛布かな
独り寝の選択肢などない毛布
毛布より始まる朝の儀式かな
毛布干す日向毛布の色に照る
うわ言に覚めて引つ張る毛布かな
シベリアの遺骨毛布も掛けられず
譲り受く駱駝色した敷き毛布
恐ろしき夢を毛布に包みけり
初孫や真白き毛布包まりて
頭から毛布トライにエラーあり
深々と毛布に埋もれけふ終る
熱の子をくるむ毛布でありにけり
病ふ身を静かに包み毛布の暖
病室の方舟めくを毛布かな
兄弟の毛布引っ張り合ふ寝相
毛布被き砂鉄のやうに眠るなり
ムンクの「叫び」めく毛布湿りをり
まっさらな毛布骸の虚ろな目
風音の毛布の中にまでとどく
夜行バス薄き毛布の頼もしく
古毛布の中の額縁えんじ色
灯台が見えず毛布にまた潜る
あくびせる書店の媼膝毛布
大好きな毛布と別れ兄になる
毛布積む自転車を漕ぐホームレス
星明り優しく毛布照らしをる
父母諍う眠れなかった夜の毛布
失恋をくるむ毛布の重さかな
あと五分だけでも幸せの毛布
苦しげに毛布のたうつ洗濯機
毛布分け合いし弟古希過ぎぬ
目覚めればきみを失う毛布かな
妻といい勝負の電気毛布かな
くるみたるこの身主役は毛布かな
暖かき毛布の中の夢おぼろ
花園のやうな毛布の売られをり
鼾かく妻と一つの毛布かな
赤毛布幼の日々の捨てられず
膝毛布猫と眠るや媼をり
母に叱られ叩かれ毛布かぶる
ハンフリーボガード毛布すら似合ふ
兵営の寒さを逃れ軍毛布
毛布敷き妻の帰りを待ちゐたり
毛布干す帰省子はいまどのあたり
妻がいないただそれだけで毛布ける
天守閣学芸員の毛布かな
毛布干す転職前の最終日
病む母に大き過ぎたる毛布かな
空晴れて命の洗濯毛布干す
毛布小さく波立つ猫の鼓動かな
寝室に居間に書斎にある毛布
部屋の隅咳をこらえて毛布出し

【不明】
作つてよ言へずに葛湯は幻に
玉子酒飲めば飲む程懐かしく
葛湯飲み治療せし後熟睡す
弟の玉子酒には高貴あり
母作る葛湯を二分覚まし飲む