きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「鮪」__金曜俳句への投句一覧
(1月29日号掲載=1月5日締切)

鮪が美味しいのは、冬から初春の産卵期にかけてですね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2021年1月29日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【鮪】
縄文の眼(まなこ)が鮪捌きおり
真つ白な靄立つ豊洲の鮪かな
三陸の空へ鮪の荷揚げかな
糶場より引き摺られゆく鮪かな
初競りの鮪の群れを流し見て
鮪船近く醤油の町ありき
許されど解かざる正座葱鮪鍋
鮪漁テレビの中の波しぶき
鮪食む正岡子規のビデオかな
潮の香を足す津軽弁づけ鮪
どよめきとともに鮪を糶り落す
食はずとも鮪とわかる赤身かな
雪の海鮪潜るや波立ちぬ
故郷や一富士二御茶三鮪
ポケ欲しい姪に引かれて白木屋へ
眼を皿に右へ左へまぐろ追ふ
大鮪死して兜を残しけり
大鮪派手な手やりでせり落とす
勝浦やシャーク号から鮪船
スーパーの鮪のシールに目を瞠り
人間のなんと小さく黒鮪
鮪切る包丁一閃力こぶ
下北に家族操業鮪船
鮪突く銛の勢ひ漢の腕
朝暗し並ぶ鮪の競り落とし
安酒も鮪で飲めば美酒になり
華やかに傘あつめたる鮪かな
一切ををさめ鮪のまなこかな
刺身にては計り知れない大鮪
つややかに本日一番大鮪
磯暮れて沖の鮪の光かな
鮮やかや赤き鮪と白き飯
鮪きて解体ショウの刃は光る
鮪船復興の旗掲げけり
先頭を嫌がる我と鮪かな
年輪に夕陽の影や鮪売
大間からするりと道南来る鮪
黒鮪尖るる匙に剥がされる
釣竿に夢を託して鮪かな
証かな鮪の皮の青海波
大海の連鎖の果の鮪食む
葱鮪食べ今宵の話に傾聴し
海峡に砲弾のごと鮪とぶ
まざまざと太平洋の鮪かな
ポケを食い笑顔の姪と婚約者
半世紀築地に眠るマグロかな
三崎港町に溢れる鮪の字
逸る子を父が抑へて鮪船
鮪ゆく海に空洞残りけり
大鮪百匁ほど買ひ帰る
甲板の鮪空気に溺れをり
暴騰の値が付きぬ鮪のニュース
本鮪腹の黒さを見せぬなり
目ん玉の周り二センチ鮪喰ふ
砲弾のやうに転がる糶鮪
行儀に切る鮪ユーチューブに手本
横たわる糶の鮪の腹雲母
蒸発を忘れて居たり鮪食ふ
鮪を欠伸と呑み込む同じ夜
注文は鮪から寿司はしまりぬ
大時化の海に揉まるる鮪船
黒潮に乗りて鮪の無鱗の背
仲買ひの声がうがうと鮪競る
恐れずに血の塊の鮪食ぶ
大根のつまにどっしりトロ鮪
鮪競るみな縄文の眼(まなこ)して
解体ショーの鮪の眼より見ゆるもの
銛打たれさらに暴るる鮪かな
無念なる目と口なるや鮪競る
丼に鮪盛り上ぐ港町
ああ見えて結構さぼる鮪かな
三尺の刃見据ゑて黒鮪
釣船を傾がせ鮪揚がりけり
寝姿を河岸の鮪と夫の云ふ
糶を待つ血の滴れる鮪かな
横たわる凍結白く大鮪
振鈴や鮪百尾の鉛色
後退を知らね鮪の口の先
鮪食ぶ美しき血の色を食ぶ
大鮪激闘すでに六時間
眠らずに泳ぐ鮪の不思議かな
鮪船七つの海を三つ越え
水脈を自由自在に大鮪
尾の断面見せて競り待つ鮪かな
立てて売る鮪の面の見ひらく眼
木材の如く並べし鮪競る
凍鮪尾より始まる目利きかな
しののめやマグロのごとき雲の波
鮪噛む今は寂びたる鉄の街
青空へ三百キロの鮪かな
モンバサの夜の潮騒とろ鮪
絶望に青鈍の眼の大鮪
鮪若く砥部焼白く血の黒く
