兼題「夏シャツ」__金曜俳句への投句一覧
(4月30日号掲載=3月31日締切)
2021年4月2日3:50PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
夏シャツの傍題には、アロハシャツや開襟シャツもあります。涼しげで良いですよね。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2021年4月30日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【夏シャツ】
夏シャツ干すぴしつと伸ばす裾の皺
夏シャツを汚し少年青年へ
夏シャツの暑く袖折る木陰かな
夏シャツをかるく濯ぎて旅の窓
夏シャツの釦外せる少女の眼
夏シャツのはずむ銀行窓口に
先生は白衣の下に夏のシャツ
少年のロマンはらみし夏シャツよ
白シャツや背筋伸びたる老教師
夏シヤツを絹代麻子と名づけ干す
夏シャツの母はしばらく庭をみる
夏シャツの裾入れなおし白バイへ
夏シャツを掴む手に汗遊園地
年取らぬ故郷の渓やアロハシャツ
夏シヤツに川獺からの水つぱね
夏シャツに意味不明なる英語文字
夏シャツの野外ステージを乗つ取る
よれよれの夏シャツを着てナンパして
夏シャツの釦裂き自由からの逃走
夏シャツに風を入れてる昼休み
カラフルに夏シャツ似合ふ三兄弟
自転車の少女夏シャツ膨らんで
夏シャツの背に毛筆の抗議文字
夏シャツの貝のボタンを二つ開け
指這はす開襟シャツの解禁部
夏シャツの襟に硬さの残りたる
夏シャツやいつも黒猫付いて来る
夏シャツの腕が本棚横切らむ
夏シャツで手を拭いてまた顔拭いて
中津川フォークジャンボリー夏シャツ占拠
絵の中の涙濡れをり夏のシャツ
夏シャツや碧色深き日本海
横須賀の街の彼方此方アロハシャツ
夏シャツの宅配便のお兄さん
白旗の夏シャツ干して敗戦日
図書館の本の背こする夏のシャツ
夏シャツ一度きりこの肌ざわり
夏シャツの子の伸び盛り食べ盛り
夏シャツや肌に届ける浜の風
白シャツの背に大海の応援団
白シャツに両手が生えてゆくところ
夏シャツや一人が好きな日もありて
丸の内口夏シャツを吐き出しぬ
浜辺では夏シャツ派手でなかりしが
夏シャツの知事相好を崩さざる
空色の夏シャツ裾堅結ぶ
夏シャツの胸にみづかげろふ流る
夏シャツに替へて寿命を延ばしけり
大空に夏シャツを投げ込んでみる
夏シャツやロシア文学読む若さ
芝草に夏シャツの姉薄化粧
夏シャツに黒点の影大実験
夏シャツや腋窩リンパに風通る
夏シャツや異動の内示目で受けて
夏シャツに太きウエストなほ目立つ
夏シャツや二ミリに薄き板を貼る
夏シャツの白にラーメン留まる日
若人の夏シャツ揺れて目に眩し
夏シャツを着れど一本筋通す
夏シャツやスクーリングに正す襟
伊予灘へ姦しき夏シャツの客
夏シャツの輝いてゐる遊歩道
夏シャツとわからぬほどに刻まれる
職辞して人目気になるアロハシャツ
夏シャツに着いたケチャップ犬が舐め
向かい来る車も同じ夏のシャツ
夏シャツの背が自己主張する翁
夏シャツの担任に会う河川敷
夏シャツの柄に気の散る会議かな
心音ごとおおきく扇ぐ夏のシャツ
フランス語講師からまづ夏シャツに
何事も起こらぬ夏アロハシャツ
営業のエース真つ白な夏シャツ
缶の汗もろとも喉へ夏シャツ
夏シャツを弾けさうなる肌の色
白シャツにブルージーンズ父も子も
白シャツの朝日に揺れて窓の外
夏シャツを干して八月十五日
夏シャツ磯に投げれば風が着る
白シャツや叱責好きの母者人
夏シャツの至極まじめに干されけり
後ろ向き駆ける恋路やアロハシャツ
夏シャツの眩しき上りホームかな
夏シャツを裏返し着て得意顔
夏シャツを着れば風吹く七里ガ浜
胎動やボタン外してクレープシャツ
アロハシャツ凪の海辺の老夫婦
夏シャツや突堤の風はらませて
江ノ電に夏シャツ増えて鎌高前
夏シャツのピンクのマスク女学生
夏シャツの糊を効かせて初対面
夏シャツの後ろ姿は父に似て
夏シャツの似合ふ男子や反抗期
夏シャツの並べて干さる健やかさ
夏シャツが眩しい車内アナウンス
夏シャツの背後に迫る乱層雲
夏シャツやアフリカ模様の出す刺激
屋上の夏シャツのみる海に傷
百代の過客夏シャツに紛れおり
夏シャツの衿にアイロンなくば着ず
夏シャツに風はらませて最南端
夏シヤツの背にバカとすら描けぬ恋
眠れない夜に夏シャツを畳みけり
髪を束ねて夏シャツが水を飲む
朝礼の夏シャツの襟固きかな
夏シャツや欠航続く国際線
夏シャツの少年むかし麦わら帽
夏シャツを畳めば砂のぱらぱらと
新任の教師夏シャツ腕捲り
夏シャツのいかにも過去のある男
夏シャツに抱いた裸体の火照りかな
夏シャツとなり寄辺なき首回り
父さんの形見分けならアロハシャツ
海風を受け夏シャツのよく笑ふ
物干しの夏シャツの影フラダンス
夏シャツや司会のジョーク軽過ぎて
夏シャツの腕の白さや眩さや
マドラスへ降り夏シャツの波に遇う
夏シャツのみな立ち上がる外野席
夏シャツの白く眩しい美少年
夏シヤツの留学生のプラカード
夏シャツや遺影は薄きモノトーン
夏シャツや日暮れの速き峡の村
夏シャツの襟から裾へ抜ける風
すれ違ふ青年まぶし夏のシャツ
夏シャツの少年風を飼ふごとく
WEB会議の背景は海アロハシャツ
浅草のサンバ見てをりアロハシャツ
少年の鎖骨の尖りアロハシャツ
アロハシャツ求めグアムに子の挙式
夏シャツを着崩すことのできぬ父
せめてもの極彩色やアロハシャツ
夏シャツのバーテンダーの無口かな
夏シャツの袖をまくりて男坂
夏シヤツに楽な魔法のテープ縫ふ
夏シャツ一日の夏汗と皺
夏シャツや腕に卍のロック歌手
夏シャツにインスタ映えする海の風
白シャツは気流に乗つて屋根の上
夏シャツの少年ポケットをさぐる
夏シャツや左右に揺れる目のやり場
夏シャツや釦少なし生地狭し
夏シャツや市役所戸籍住民課
夏シャツや流木に余熱の日暮れ
夏シャツの黄ばみ遙かな父の背
夏シャツは父のお下がり腕まくり
夏シャツの教師メガネも変へにけり
夏シャツに負ぶった赤子の皮膚の熱
夏シャツや退院予定と壁に貼り
アロハシャツあの世の父も磊落で
夜の駅出て夏シャツがもう一人
夏シャツを出してコーデと洒落るなり
タンデムの腰夏シャツの海の色
オホーツク夏シャツ番屋鳴くカモメ
かっこよく夏シャツ着こなす上位職
夏シャツの薄さに大地めくれをり
夏シャツに思ひ思ひのタンブラー
夏シャツや少年の足を持て余す
夏シャツや辞書を片手にロックンロール
夏シャツの皺にけじめの月曜日