きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「桜桃忌」__金曜俳句への投句一覧
(5月29日号掲載=4月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

太宰治(1909~48年)の小説は、なぜこんなにも、自分に向かって書かれているように感じられるのでしょうか。6月19日の桜桃忌には毎年、東京・三鷹の禅林寺を多くの人々が訪れます。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年5月29日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【桜桃忌】
桜桃忌川の流れをじつと見て
桜桃忌猫の背中の梅雨拭ふ
疫病に鎮もる街や桜桃忌
桜桃忌明治の人は熱かりし
才能におぼれる幸せ桜桃忌
消防の刺し子濡るるや桜桃忌
桜桃忌ボオドレエルの一、二行
街灯の寂しき道を桜桃忌
玉川の水底の透く桃桜忌
我もまた酒に飲まれし桜桃忌
北の字を入れて敗北桜桃忌
狂院の窓に痩身桜桃忌
桜桃忌亡父(ちち)に良く似し長女なり
水の底気配を感じ桜桃忌
長々とシャワー浴びてや桜桃忌
公園の隣の図書館桜桃忌
真夜中に誰の寝息か桜桃忌
会談は何人までか桜桃忌
未亡人の喪服麗し桜桃忌
桜桃忌ひとかどわかす雨の闇
桃桜忌望遠鏡へワンコイン
檀一雄の柔和な笑みや桜桃忌
出鱈目な住所教へて桜桃忌
色恋と無縁といふ愚桜桃忌
桜桃忌電話に雑音の混じる
好きだから嫌いにもなる黄桃忌
オスプレイ低空で飛ぶ桜桃忌
ウイルスは口から口へ桜桃忌
人類の滅ぶ日もあり桜桃忌
開いているパチンコ探す桜桃忌
街の灯の透明傘に桜桃忌
桜桃忌津軽訛の口重く
温い雨想いは巡り桜桃忌
桜桃忌花を手向ける人今も
日記にも嘘を綴りて桜桃忌
気の乗らぬまま読み始む桜桃忌
太宰忌や妻の言い分ありにけり
桜桃忌さらさら闇の揺れてをり
桜桃忌川のせせらぎ一人聴く
園子逝き震える墓石桜桃忌
桜桃忌ページの角の丸まれり
桜桃忌廃屋の奥の黒き傘
絶望は若い頃しろ桜桃忌
桜桃忌魂魄悼む水の音
房総の波頭暮れゆく桜桃忌
桃桜忌望遠鏡より富士の青
青春を永遠として桜桃忌
桜桃忌己の価値を信ずべし
独逸語の単語唱えし桜桃忌
桜桃忌恋のかけらを掻き集む
二年後に戻った手紙桜桃忌
カストリを知らぬ世代か桜桃忌
桜桃忌未練はいまだねれずなり
桜桃忌スマホ片手に街歩き
立退き料決まる前日桜桃忌
仕損じは笑ふほかなし桜桃忌
背伸びせしダブルのスーツ桜桃忌
接触も宴もならぬ桜桃忌
キャラメルコーン豆の余りて桜桃忌
痒くなる親指は右手桜桃忌
いつまでも甘つたれたり桜桃忌
太宰忌の降り込められし無聊かな
マスクのゴム眼鏡の蔓や桜桃忌
足跡を消せる足跡桜桃忌
傘濡れて点から線へ桜桃忌
氾濫の川を見に行く桜桃忌
桜桃忌熱さまシートが効かない
ブルジョワを匂はすカフス桜桃忌
多数派にゐて楽しいか桜桃忌
デモ隊の怒号遙かに桜桃忌
柵を押し流す水桜桃忌
桜桃忌許せぬ思ひ野良の犬
神保町急坂になり桜桃忌
モールスの音の揺れをり桜桃忌
肝心な事をは示唆する桜桃忌
雨に濡れ暖簾くぐるや桜桃忌
紛ひものの指輪を捨てて桜桃忌
桜桃忌白雨夕陽を夜に投ぐ
桜桃忌小田急線を見下ろして
母と毒読み間違える桜桃忌
密やかに肺の暮れゆく桜桃忌
桜桃忌川落としたる図書カード
