兼題「雪催」__金曜俳句への投句一覧
(11月27日号掲載=10月31日締切)
2020年11月9日5:21PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
今にも雪が降ってきそうな、雲が重く垂れ込めている空模様を雪催(ゆきもよい、旧仮名ではゆきもよひ)といいます。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年11月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【雪催】
雪催余分に買へば重たくて
牛小屋の蝶番錆び雪催
刺しかけの妻の刺繍や雪催
雪催鼻より長き象の牙
読み切れぬ人の心や雪催
雪催や編み棒置ひて背伸びなり
雪催い茅葺屋根を吸い込んで
雪催午前三時の天気図は
雪催覚悟の朝は朝来たりけり
雪催動く気配のひとつなく
訳ありの部屋は暗がり雪催
空すこしづつ落ちてきて雪催
萱葺きは厚み三尺雪催
ラジオから新疆の報雪催
雪催今日履く靴と履かぬ靴
海からの風の尖りて雪催
雪催フェイスシールド曇りたる
あてどない旅に果てあり雪催
遠き灯の見てゐて消ゆる雪催
伏し友の御守り受けし雪催
鍋囲み夕餉の賑わい雪催
球蹴ればキーパーの指示雪催
あらためて予定確認雪催
靖國に影二つ三つ雪催
転勤は次は越後か雪ばんば
なまじつか全集読めば雪催
旧遊里名残の路地や雪催ひ
看護師はまたあやまりて雪催
一湾に濃き潮の香や雪催
雪催空を見上げて子ら下校
またひとつ生まれた死語や雪催
生徒たち帰り行く街雪催
スーパーの少し混み合ふ雪催
青木ヶ原樹海いづれば雪催
雪催明日の朝を楽しみに
襟立てて暖簾分け入る雪催
阿と吽の狛犬起ちて雪催
雪催水面の木々の黒々と
遅延せし列車知らすや雪催ひ
徒歩で往く買物重し雪催ひ
瓦斯灯の無傷の明り雪催
裏木戸を閉めて空見る雪催
幽寂の奥社の杜や雪催
雪催キューポラの火いまいずこ
雪催面会さへも許されず
雪催天気予報が連れて来る
送電線撓みつ遙か雪催
検温に子宮ざわつく雪催
ビルの窓拭く人痩せて雪催ひ
雪催ひそかに時はわたりゆく
手をつなぐことにも慣れて雪催
雪催ひ運河の町に玻璃の音
教会を出るひと止みて雪催
雪催ペタル踏み込む峠越え
今は無き町の書き割り雪催
十四個入りのお菓子や雪催
若狭の國かげれば美濃は雪催
湯気の立つ蕎麦ひと啜り雪催
杜氏らの蔵の勢ひも雪催
雪催ラヂオは鬼の話など
襟立てて急ぐ家路や雪催
海面の光が消えて雪催
雪催夕餉の支度急かさるる
豚群れて泥に遊ばむ雪催
印刷の煉瓦にもかげ雪催
メモをせむインクかすれし雪催ひ
地鎮祭の後らしき土地雪催
入院の口紅は赤雪催
終着にバス停まりゐて雪催ひ
雪催自転車進む力増す
ボールトス雪催ふ空を見上げけり
雪催混浴露天風呂ひとり
尊厳の欲求薄し雪催
雪催これ幸いとテレワーク
八百屋出ていづこから来る雪ばんば
雪催ひスモールランプ滲む町
低く飛ぶ鳥の羽音や雪催
雪催心疼かせ風ひとふき
ホームセンタースコップ売場雪催
雪催苦労は気楽に備えたし
酢の味の歯に滲みとほる雪催
静けさは湾の広さの雪催
帯締に置きし珊瑚よ雪催
雪催ぐずる子供の声がする
公園の外にボールが雪催
雪催リツツと買ひぬチョコレート
息詰まりじつと見詰める雪催
入り口に犬はつながれ雪催
ライオンの爪の鈍色雪催
雪もよひ猫宮という停留所
首都高の反響を聴く雪催
雪催いやらしいこと思ふだけ
古傷の痛みだしたる雪催
雪催売約済みの絵を包む
山風に仄かな丸み雪催
これがほんもの越後平野の雪催
山里の明かり飲みこむ雪催い
鈍色の空のちぎれて雪ばんば
一天の反りたるあたり雪催
雪催北風荒む観覧車
湖の小舟動かず雪催ひ
デパ地下に越後のあられ雪催
鳥影が眼鏡にうごく雪催
火吹き竹吹けば切なく雪催
雪催ランボー恋しヴェルレーヌ
雪もよひ若者の背を丸めをり
雪催山路険し遍路旅
湯治場の茹でたまご買ふ雪催
雪催ひ大きふぐりの陶狸
約まりは二人の夕餉雪催ひ
明・彩度おとし札幌雪もよい
判断はぶれるものなり雪催
雪催鳥はたつとき羽立てて
雪催ものみな何か待つごとく
街路図の塗装剥げおり雪催
雪催ひ細く小さき夕日あり
雪催稲荷神社の朱の鳥居
雪催人たそがれの道急ぐ
雪催公民館のヨガマット
雪催ひ悲しむための黒真珠
名を書きしビニール傘や雪催ひ
宵迫り雪催兆し山睨む
休校のキャンパス今朝の雪催ひ
雪催涙がこぼれ落ちぬよう
父の文言葉重たき雪催
雪催海を舐めたる空の果て
雪催い急ぐあてなし赤ちょうちん
雪催立ち入り禁止の札たてる
手のひらへ電話番号雪催
思はずも胴震ひする雪催
海底のごとく町並雪催
坂の町さらに際立つ雪催ひ
雪催ふ朝に牧舎を開けにけり
雪催いっそう熱い競技場
ラジオより洩るる侘歌雪催
鳥たちの零れては飛ぶ雪催
やじろべえの少し揺れをり雪催
茹で過ぎたマカロニ掬う雪催
地域猫しかと見ている雪催
雪もよひずっぱどまがなってきたか(※「ずっぱど」一杯、しっかり。「まがなう」着込む。津軽弁)
この山の動かぬすがた雪もよひ
隣人の声良く通り雪催
自販機の「hot」うりきれ雪催
産土の色無き道よ雪催ひ
待つことに慣れた食卓雪催
廃校の壁のにほひや雪ばんば
妻と違ふもの見てをれば雪催ひ
改札の出口にひとり雪催
講演会終えてバス停雪催
トンネルの出口を覆う雪催
雪催に鳥姿なく鍋支度
遠く旗うなだれそめて雪催
雪催ひ己が遺影の薄笑ひ
雪催ひ隅にヒビ入る窓ガラス
遠い日の学童疎開雪催
夕暮れのおつかい急ぎ幸催
人を恋ひ人を遠ざけ雪催ひ
雪催鉢を六つほど仕舞ひける
発寒てふ名の駅なりし雪催
雪催幼も今も何をまつ
雪催ひ白髪の増へぬ師の遺影
八割が老人の町雪催
雪催い得体定まぬ恋時哉
大仏の黙を破りし雪催
雪催橋の向こうへ懐手
待合に小花一輪雪催ひ
雪催ふたたび恋はできますか
採血の針を見てゐる雪催
宿酔の日曜重し雪催
雪もよい神田古書店街はしご
雪催城南信用金庫に灯
雪催血圧計の緩みゆく
雪催灰色に少し白混ざる