きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「枯芭蕉」__金曜俳句への投句一覧
(12月25日号掲載=11月30日締切)

芭蕉とバナナを混同している人がいるようですね。見た目は似ているかもしれませんが、まったく違います。枯れている芭蕉は哀れですね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2020年12月25日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【枯芭蕉】
風下に破れてをりぬ枯芭蕉
ややこしいこの世を眺め枯芭蕉
枯芭蕉おばけと云いて子の囃し
枯芭蕉夜もガサガサ風の音
立ちをるが不思議なほどの枯芭蕉
川の果てきつと海なり枯芭蕉
枯芭蕉むやみやたらに抵抗す
かく往生せよとばかりに枯芭蕉
枯芭蕉病犬をば脅かしぬ
お使ひの帰り恐ろし枯芭蕉
枯芭蕉耳底に幼声遠き
足摺の風強ければ枯芭蕉
影だけがうつむきかけて枯芭蕉
山に来て枯芭蕉見る吾等かな
後厄に参りし寺の枯芭蕉
この年も咲いて破れて枯芭蕉
芭蕉枯るごとガード下の破れ傘
枯芭蕉一人で老いる者はなし
帰りゆく友の背中と枯芭蕉
枯芭蕉屋台は無人月の客
枯芭蕉表玄関覆ひけり
枯芭蕉又枯芭蕉枯芭蕉
枯れてなほ芭蕉おのれを肯へり
見るからにその後の我や枯芭蕉
枯芭蕉血縁はみな捨つるべし
翼折り気力失せしや枯芭蕉
弁慶の最後は斯くや枯芭蕉
永代の供養するとて枯芭蕉
対岸へ運ぶ鏡や枯芭蕉
木曽殿と並ぶ寺内に枯芭蕉
枯芭蕉ばさりと落ちしあとの寂
枯芭蕉風の交はる駅となる
枯芭蕉御用邸へと風曲がる
遠ざかる明治大正枯芭蕉
山頂の石像おほき枯芭蕉
枯芭蕉風雨に当たりてざわめけり
枯芭蕉破れ傘とて群立ちぬ
あとかたもなく空の澄み枯芭蕉
野晒のままにされたる枯芭蕉
枯芭蕉竹薮のごと繁茂せり
古芭蕉移住して来む所縁の地
枯芭蕉みちのくのうた幹に貯め
枯芭蕉歩いて行けばゴミの山
枯芭蕉ここより先は行き止まり
労働者雑魚寝枯芭蕉林立
枯芭蕉曲がればいわくつきの家
得も言えぬ深き色合い古芭蕉
すやすやと寝る子起こすな枯芭蕉
一村の描き損ねし枯芭蕉
庭の端に夕風残し枯芭蕉
枯芭蕉ゆらゆらと揺れ風は黙
而してゆつくり枯るる芭蕉かな
年齢につれてコンサバ枯芭蕉
枯芭蕉恙無き日のありがたき
枯れ芭蕉つわものがゆめ忘却す
ジャズ聞こゆ風を捉へし枯芭蕉
吾が生きる果てに見えしや枯芭蕉
枯芭蕉生きるも老いるもまた勇気
芭蕉林枯れて互ひを許しあふ
枯芭蕉ひとつは水に消えてをり
近寄れぬ訳顕わなり枯芭蕉
枯芭蕉思いて布団脱ぐ覚悟
枯芭蕉就活の子のやつれやう
ていこうはおやめください枯芭蕉
火の国の湖波打ちて枯芭蕉
ふる雨にまとまつてゐる枯芭蕉
枯れて知る夜の匂ひや枯芭蕉
枯芭蕉そよぐや風の滞る
枯芭蕉草の迷路を出られずに
病室の外に朽ち果て枯芭蕉
よく見れば幽かに青し枯芭蕉
移民より帰り来たるや枯芭蕉
これよりは枯るる能わず枯芭蕉
空海の御姿に似て枯芭蕉
枯芭蕉心臓止まれば皆同じ