革製のブックカバーや桜桃忌
喝采を目に感じをり桜桃忌
失格の吾が人生や桜桃忌
五種類の薬わけたる桜桃忌
病みし子の一人ゐたはづ桜桃忌
中年の入り口におり桜桃忌
曇天や傾く鉄塔桜桃忌
くっきりと押せた指紋や桜桃忌
桜桃忌こころ湿るる雨静か
許されぬことと知りつつ桜桃忌
桜桃忌とても称賛できません
見詰めしは賎民の手か桜桃忌
恋人の歩幅ほどよし桜桃忌
箒目に落暉流るや桜桃忌
透明な棺あらまし桜桃忌
桜桃忌風に流るる一切経
石けりの石と目の合ふ桜桃忌
雨しとど木枝頬打つ桜桃忌
桜桃忌黒猫のつたり裏返る
立ち飲みに津軽訛りや桜桃忌
たまさかの晴れなつかしや桜桃忌
彫り深く濡れるブロンズ桜桃忌
恥といふ言葉うるはし桜桃忌
桜桃忌波紋の絶えぬ湖ありて
蒸す夜に酒瓶持ちて桜桃忌
方位計こまかく震へ桜桃忌
桜桃忌鶏舎に小さき片手鍬
古書店の裸電球桜桃忌
太宰忌の木椅子に足を組むまねを
桜桃忌サイドカーから降りた人
樺美智子斃れし後の桜桃忌
妊娠を知つた川面の桜桃忌
桜桃忌メロスはいまだ届かざり
故郷の石一つのみ桜桃忌
方程式ほうり出されて桜桃忌
初孫の初の笑顔や桜桃忌名
なんとなく子の声聞きたき桜桃忌
後悔は酒の量程桜桃忌
桜桃忌さつきはさつきだけのこと
一段を間違えて居る桜桃忌
桜桃忌時経て全ておぼろなる
コップ酒路地の火点し桜桃忌
青空の眩しすぎたる桜桃忌
太宰忌のどこまで続く一本道
桜桃忌善知鳥は雲の海を飛ぶ
足元だけ見て登る丘桜桃忌
河底で自由なりしか桜桃忌
気まぐれや橋を渡りて桜桃忌
桜桃忌街もいつかは死ぬだらう
文庫本眺む背表紙桜桃忌
太宰の書毛嫌ひせしや桜桃忌
桜桃忌列車の椅子に目つむりて
桜桃忌知らずに暮れる雨の夜
一対の箸置の艶桜桃忌
破り捨てて欲しき手紙や桜桃忌
ケータイにビニール傘の桜桃忌
一冊にニ葉の栞桜桃忌
桜桃忌ステイホームという作品
ゆっくりと闇ふりほどく桜桃忌
桜桃忌雨にも虹にも脚があり
桜桃忌誰がおまへと情死など
桜桃忌銀座に残るBARルパン
コロナ禍に新人出るか桜桃忌
灯り落とし読む形して桜桃忌
桜桃忌いつもの席に知らぬ貌
桜桃忌母の改製原戸籍
レシートの束の重さや桜桃忌
天国へ降るる景色や桜桃忌
武蔵野の雲はむらさき桜桃忌
水の輪の同心円に桜桃忌
降る降らぬはつきりとせぬ桜桃忌
桜桃忌水満々と橋の下
雨漏りを受けるバケツや桜桃忌
一陣の風くびすぢに桜桃忌
梅漬けて晩年長き桜桃忌
堆い孤独の壁や桜桃忌
アルトサックス桜桃忌の扉閉め切って
うづら糞篩ひかけてや桜桃忌
桜桃忌便所に落ちる日記かな
記帳するペンの字にじむ桜桃忌
桜桃忌靴下脱いで楽になる
乳房に顔埋めさせたし桜桃忌
桜桃忌書庫をはみ出す画集かな
ファミレスでランチしましょと桜桃忌
黄桃忌あたしも一緒だつたのよ
桜桃忌玉川上水小糠雨
本読んで酒を飲む日々桜桃忌
頬紅を差せる死化粧桜桃忌
勝手なる美学語るや桜桃忌
だれもみな一度は夢中桜桃忌
桜桃忌風止まざれば安らげず
桜桃忌分娩室の血の匂い
長雨へシャワー全開桜桃忌
街角に古書の匂ひや桜桃忌
桜桃忌便所の小窓夕陽かな
桜桃忌思い起こせし初デート
ジッポーの火口湿れり桜桃忌
読書する和服姿で桜桃忌
桜桃忌天豆の味ほっこりと
人生の混濁未だ桜桃忌

【不明】
大地には猫の子二匹欠伸する
初めから今までの事春の虹
草の上春の虹とを比較する
猫の子の親を離れて嘆息す
春の虹ボール遊びが流行り出す
改善を促せないのが猫の子だ