兼題「ハイビスカス」__金曜俳句への投句一覧
(6月25日号掲載=5月31日締切)
2021年6月10日4:59PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
ハイビスカスは南国の季語ですね。仏桑花(ぶっそうげ)とも琉球木槿(むくげ)とも言います。赤色が多いですが、白や黄色、八重咲きなどもあります。さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2021年6月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【ハイビスカス】
人知れぬ歴史を覆う仏桑花
爆音に激しく揺れる仏桑花
風吹かぬ白き路地きてハイビスカス
揺れるハイビスカス胸に真紅燃ゆ
太陽の黒点しるしハイビスカス
白日の戦車来し海仏桑花
子の歩み見守り十年ハイビスカス
ハイビスカス髪に飾りし女給かな
仏桑花にかこまれいるもここは基地
船を焼く海の黄昏ハイビスカス
店番を客に任せてハイビスカス
風の声おしべで聴くは仏桑花
税関の窓口遠しハイビスカス
会話なき再会でしたハイビスカス
合唱隊ハイビスカスを髪に挿す
ハイビスカスひらけば蘂の朝を得て
ハイビスカス墓場の花と島の人
クレヨンの数色食らふ仏桑花
画面より取り出せさうなハイビスカス
梵妻の小袖の柄のハイビスカス
ハイビスカス猫に幼児言葉かけ
幼子は浜に目覚める仏桑花
ジープからハイビスカスへビスカスへ
夕立来てひと日を終わるハイビスカス
邦人を阻むフェンスに仏桑花
仏桑花島唄のもの悲しき日
ハイビスカス萎み没り日の弱気かな
身を投げし女らあまた仏桑花
金網の両側にある仏桑花
水牛でゆく島の径ハイビスカス
ハイビスカス飾る島の娘恋一途
ハイビスカス揺れる熱帯フラダンス
ボンネットごと抱かれおりハイビスカス
一輪にこめる力やハイビスカス
ベランダに人待ち顔のハイビスカス
糸満の慰霊の塔へハイビスカス
また増えしハイビスカスの実家かな
ハイビスカス「ちーまま」決まる熟女バー
仏桑花ここもかつての激戦地
仏桑花いまだ終らぬ魂鎮め
仏桑花舎利子の惑い美しき
最上階ハイビスカスは空に触れ
手渡しのボトルメールやハイビスカス
潮騒の寝息のごとく仏桑花
群青を深める夜空ハイビスカス
基地の町ハイビスカスのいつまでも
革命の日は短くもハイビスカス
大叔父は日本負け組ハイビスカス
ハイビスカス耳にキスして盗る男
ハイビスカス真紅のしべは凛として
仏桑花誰のためでもなく散りぬ
ハイビスカス胸赤い百舌も赤
手に取れば重さわずかな仏桑花
新婚の写真ハイビスカスを入れ
スコールやハイビスカスも濡れにけり
投げキスをハイビスカスにされている
八十五歳フラの名手のハイビスカス
仏桑花かぜを薬味にソーキソバ
ハイビスカス好きよの意味に今気づく
哲学をやめてしばしのハイビスカス
食卓にハイビスカスのひと灯り
黒髪にハイビスカスの燃える赤
生垣を声の抜けくるハイビスカス
何もかも眩しくひかる仏桑花
仏桑花ここより射撃訓練場
ハイビスカス強き唇持て余す
長き蘂ハイビスカスの身繕ひ
手にひらく紙の眩しくハイビスカス
黒糖の塊ふとく仏桑花
ハイビスカス今日の名残りの吐息つく
フーテンのハイビスカスや通り雨
ハイビスカス露な肩の白きこと
轟音にハイビスカスの色深む
赤白黄我が我がとブッソウゲ
寝て起きてハイビスカスと空と海
ニライカナイの祈りはるかに仏桑花
アグネスの髪にはたしかハイビスカス
うつくしくならんハイビスカスを呑む
ハイビスカス島唄にゆれ波にゆれ
ハイビスカス挿して島史を語りたる
ハイビスカス咲く懸命に生くる島
ハイビスカス名人今年百五歳
出歩けばハイビスカスに地域猫
特攻の指令を待てり仏桑花
仏桑花暢気な人の早世す
ハイビスカス髪に飾りてハワイアン
沖を見る横顔を待つハイビスカス
ハイビスカス夕日(ゆうひ)の赤と競ひけり
ハイビスカス人それぞれに逸機あり
ハイビスカス熟れ崩れゆく夕陽かな
仏桑花踏んで強制土地収用
洋館の歪みハイビスカス盛り
水鉢にハイビスカスの花花花
七色の酒のグラスとハイビスカス
ハイビスカスぷいと怒りの落下かな
よこしまな風が揺らすよ琉球木槿
欲張りなハイビスカスが日を集め
赤き舞ハイビスカスの模様かな
戦なき幸せを知る仏桑花
横面を風にはたかれ仏桑花
砂浜へハイビスカスの道しるべ