枯芭蕉こんなになるまでありがとう
大成は風に動ぜぬ枯芭蕉
風わたる音はザワザワ枯芭蕉
来た道を振り返り行く枯芭蕉
枯芭蕉赤城颪にざんばらに
夜風吹き眠れる夜や枯芭蕉
枯芭蕉くわえ煙草も出来なくて
枯芭蕉老いてジーンズ穴開かず
枯芭蕉原発建屋白々と
枯れてなほ唯我独尊枯芭蕉
玉巻いて敗れて枯れてこそ芭蕉
海を背に海の貌して枯芭蕉
枯芭蕉反体制の匂ひかな
虚ろなる空の高さや枯芭蕉
貧なれど倒れてなるか枯芭蕉
枯芭蕉薄日に影の大いさよ
仮免で告げた好意や枯芭蕉
したたかに風したたかに枯芭蕉
ゴルフ場の庭の一画枯芭蕉
飛行機が我をいざなふ芭蕉枯れ
潮風の立像として枯芭蕉
晩年を大きく生きて枯芭蕉
枯芭蕉夏色とどむ太い茎
弁慶の仁王立ちなる枯芭蕉
空真青枯芭蕉には落書きが
枯芭蕉早稲田の裏の芭蕉庵
枯芭蕉命の匂ひ連綿と
枯芭蕉濡れてゐるなり基地の島
売り家と小さくありし芭蕉枯る
芭蕉枯る無音の中の芭蕉庵
吹く風をがんじがらめに枯芭蕉
雨弾く音の広ごる枯芭蕉
地味に地味重ねし色や枯芭蕉
シンボルの社宅の芭蕉枯れにけり
枯芭蕉終はりし恋の眠る場所
判決はオセロの一手枯芭蕉
枯芭蕉国民歌謡歌ひだす
臆病な野良犬もゐて枯芭蕉
枯芭蕉好き放題に暮らしをり
伐りたたみ運んで捨てて枯芭蕉
伐り捨てて仕舞への声や枯芭蕉
ライオンの檻の雄叫び枯芭蕉
もて余す重さや雨後の枯芭蕉
枯芭蕉きのふの夢の残の風
晴天の湖へと青し枯芭蕉
北御堂南御堂や枯芭蕉
一年の早くも終わり枯芭蕉
陽があたりあいさつ返す枯芭蕉
枯芭蕉家一軒の更地かな
枯芭蕉指して蘊蓄垂れし人
枯芭蕉枯れるてふより破れけり
懐かしのフォークソングや枯芭蕉
枯芭蕉淡海の白き風に立つ
枯芭蕉の影絵泣き出す子の夜半
大芭蕉あやしきまでに枯れにけり
枯芭蕉緑枯れても存在感
百見は風の一聞枯芭蕉
表札の替はりし角家や枯芭蕉
いつしかに風となりけり枯芭蕉
枯芭蕉風の過ぎゆくままの色
持て余すされど人生枯芭蕉
日が白く澱む頃なり枯芭蕉
紡ぐ人絶えて久しき古芭蕉
泣き声はピアニッシシモ枯芭蕉
車いす押す手を休め枯芭蕉
枯芭蕉枯れども此処に生きてをり
風受けて一張羅なり枯芭蕉
最後まで風に吹かれて枯芭蕉
風雪の中全うす枯芭蕉
長過ぎる無沙汰責めらる枯芭蕉
約束はご破算にして枯芭蕉
枯芭蕉隠れ家の藪深きかな
朝市の人手そこそこ枯芭蕉
枯芭蕉開けば骨の折れし傘
いま静か幻戯山房枯芭蕉
枯芭蕉にはかに起きて闇掴む
主人なき田にこんもりと古芭蕉
枯芭蕉雑破雑破とかすれおり
住み替はる家の芭蕉や枯れ残る
枯芭蕉風情愛せし人想ふ
これ以上枯るる余地なき芭蕉かな
枯芭蕉円周率の美しき
肩書に「元」付きしまま枯芭蕉
遠富士の裾野踏み始む枯芭蕉
古芭蕉世代交代ありや無しや
枯芭蕉見事な勇気で頭見せ
去り難き心どこかに枯芭蕉
俳聖の終焉ここに枯芭蕉
枯芭蕉ともに見し師の今は亡く
沈黙にこの頃飽いて枯芭蕉
枯芭蕉羽をもがれしまま立ちぬ
枯芭蕉墓石のごとき並ぶ句碑
枯芭蕉枯れ葉切らずにあるがまま
枯芭蕉翁の遺志のごとくあり
枯芭蕉モネの庭師になるは夢
静かなるこの世に背く枯芭蕉
戦ひの跡にあらずや枯芭蕉