兼題「穴子」__金曜俳句への投句一覧
(6月26日号掲載=5月31日締切)
2020年6月5日7:41PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
1970年代の私の田舎では、夏の夕方、戸外で穴子を焼く光景がよく見られました。すごく煙が出るからですね。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年6月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【穴子】
穴子飯一つ増えたる孫の分
近海の色と香をのせ穴子鮨
産卵の穴子海を振るはせて
泳ぐのは穴子と鰻我は地に
相寄りて溜まる話をあなご飯
握り寿司まずは二貫の蒸し穴で
煮穴子にたまり醤油のバランスかな
脊髄を絶ちし穴子の尾から置く
穴子鮨提げてぶらぶら風呂屋跡
焼く者の腕半分の??哉
いまが旬穴子穴子のロール巻き
次の世は穴子になるなと釘を打つ
江戸前にせめて穴子とハゼ生きろ
水槽の穴子憐れや客の混む
諍ひを一寸置きてや穴子丼
江戸前の栄養過多の穴子かな
現場という言葉を聞きつ穴子飯
にぎりよし天ぷらもよし穴子喰ふ
穴子飯四角四面に食べまくる
胸襟をひらいて食らふあなご飯
土用の日穴子受難やとばっちり
たれの身もほろりと崩れ穴子鮨
穴子か鰻かドジョウどれも好き
急ぎ旅車窓に置きし穴子飯
何時までも穴子を鰻と偽れぬ
星空や穴子の語る昼の夢
穴子釣るる錐は大家に借るとして
汚れなき眼差し出す穴子かな
ホームラン仰ぐ顔顔穴子裂く
無防備に突かれた図星穴子飯
煮穴子の出汁ぶっかけて飯二合
はかりめ丼内房線は単線に
身をよぢる穴子の夜のさんざめき
徹夜するつもりの今日や穴子飯
佳日なり本厄仕舞い穴子丼
穴子裂く包丁さばき空碧し
日暮には七輪を出す穴子かな
穴子言う俺はこれでも天然魚
ぬめぬめと逸らかしをる穴子かな
目を瞑り対馬の浮かぶ穴子刺
病み上がり肉ふっくらと焼穴子
穴子食べ祖父の写真に礼を言う
あの店のたれと山椒焼穴子
胸元に黄金のクルス穴子寿司
白日を来て一本の穴子かな
遠浅に歩きし鳥居穴子めし
天ぷらとかば焼き寿司と穴子飯
大穴子自慢の寿司屋店じまい
スタミナとウナギせりあう穴子かな
深川の裏の路地にて焼穴子
宮島や馴染みの店で穴子丼
うなぎより穴子と子ども親泣かす
やさしくてちょっと棘ある穴子巻き
船宿のまず白焼きの穴子かな
コロナウイルスに戸惑ふ穴子です
磯の香にとろける旨味蒸し穴子
大皿の牛蒡に絡む穴子かな
山谷を越えて祝の穴子鮨
戦略のなけれ穴子の浮かび来る
釘打ちの穴子や背筋まっすぐに
どの家も穴子を炙る日暮かな
外国人観光客と穴子食う
板前を天職とせし穴子飯
すしネタや一本握り穴子かな
店長のおすすめアナゴ天婦羅で
こんな夜に一人穴子を食べている
大将の穴子談義の旨さかな
寿司ネタの穴子はすべからく太し
ギギと鳴き無月に浮かぶ穴子かな
穴子食ふ海の深さと大きさと
夏の朝シンクに穴子蛇の様
夕凪の安芸や膳部の穴子飯
穴子君食べる前には人間視
穴子寿司外出自粛解消す
穴子丼鰻丼風味の違いあり
だし巻と穴子鮨なる昼の酒
身を護る鱗も持たぬ穴子かな
穴子には穴子の矜持外出す