ハイビスカス風のかたむく水牛車
仏桑花茂みの奥の追悼碑
ハイビスカス明日は新たに生きようぞ
美ら島の未完の平和ハイビスカス
悲しいと語るハイビスカスは咲く
芭蕉布の軽きを纏い少し浮く
どこまでも祈りの続くハイビスカス
血の色はハイビスカスの赤と知り
マドンナとハイビスカスは月の影
遠景の浜にダイバー仏桑花
シークァーサージュースに添へる仏桑花
日の沈む前のしづけさ仏桑花
ひめゆりの塔に深紅の仏桑花
石段のハイビスカスの影は碧
桟橋にハイビスカスは出荷待つ
沖縄の野晒しの耳に仏桑華
少女らは皆老いにけり仏桑花
不揃いのハイビスカスや咲きほこる
ハイビスカス永き一日を華やかに
灯台のハイビスカスは海に散る
はつきりとふられハイビスカスの午後
大叔母は写真花嫁扶桑花
ハイビスカス小さき嘘をつきにけり
みな浜に出でてハイビスカスの庭
猫はハイビスカスゆるる野のサロメ
山羊二匹ハイビスカスと園児らと
ハイビスカス力蓄え出番待つ
蒼天へハイビスカスのブーケトス
ハイビスカス腿に当たりぬ宿の鍵
主なき破れ土塀にハイビスカス
色褪せたハイビスカスの絵葉書よ
ウチナーは遠き島なりハイビスカス
原色と釣り合ふ日射しハイビスカス
ハイビスカス豚肉料理多き日の
スコールやハイビスカスは気にみちて
モノクロの火を吐く銃器仏桑花
空と海ハイビスカスのたたずまい
ハイビスカス掲ぐる袖に腕細し
紫の海吸い取るやハイビスカス
ハイビスカスやさしさだけは忘れない
ハイビスカスアーチを胸に駈ける子ら
生も死も赤に染まりて仏桑花
種子島ハイビスカスの狼煙かな
裏口へ帰す男や仏桑花
一生を○で終えたやぼさつばな
海と空の薄きあはひや仏桑花
三線の時々音痴仏桑花
仏桑花祈りのフラの厳かに
島唄とハイビスカスと星の砂
ハイビスカス少女の髪に蝶のごと
野性味を帯ぶる日の射しハイビスカス
ハイビスカス紙ストローのへたりやう
仏桑花コントラストの失せし顔
ブッソウゲ家康公より我が母へ
雨の日は白ことさらにハイビスカス
空も青海も青なりハイビスカス
鉢植の密になりけり仏桑花
フラガール髪に真紅のハイビスカス
先週も来週も晴れハイビスカス
ハイビスカス似合ふ絵飾り独居なり
うたたねに目覚めハイビスカス紅し
キャタピラの轍の横に仏桑花
タンカーのけぶる波きてハイビスカス
初キッスハイビスカスに傘掲げ
シェルターのかたちでしぼむハイビスカス
寅さんがリリーといたっけハイビスカス
大胆に打ち明け話ハイビスカス
朝日さすハイビスカスの蘂あらは
ハイビスカス彼女が人魚だつた頃
ハイビスカス真紅はフォルムから溢れ
ハイビスカス咲き乱れたる珊瑚塀
ハイビスカスティーで乾杯宣言下
潮騒に金の響きやハイビスカス
ハイビスカス車拒める道ばかり
ハイビスカス雌蕊がねらうオスプレイ
下向いて語ることなし仏桑花
廃屋に鮮やかなりし仏桑花
色あはきオバァの墓の仏桑花
ハイビスカス髪に飾ってフラダンス
戦跡の供花のごと咲くハイビスカス
兵隊の霊が取りつくハイビスカス
日を舐めてハイビスカスのそこらぢゆう
あの人をハイビスカスとすぎし夢
日本語の通じる異国仏桑花
午後よりはハイビスカスへ雨激し
帰り道ハイビスカスの数数え
ハイビスカス根元に戦さ伝へる地
あなたならハイビスカスをどこに置く
ピカドンとハイビスカスの赤が咲く
ハイビスカス畏れ敬ふ色に恋
馬の尾のハイビスカスを打ちにけり
卒業式ガウンにハイビスカスを挿し
ハイビスカス我も一と日を生き抜けり
ハイビスカス島を離るる朝の空
風葬の魂いずこハイビスカス
思いきり泣いた少女にハイビスカス
米軍のフェンスの先の仏桑花
その蕊に銃音記憶仏桑花
ハイビスカス港に待ちてゐる外車
大空にハイビスカスの雄蕊かな
万の血のハイビスカスの赤ならむ
ハイビスカス鉄条網の先に海
肉食らふ女のごときハイビスカス
仏桑花エイサー踊る娘達
ハイビスカス女は性を突きいだす
島唄の流れきたるや仏桑花
空に虹地にハイビスカスホームレス
ハイビスカス浅岡ルリ子八十歳
晴天を余すことなくハイビスカス
あたらしき海の家には仏桑花
凪ぐ海の夕日の道を仏桑花
凪わたる海の青さやハイビスカス
青空はハイビスカスの時に敵
ハイビスカス笑顔明るき娘たち
誰が為の破れ飯盒仏桑花
初恋や闇に香りしハイビスカス
踊る指ハイビスカスを髪に挿し
日を集めハイビスカスのテラス席
塀越しにひしめき合いしブッソウゲ
風上にハイビスカスの棲むらしき