大鍋をはみ出す鮪漁師飯
テレビほど巧くはゆかぬ鮪釣り
釣竿に強い衝撃大鮪
母校の名冠して鮪横たわる
鮪山かけあかぎれに似た山葵かな
もう揺れに無抵抗なる鮪船
見舞金鮪買うのも今夜だけ
アメ横を鮪一冊ぶら下げて
鮪船の親子は無口大間沖
豊洲に来せり待つ大間まぐろかな
鮪らは目をつぶらずに夢を見る
添うがごとく酢飯を包む鮪かな
どんぐりに非ず背比べする鮪
日の出待ち海峡に追ふ鮪かな
黒光る背の内旨し鮪かな
足りない鮪足りぬまま訣れ行く
山白し鮪は赤し氷見の市
漬け鮪その赤黒の狡がしさ
白銀の腹へ血しぶき大鮪
大鮪待つトラックや首都へ行く
特売の鮪に虹の光りけり
とろよりも鮪赤身の舌触り
海峡の荒れに応ふる鮪かな
親潮に上りくる進取の鮪
チェーンソー輪切る音なり大鮪
太平洋幾度巡れりクロマグロ
のったりと刺し身の舟に本鮪
己が血の上で糶らるる鮪かな
初競りの鮪のヒレに氷柱あり
マグロごと三十年余働けど
解体を見世物にされ大鮪
あかあかとぶつた切らるる鮪かな
鮪食むするりと抜ける故国かな
トンネルのやうに置かれてゐる鮪
船揺れて声声鮪ぶち切らる
逆しまの鮪の眼未だ黒し
ポケ食えば風鈴鳴らす貿易風
祝ひ日や鮪二切れ粥の膳
凍鮪口を歪めしまま糶らる
死んでから解体さるる鮪かな
出歩くを止(や)められぬ性(さが)大鮪
競り落とす尾鰭断ち切られし鮪
鮪船港で想う大漁旗
大鮪滾る糶場の空気かな
赤道を越えて戻りて鮪船
大波を立たせて揚がる鮪かな
一億で糶られ大間の鮪かな
大鮪男衆二人荷いけり
海峡の逆巻く潮鮪とり
鮪船人生釣れと竿しなる
鮪釣る老人の貌皺深く
シーチキン鮪風味はほのぼのと
濁声の齢八十鮪寿司
吹き荒ぶ風に凍えて大鮪
先輩の奢りで知るや鮪とろ
新しきアロハ鮮やかポケのしみ
本まぐろ一糸乱れず並ぶ市
鮪の目太平洋の潮匂う
大まぐろ魚雷のごとく突進す
浦島の窓から鮪市の灯や
鮪船漁師はゴッホの顔をして
縦横に出刃が鮪の解体ショー
鮪食ふて口数多し大間人
祖父帰る鮪の刺身大皿に
縷縷として嬉嬉として鮪解体ショー
汝が統べし海へ落日凍鮪
死に際に尾鰭の生きる大鮪
鮪寿司コインを貰ひガチャ回す
万馬券外れし夜の鮪かな
糶りの声天に吸われて鮪市
脚がスケボーの子は鮪よりカレー
あはれなり解体ショーの大鮪
大鮪裂けば未明の潮の音
武勇伝ありそな背な鰭大鮪
マグロ獲る船腹朱し初日の出
祖父好み食卓にぎわし鮪汁
仕留めたとのたうつ鮪の白い腹
魚市場賑はふ時間凍まぐろ
大椀の山葵香るる鮪丼
長き間の後の「やったぞ」鮪漁
頭上より長包丁や凍鮪
鋸で尾を切る糶の大鮪
クレーンに冷凍鮪釣り上がる
還暦は折り返し点鮪食ふ
黒潮に染められて来し本鮪
男らにまじる女のあり鮪競り
海持たぬ郷の祝卓鮪なり
棍棒の冷凍鮪糶待てり
大鮪鰭ひと振りの高速度
鋸で頭切らるる鮪かな
トロ鮪父は食べずに酒を飲み
ポケ食えば猫が布団で生あくび
遠洋の鮪氷になり寄港
原爆を憎み続ける鮪かな
鰹ねと君は言うけど鮪だよ
鮪競るみすずの嘆き聞こえしか
墨文字の貼られ祝ひの黒鮪
涙までしやぶり尽くして黒鮪
釣り上げし鮪三百キロを超え
鮪船水平線に帰り来る
沖へ沖へ男を誘き出す鮪
縄文の土器は赤色鮪食う
鮪部の冷凍学科講師連
糶り果てて鮪の数の広さかな
一声の高きに落ちて鮪糶り
角皿に七切れの鰭長鮪
運ばれて衆人環視の鮪かな
凍鮪尻尾切られて覗かれる
釣りあぐる今朝の鮪の黒目がち
魚河岸を台車の鮪突っ走る