新型コロナ禍で避暑地に行くことが難しい夏になるかもしれません。もっとも、「避暑」どころではない方々も多そうです。さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』２０２１年５月２８日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【避暑地】
たっぷりと避暑地の朝といふ時間
故郷が避暑地になるといふ娘
いつもより話題溢れる避暑地の夜
谷川に憂ひ流すや避暑の村
しづけさの星におののく避暑地かな
里道や水音たかし避暑の村
植民地に似たり避暑地の賑わいは
落ち着かずハッシュタグ読む避暑地かな
山の上名ばかりの避暑地軽井沢
避暑地にはランプが多く売られ居る
湖みれば雲がごつんと合ふ避暑地
人間をだめにしさうな避暑地かな
うたた寝に避暑地の雨のアンダンテ
決断し南であるぞ避暑地かな
避暑地にて喪ひし秘め事の恋
妻と子に見送られたる避暑の宿
先週の番組流る避暑地の夜
鬼棲むてふ避暑地に妻の生まれけり
封筒に風詰めている避暑地かな
餃子食べ避暑地は北海道がいいと言ふ
避暑散歩今朝は御池の畔まで
昨年の週刊誌読む避暑の宿
木蔭てふ小さき避暑地見つけたり
つば広の帽子目深に避暑地去る
伯母さんの家は避暑地の雑貨屋さん
避暑地にて寛ぐはずの父でありし
懸案を処理できぬまま避暑地去る
エスペラント流るる避暑の宿清し
小夜更けて避暑地のアガサクリスティ
白杖の音や避暑地の石畳
ドアベルの音透き通る避暑地かな
避暑地とて髭手入れせる無聊かな
避暑客の覗く葉山の御用邸
白樺の木を目印に避暑地の夜
満天の星空仰ぐ避暑地かな
ひよわなる知性逍遥避暑地暮る
最善を尽くして避暑地選定す
労働の合間に歌った避暑地かな
避暑地より届く葉書や孫の笑み
山深く水がうまくて避暑の宿
珈琲を飲みにゆくだけ避暑の午後
避暑地での出合ひ童話の一ページ
つむじから砂の香りのして避暑地
友誘い避暑地の小屋へ「遠遊亭」
本棚は端本ばかりの避暑の宿
恐竜の化石探しぬ避暑家族
おとなしき犬や避暑地のテラス席
売り家の看板目立つ避暑地かな
藤村の石畳恋ふ避暑地かな
夫の故郷であり避暑地でもあり
教会に異国の人も来て避暑地
避暑地へと一人減らして断行す
足踏まぬ間合いの避暑の立ち話
眩しさのかたまつてゐる避暑地かな
避暑地にてきのふのベーカリーけふも遇ふ
惜しむ陽や避暑地に残す物語
漁火を遠くに置きて避暑の宿
宿題の終はりし振りをして避暑地
避暑地まで渋滞続く４号線
車窓から避暑地遠のきビルの森
来てみれば避暑地の道の遠かりき
避暑客嶺から海へ遊覧機
避暑地にて本読む女に憧憬す
教会の鐘甦る避暑地かな
なぜなのか詩集避暑地へ持って行く
避雷針どれも真新しき避暑地
チェス盤の置かれ避暑地のバルコニー
某家令嬢失踪す避暑地の夜
思い出は避暑地の風の刺繍店
閉まるドア避暑地の訣れあっけなく
波音のまじないめいて避暑地かな
さりながらふるさとは今なほ避暑地
静けさの川面の風や避暑地にて
避暑の地の辻うつくしき角度かな
金遣ひ荒くなる避暑地の魔法
高原の野菜摘むのも避暑の朝
避暑地にてワンピース着る慎ましさ
自転車を借りて避暑地の一日かな
避暑の子と避暑地の子とのテニスかな
避暑地にてバス停待つ列ブランド好き
白樺の森を迷ひ来避暑地かな
単行本膝から落ちる避暑地かな
誰彼と横顔晒す避暑地かな
降りしきる雨に静まる避暑地かな
星の声聞こゆ避暑地の天間近
蛇とあふ不安もありて避暑地かな
避暑地へのライン既読とはならず
泡沫は避暑地の午後の情事かな
