兼題「新豆腐」__金曜俳句への投句一覧
(9月25日号掲載=8月31日締切)
2020年9月7日6:38PM|カテゴリー:未分類|admin
新豆腐とは、新しく収穫した大豆で作った豆腐のことです。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年9月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【新豆腐】
新豆腐ほのかに畑の匂うかな
新豆腐今宵早速若布汁
うみかぜに香りを乗せて新豆腐
原作は旧字旧かな新豆腐
新豆腐四等分に指で切る
新豆腐裸身の角に入れる箸
輝きて沈みひょと浮く新豆腐
新豆腐さやかに見ゆる秋の色
新豆腐食ぶ日は風の佳き日かな
笊の目のとれず眠そな新豆腐
うなじ剃る婚礼の朝新豆腐
新豆腐あの夢この夢消え去りぬ
二重螺旋少しいぢつた新豆腐
良き水の白き滑りの新豆腐
後継の居らぬ豆腐屋新豆腐
命日にあなたの好きな新豆腐
貧乏も忘れて食べる新豆腐
仏飯のかはりに酒と新豆腐
老店主最後に作る新豆腐
雨垂れの音染みわたる新豆腐
毎日を飽かずに食す新豆腐
天井の煤けた梁や新豆腐
新豆腐ありますの張り紙ななめ
羊水を浮き沈みする新豆腐
新豆腐祖母の手割りのまろきなり
今一度止めたい時間新豆腐
方形の角を香らせ新豆腐
新婚の食卓飾る新豆腐
山宿の夕餉は早し新豆腐
自転車を漕ぐオヤジ売る新豆腐
新豆腐すわりの悪き竹器かな
新豆腐暖簾の藍のかすれ加減
朝ごはん湧き水に浮く新豆腐
土手といふ寂しき呼名新豆腐
給食を待つ五百人新豆腐
刃をあてて白さ増したり新豆腐
新豆腐白磁の皿の真ん中に
一旦浮いてから沈む新豆腐
切れ長の目じりゆるむ新豆腐
一日の初めに嬉し新豆腐
ベジタリアン宅配便で新豆腐
暮れてゆく小島の雨や新豆腐
少女の手いよいよ白く新豆腐
健康を噛む音のする新豆腐
天啓あり我が脳髄に新豆腐
竹の葉の川面に触れて新豆腐
秘湯からぜひ新豆腐をの便り来る
新豆腐牛に一丁食はせけり
新豆腐店の裏手の滝の音
みづ音のまれなる家路新豆腐
お決まりはお寺帰りの新豆腐
山深き湯気立ち込める新豆腐
元体操部新豆腐注文す
ひとくちはまつさらなまま新豆腐
新豆腐掬う形の溢す影
湯上がりのをんな半丁新豆腐
新豆腐角すつきりと切り分ける
新豆腐尋め行きてなほ洛北へ
飴色に簓つかふや新豆腐
さみどりの肌やはらかに新豆腐
望郷のひとつの形新豆腐
仏壇のビールに添えて新豆腐
湧水の尽きぬ冷たさ新豆腐
豆腐屋の湯気の明るさ新豆腐
ひとしきり笊を濡らしむ新豆腐
新豆腐語る両手の濡れてゐる
新豆腐けふ穏やかに仕舞ひけり
新豆腐入りましたと赤提灯
新豆腐暁待たず試し食ひ
向き合ひて真ん中に置く新豆腐
早朝の小店に香る新豆腐
新豆腐掬ひし指の細さかな
新豆腐豆打つごとき雨の来て
今日は今日明日はあした新豆腐
新豆腐まだまだ遠き師の背中
賜りし水よき里の新豆腐
日本一朝早き町新豆腐
輓曳のポスターあるや新豆腐
取り出さるる新豆腐が聖書ほど
冷え過ぎぬやうに冷して新豆腐
湯浴みせる白き素肌や新豆腐
歯並びの美しき子や新豆腐
一の灯の点いて花街新豆腐
新豆腐豆の香りの胸に染む
澤水に震へることも新豆腐
釜炊きにこだわり三代新豆腐
新豆腐桔梗の紫移したし
新豆腐含まば揺るる恋ごころ
清水を啜る舌もて新豆腐
新豆腐残りたる水甘きこと
新豆腐まづ器ほめ水を褒め
夕さりの谷中猫道新豆腐
新豆腐ラッパに朝日靴の音
オヤジさん孫あやすよう新豆腐
旅人に旅の嗜み新豆腐
あをぞらのをはることなし新豆腐
門前で待ってをりたる新豆腐
滝水の流れに沈み新豆腐
新豆腐大きく箸を広げたる
時候より始まる手紙新豆腐
新豆腐わしつと鰹節乗せり
新豆腐湯気の向かうの笑み三人
ゆつたりと夕空に揺れ新豆腐
井戸水がいのちをつなぐ新豆腐
日本の種を味はふ新豆腐
新豆腐母敗れ去り父値切る
砥部焼の皿も新たに新豆腐
沖縄の便りに島の新豆腐
新豆腐故国(さと)はこれほど遠きけり
新妻と呼ばれし頃や新豆腐
濾し布より滲める生成新豆腐
新豆腐舌に遠日(いつか)のまどいかな
新豆腐香り放つや笊の中
何もなしとて持て成さる新豆腐
湧水を集めて桶の新豆腐
新豆腐大豆の色のそのままに
水の輪の律儀なりけり新豆腐
新豆腐掌に置き賽の目に
調理場の微か騒めく新豆腐
新豆腐そもそも豆腐屋がノスタルジー
日を追うて豆の香匂ふ新豆腐
越前の比丘尼提げ来る新豆腐
ゆうるりと谷上がる雲新豆腐
生まるとは在らしめること新豆腐
言はるればほのかに甘し新豆腐
笊蕎麦で締めるつもりの新豆腐
信州の風と水添え新豆腐
新豆腐あてになみなみコップ酒
コロンボの筋を当て合ひ新豆腐
お菓子食べ新豆腐食べ朝餉とす
おろし姜の生成りに負けじ新豆腐
新豆腐になりて一日居眠りす
新豆腐路地を流して売りにけり
賽の目をくづして甘き新豆腐
新豆腐砂糖かければプリンかな
左手のシミも増えつつ新豆腐
新豆腐日に日に夕餉早まりぬ
さうかもねと思つて食ふ新豆腐
下ろしたての箸も新豆腐も白し
新豆腐山葵油に温燗で
新豆腐四角四面の友の来て
その先は云つてはならぬ新豆腐
豆選って豆腐屋作る新豆腐
新豆腐半丁昼の独り酒
晩酌の合図は自家の新豆腐
新豆腐板場修行もさまになり
雲海の断面のごと新豆腐
新豆腐したたる水の生成り色
サリンジャーを原書で手繰り新豆腐
新豆腐水切布をかたむすび
新豆腐新たな決意誓う朝
岩塩はピンク新豆腐を絞る
晩年の自覚やさらに新豆腐
今生を味わう喜び新豆腐
夕深み桶に鎮まり新豆腐
新豆腐僅かに老いた手で掬い
湧水の地に生まれ住み新豆腐
いい材料いい腕いい水新豆腐
香りごと買うて露天の新豆腐
新豆腐一丁湧水に差し込む手
削り節上等醤油新豆腐
旧き日を窓に映して新豆腐
新豆腐馴染の店の便りあり
覚えなき産湯のにほひ新豆腐
器へと移す新豆腐の裸身