朝ぼらけ穴子に巻かれ布団剥ぐ
生きアナゴ手の中でキュウ辞世の句
食通で鳴らす親父の穴子飯
穴子丼アニメを替へられドラマ見る
穴子はねウナギ目アナゴ科そうなんだ
メビウスの環にも似てゐる穴子かな
穴子焼き風味香気や涎の理
漁火を遠くに見つつ穴子釣る
乗り鉄や山陽本線穴子旅
振り返ることなく穴子裂き続け
白焼きの穴子大小ジャンケンポン
生きている穴子未だに見ておらず
砂潜り監視カメラの穴子かな
伊根町の舟屋ゆかしき穴子かな
グロテスク蛇のありさま穴子かな
焦れども穴子食べれる時刻過ぎ
魚の棚角を曲がれば穴子屋さん
穴子釣り脇目も振らず寡黙なり
穴子たち江戸前に棲めかっこよく
玉ゐなる人形町のあなご飯
飛行機のやけに低かり穴子釣
穴子飯たれさえあれば食べられる
そそくさと妻の手になる穴子寿司
夜行性なるも寿司屋の穴子かな
釣り上げて穴子の丈の転がれり
一推しの穴子どんぶり注文す
死顔のやはらかさうな穴子かな
名物と穴子丼町おこし
煙突の火を噴く海へ穴子漁
煮穴子とろりとろける喉越しかな
名シェフと釣り名人の穴子舟
ウイルスより断然地震なり穴子
濃いたれの穴子の寿司は中ほどで
穴子穴子穴子眠る穴子数えつ
悪食の相の目に出る穴子かな
江戸前の穴子なれども押し鮨に
ダイエット穴子ごまかす土用かな
悪食と論ひては穴子喰ふ
江戸前の穴子はみ出す有田焼
穴子鱧鰻長くて皆旨し
鰻とね思って食べる穴子かな
握られた寿司の穴子の長いこと
潮風の真ん中に居る穴子かな
ワインある女子会なるや穴子鮨
穴子をば小さいうなぎという嫁と
穴からなぜか出たがらぬ穴子かな
自粛解け風入れ初の穴子めし
穴子めし喜寿のをとこの前歯かな
穴子観た日の寿司屋だけ遠くなる
穴子さく腕の細き老主人
藁婚式珊瑚の帯留め穴子鮨
家籠り不要不急の穴子飯
穴子鮨好物の母見舞ひたき
放たれて悟る生簀の穴子かな
月の下穴子の腹の白さかな
岩陰の寝床を狙うアナゴ釣り
煮穴子の軽き口上弁当売り
穴子なら明石のあなごと決めている
決勝の朝にかっ込む穴子飯
穴子さばく海の宝をまとはせて
水槽のアナゴを見やり生原酒
潮の向きよろし灯の入る穴子舟
憤り穴子は夢の森へゆく
穴子飯娘十八鬼と化す
首を出す太き穴子や糶眺む
水槽の穴子憐れや客の混む
連休の旅諦めて穴子鮨
播州の旅に待ちたる穴子飯
碧眼の鋏に穴子さばきけり
穴子鮨最後の食事と言ひながら
豆絞り手拭締めて穴子割く
割いたれば針飲んでいる銀穴子
白焼きの穴子の夜の小雨かな
よく笑ふ義母と乃池の穴子寿司
酎下げし父来ればまた穴子寿司
穴子釣り横浜の灯の届く沖
書棚からびつしり穴子覗きけり
好きな子はあんまりいない穴子かな
夜遊びの息子の土産穴子かな
あっさりに子供大好き穴子かな
波高しテトラポットの穴子釣り
穴子焼く店閉門の抗議かな
デパートの地下に潜つて穴子鮨
穴子飯抱へ日差しをくぐりけり
穴子釣る父のベストの小豆色
初穴子大人になるを拒絶する
真っ先に穴子摘まみて浪速寿司
寿司下駄に煮ても焼いても穴子かな
穴子買ふ踏切赤目赤目かな
ぐい飲みの酒は菊水穴子焼き
壺の中さばかれるまで穴子なり
焼き穴子みやげに急ぐ家路かな
穴子焼齧り親子の縁を切る
高砂の土産白焼き穴子なり
穴子釣みんなふと見る海の果て
安芸の海暮れて膳部の穴子飯