兼題「南瓜」__金曜俳句への投句一覧
(8月28日号掲載=7月31日締切)
2020年8月5日6:48PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
南瓜には、日本南瓜、西洋南瓜、観賞用南瓜の3種類があります。生産量が多いのは北海道ですね。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年8月28日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【南瓜】
戦争や南瓜トラウマ語り草
南瓜や青筋浮かぶ祖母の腕
煮南瓜は少し爛れて我が口へ
大南瓜切るに借りたる子のバット
茶請けにと粉吹き南瓜を山盛りに
末成りの南瓜を残す鉄条網
生け垣の南瓜の蔓のほしいまま
絵手紙の母や品ある南瓜要る
南瓜煮る砂糖醤油の里の味
曇天に黄色の轍大南瓜
彷徨える子羊野辺の南瓜かな
包丁に穴開いてをり大南瓜
遍路旅布施の南瓜仏か鬼か
みそ汁に南瓜も入れて田舎風
土手にまで南瓜大きく育ちけり
ごろごろと廊下の隅の南瓜かな
アパートの裏に南瓜育てをり
疑いの余地なきお化け南瓜かな
煮南瓜や包丁の跡艶やかに
南瓜生る山の端にあり製麺所
南瓜を十個貰ひて考へる
南瓜煮るだうせ週末誰も来ぬ
夕暮れに太き南瓜を真っ二つ
南瓜切る煮るに男手呼ばれたる
濡れた日はホクホクつまむ南瓜良き
罅割れし南瓜に誰かしらの顔
ほくほくとカロチン豊か栗南瓜
ふる里に腰を据ゑたる南瓜かな
煮物よりパイに成りたき南瓜かな
定年ノ日大南瓜得テ帰宅セリ
瓢箪の鹿ヶ谷南瓜片手で持ち
生前の碁盤の上に南瓜かな
たうなすの延びて子午線よぎりたる
アンデスの山と向き合ふ大南瓜
ゆうぐれは何も紺色南瓜切る
渡りきれぬ野原南瓜の蔓すなほ
野菜くず埋めて芽の出て南瓜かな
南瓜切る固さ手強し歳取らば
南瓜煮る哀しみ少し癒すべし
訳有りのカボチャ訳有り過ぎるキミ
南瓜煮て焼いてへの字の夫の口
大南瓜裏漉しされてなお黄金
湯気甘し南瓜のスープ北ホテル
刃を入るる場所決められぬ南瓜かな
母の煮る南瓜の固き皮を割る
道祖神持て余したる大南瓜
浄土へと蔓の這い行く南瓜かな
南瓜食むほくほくとした母の顔
火薬におわせ国道沿いの南瓜
草むらに南瓜三つ四つ無人駅
大南瓜迷える衆生是に在り
大南瓜真二つに割れ資本論
参加賞南瓜抱へて家路かな
陰口を南瓜に聞かれまいとする
南瓜切る力なくてと老いた母
遺骨なき祖父へ今年の南瓜煮る
一段は南瓜の並ぶ車庫の棚
まろばせて九日ほどの南瓜かな
焦らされる無口なきみよ花南瓜
何するも独り言なり南瓜煮る
南瓜煮る器の用意などせずに
南瓜切る南瓜太郎は出てはこず
蔓を離れ長き船出の南瓜かな
ついと止まる蜻蛉目玉南瓜や
諳じる妣の戒名南瓜煮る
南瓜や手の節太き人ばかり
大南瓜庖丁駄目にせし覚悟
南瓜煮る亡き祖母の味思ひつつ
南瓜畑波乗りしたき高さかな
南瓜やいつでも爺は寡黙なる
まな板をがつんと鳴らし南瓜割り
雨粒の叩く南瓜となりにけり
南瓜を汁になるまで潰しけり
小さめの南瓜選び筆を執り
上京の決意カボチャに刃を入れる
包丁の南瓜割る音土間に響く
頑なに包丁入れぬ南瓜かな
収穫を終へて南瓜の深き傷
花南瓜勢ひ増して垣を越ゆ
南瓜熟れ地球のへそをはみだせり
南瓜割り鉈包丁を金槌で
品評会南瓜の重さ当てにけり
南瓜真二つ包丁の慈悲めけり
深翠なる南瓜へと刃を入るる
南瓜や岬の崖に落ちもせず
南瓜生るホースの如き茎に生る
終戦の日から南瓜イヤと母が云う
エプロンで拭ふ南瓜の深緑
南瓜重し父と呑む日は来んかつた
シンデレラ美容乗り物かぼちやかな
弁当の隙間埋めてや甘南瓜
南瓜切る腕に青筋暮れの鐘
蔓枯れて南瓜畑の其処彼処
厨からお願いの声南瓜割る
横町や南瓜かつぐ若旦那
南瓜の雨となりたる富良野かな
仁王像の顔となりゐて南瓜切る
刃に触れて南瓜いちづに応へけり
南瓜はブルーズじゃなくロックだろ
厨房の牢名主たり大南瓜
休耕の地に現はるる南瓜かな
独り居に南瓜一個や三日ほど
ほこほこと腹の膨るる南瓜かな
南瓜ごろり存在感を主張して
南瓜や並て漢の優しかり
南瓜甘く煮れば気持も穏やかに
刳り貫かれプリンとなりぬ南瓜かな
面の皮厚し南瓜の皮のごと
天ぷらの南瓜崩れぬ姿よし
臍の緒のごとく南瓜を切りし茎
フラダンス浚ふ南瓜の煮えるまで
親爺似の南瓜塀を越えて来る
さよならの電話冷たき南瓜煮ゆ
泥棒の弟子の手習ひ南瓜かな
炊き合はす南瓜と小豆母の昼
居心地のことはいはずに南瓜かな
大南瓜飢えたる日々を偲ぶ軒
鉢植えの南瓜抱えて重量感
供へ置く南瓜と米と酒一升
南瓜煮る馬車を夢見た若き頃
大南瓜だれかの帰る家になる
O型に違いないあいつも南瓜も
社交辞令南瓜のヘタのやうなもの
南瓜切る黄色のはらわた瑞々し
包丁の往生したる大南瓜
夕食の焼肉南瓜御飯かな
南瓜煮るさう云へば実篤の画は
三方に王冠のごとく南瓜居ます
堤燈にするは邪道と南瓜煮る
家具としてテレビの上に南瓜置く
大南瓜包丁に異議申しけり
南瓜に地軸の傾きの記憶
じっとしておらず南瓜のでんと生え
【西瓜】
種飲んで豪胆笑う西瓜かな
噛むでよし西瓜の冷たさ柔らかさ
西瓜選び自慢話の尽きぬ父
夕陽とは違う赤さの西瓜かな
引き締まる西瓜のかたさ身持ち良さ