きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「里芋」__金曜俳句への投句一覧
(10月30日号掲載=9月30日締切)

俳句で「芋」といえば里芋を差します。お月見の供え物として欠かせません。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年10月30日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【里芋】
たまさかに母と邂逅里芋煮
小芋洗ふ怨む声ともぼやきとも
芋の葉のそよぎに散るや昨夜(よべ)の雨
芋の節ひとつひとつに陽の記憶
里芋や眉寄せながら六方むき
里芋を箸で押さゆる手際かな
一日の風里芋の毛に馴染む
土落とす裸里芋陽に眩し
親芋のあたりまえですが大きい
芋の葉や小さき父を置いてみる
芋畑あおあおとゆれあおあおと
里芋に似た男には成らんとや
里芋のよく皮むけて明日は晴
里芋や長女はいつも後回し
スーパーで里芋買はれ五割引き
大和人より受く粘土(ねばつち)や芋を掘る
学に殉じたる清福芋煮ゆる
皆集う流されし地の芋煮会
里芋や全て個性の不登校
ハーモニカ風が鳴らして芋の秋
広ぐれど手に里芋の収まらず
里芋の転ばぬやうに面を取り
鍋底の里芋(いも)を取り合う子供かな
芋の葉のボロボロになつてからです
里芋の葉に揺られをり滴かな
土くれの中に里芋らしきもの
荒天や鞭打つ鞭の芋畑
里芋を切りて自分を取りもどす
殊さらに小さき芋の良き形
川辺りの里芋の葉に光る玉
面取の里芋ひかる炊き合わせ
無残なる獣の掘りし芋畑
里芋のカレー香辛料足さむ
里芋やほくほく煮られ転がされ
武骨なる祖父里芋に鍬の跡
芋掘るや水の雫の葉を落とし
里芋の葉を傘にして遊びけり
親から子子から孫への里芋よ
雨あがり里芋の葉に空映し
芋の葉に水玉揺るる寒露かな
里芋の葉柄垂れる河川敷
里芋掘るティラノサウルス踏みし土
友の芋包む地方紙伸ばし読む
豚汁や里芋を剥く手のかゆし
豚汁の芋のほどよき硬さかな
芋掘りの青き葉叢を切り落とす
里芋の匂いを載せる夕の雨
芋の子を洗ふ盥をまづ洗ひ
里芋や太く息吸ふ奥会津
里芋や湯より上げたる俺の腕
まん丸い里芋父は目を見張り
里芋やあへて刺し箸とがめざる
芋の葉は地より出でて空仰ぐ
暮れ六つや板場の隅で芋を剥く
大鍋に里芋の肌湯船なる
里芋を剥くとき潮の満ちてくる
芋なんて言ふ孫たちにどう食はす
里芋の収穫父がして居たり
里芋や泥の湿りを寿げる
里芋を洗ふ手元へ朝日かな
里芋の下拵へに朝の水
里芋の葉に風のあり下の畑
里芋に切り絵のごとき山河かな
天と地の境の失せて芋掘終ふ
芋洗ふ女の腰のまろみかな
里芋と友の頭と見比べて
振り分けて土の小芋も孫芋も
大鍋に里芋のあり誰の味
里芋の分解前の茎の青
ごろごろと里芋洗ふ餉の支度
土偶めく里いも涙めく地球
不揃いの里芋ひたす金たらい
里芋の園児のやうに並びたる
長子より末子そのほか芋の子の
黒土を掘り里芋のごろごろと
芋談議牛か豚かで白熱す
幼児の驚く里芋のフォルム
里芋の夜の葉重ぬる雨滴かな
里芋の味ふくよかに唐揚げで
八頭いまごろどうしているかしら
予期されぬ右往左往や芋の露
芋の露おのが重さの楕円かな
里芋の湯気に家族が集まりて
里芋を水に晒せり御影堂
里芋を洗ふ夜明のスペクトル
芋の葉の大志憚ることもなく
里芋を洗ふ小指の曲がりたる
芋の葉や系図のごとく広ごりて
疎開先里芋洗う泥しずく
つゆだくの中にまぎれし里芋や
里芋のひと皮剥けばはしやぎ出す
里芋剥く心配事の消えぬ夜
母からの芋小包の湿りけり
島晴れて昼は里芋掘る漁師
夕焼は闇に覆はれ芋煮える
里芋の味噌の加減や永平寺
里芋や日の暮時の孤独感
ビニールを破り里芋の葉が育つ
里芋の傘にはならぬ大きな葉
里芋や祖父母も父母も生きており
里芋の肥料にビートルズ聴かせ
猫の足見へ隠れして芋畑
里芋を洗ふ湯の香の坂道に
掘り上げて芋の葉を転がる雫
従兄持て来し里芋は不揃ひの
芋の葉を転がり落つる俄雨
手の腹でこそげて芋の皮の縞
里芋の葉の列並び雨を待つ
里芋や行く末などを想ひつつ
里芋の仁王のごとき髭根切る
里芋や蛇笏の句読む夕餉後に
竹串の通り里芋湯気揺るる
芋煮るや関常の味噌砂糖すこし
土臭き里芋届くふるさとよ
高波の押し寄すごとし芋畑
ねもころに思ふに任せぬ子芋かな
指を待つ酢水のなかの子芋かな
芋水車廻す谷水涸れぬ里
竹笊にでんと二つの八頭
夕雨やランナー過ぐる芋畑
里芋や手の抜き処解らずに
一夜へて里芋さらに甘くなり
芋畑小高き丘に亀の墓
ぬるぬると逃ぐる里芋押さえ込み
里芋のあれが葉っぱよ権之助
芋の葉のほぼ垂直になりにけり
子のために里芋甘く煮る夜中
芋洗ふふんだんに水こぼしつつ
武蔵野の土黒黒と小芋生る
ごろごろと里芋ひきてゐる笑顔
帰省子の箸は芋碗選らずして
縁側に里芋干して茶をすすり
里芋の育つ家なら大丈夫
里芋の茎や食糧難の味
芋の秋上下二巻の文庫本
母と妻去りて芋煮る片手鍋
朝採れの里芋包むその葉もて
里芋の葉の水玉で墨を磨り
里芋や笊やま盛りに洗ひ上ぐ
菩提寺を遠く望むる芋畑
土塊の親より剥がす小芋かな
夕星の滑り落ちたる里芋へ
里芋や仕切られて居る我々は
茅葺きのいろ里芋の皮のいろ
顔色の悪しき小芋を箸で差す
里芋を洗ひて痒し掌
里芋や実直ならば煮転がし
レジ袋硬き里芋詰め放題
むらさきの山の端里芋堀終ふ
里芋やいちいち皮むく手管あり
里芋に合ひたる箸を探しをり
我が庭に誰が植えたか里芋よ
芋の葉の雨滴に朝の風ひかる
ゆくりなく聞いた告白芋の露
眠る山猫やま盛りの里芋と
微かなる祭囃子や芋の秋
広き葉の下を里芋のゴロゴロ
里芋の生命戴く有り難く
里芋やけふ賄ひの午後白し
里芋や無骨で腹は黒くない
夕雲のひとつありけり芋畑
赤味噌の芋田楽を自慢せし
里芋をむけば白さにはっとして
親芋の燃える匂いに日の落ちる
里芋や夜ごと泣きたる土を噛む
躊躇なく返した踵芋の露
めりめりと奥歯抜かれき芋の秋
里芋の面取りかたく川平瀬
里芋を煮る芭蕉なら句を作る
荷ほどけば里芋里の土とあり