ラグビーのスクラム烈し避暑地かな
馬の背に瞬く翳る避暑地かな
別々に辿る往路や避暑の宿
全景の星ぞら完備避暑の宿
避暑地より届きし便り無頓着
避暑地来て本の厚みを持て余す
避暑の宿冷製の皿銀ナイフ
避暑の地に使はれぬ駅残されし
避暑地にて長年捜した詩集買う
文庫本二冊読み終え避暑地去る
囀りはケセラセラセラ避暑の朝
金坑のありしと避暑の宿深く
避暑名残絵葉書二枚白きまま
避暑の島雲湧き父の海ゆかば
避暑地丸ごとラップで包み届けたし
避暑地から届く便りか今日の風
避暑の旅どちらにしても文句なし
雨音や避暑地に失くす貝釦
絵葉書の避暑地を想うテラス席
まだ見ない復路の切符避暑の宿
応援部歌ひ踊るや避暑地の夜
避暑の宿ゴルフバッグを待ちわびる
支配人夜はバーテン避暑の宿
丸太小屋ぽつん避暑地のベーカリー
源流を探す避暑地の獣道
少女らのアンとダイアナめく避暑地
蕪村句集読みて日暮るる避暑地かな
火照りつつ星座を探す避暑地かな
避暑名残まるまつて寝る盲導犬
避暑の宿有名人に会えるかも
捕虫網避暑地の風を持ち帰る
無造作に外車の並ぶ避暑地かな
純白のワンピース着て避暑地の子
避暑の宿天狗の鼻に迎へらる
蛇の目を傘立てに捨て避暑の旅
避暑散歩苔むす道の芭蕉句碑
避暑地行く表紙と同じワンピース
なにかしら火の欲しくなる避暑地の夜
野良猫のみめかたちよく見え避暑地
眺め良き星の大きさ避暑の宿
図書館や手短ながら避暑地とす
捕虫網失せし避暑地を子は失せし
バス降りて風の声聴く避暑地かな
逃げても逃げても背中焼けをり避暑地かな
富士を見て避暑地の馬車に揺られけり
避暑一日風と紅茶と文庫本
避暑地とは呼べないやうな湖の風
こざつぱりしたる子多き避暑地かな
「お疲れ」と手紙をもらった避暑地かな
辺境へ外つ国からも避暑の客
不便なる自然楽しむ避暑地来し
魚にも肉にも飽きて避暑地去る
窓さす日明るさ増して避暑地かな
欧米の言葉聞こゆる避暑地かな
避暑地来て靴紐の無き靴を買う
本籍を避暑地に移す都会人
砂に書く「さよなら」の文字避暑期果つ
新聞もひんやりとして避暑地かな
あわてんぼうの仲居さん避暑の宿
仕事さへなければ我が地避暑地なる
星みえて避暑地の町をたもとほる
避暑地にて星を一緒に見た女
かの人のサインの写真避暑の宿
妻と子の待つ避暑地へと直帰かな
この避暑地風音ばかり人まばら
避暑の地に化石の森のありにけり
木漏日を映す避暑地のサキソフォン
方言を聞かず避暑地の日々過ぎぬ
避暑期来て鉄子乗り継ぐグリーン車
みずうみの人も避暑地も老いにけり
柴犬のはや馴染みたる避暑地かな
亡き友と本廻し読む避暑地かな
避暑地とゆ使はぬグランドピアノかな
日本地図ダーツで決める避暑地かな
よく濡れし道も避暑地の散歩かな
教会の末席に座す避暑の客
夕暮れの手前に避暑地賑はいぬ
囁きが夜の避暑地に谺せり
避暑の地に妻ある人と影重ね
おニヤン子の団扇避暑地の子供部屋
ファミレスのコンビニのなきよき避暑地
山迫り水冷々たる避暑地かな
高価なる無為を過ごすや避暑地泊
拭き掃除までもが楽し避暑に来て
避暑の地に回覧板の揺れてゐる
日常をトランクに詰め避暑地かな
ふらりとて避暑地に翁の小さき句碑
人影もまばらな避暑地貨物線
岳カンバ避暑地で過ごす宣言下
高原が窓より入り来避暑の宿
人影も疎らな避暑地青ポスト
捨て犬やウッドデッキに避暑名残
発掘はおはり明日から避暑地なる
山国の避暑地にもある銀座かな
駅前のタクシー色薄き避暑地
別荘の続く坂道避暑地なり
避暑地来て家族の揃ふこともなき
西洋の風混じりたる避暑地かな
避暑地去る指間の砂を覚えたる
林に起き林に眠る避暑静か