兼題「海の家」__金曜俳句への投句一覧
(7月30日号掲載=6月30日締切)
2021年7月15日6:34PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
コロナ禍で「海の家」経営者も苦労しています。日常が早く戻ってくることを願っております。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2021年7月30日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【海の家】
赤銅の笑み海の家のアルバイト
原色の氷シロップ海の家
白き歯の若者揃ひ海の家
ストローはしましまピンク海の家
板敷の砂に寝転ぶ海の家
海の家砂の女と座る身は
神棚に蜘蛛の巣がはる海の家
犬捜す手書きポスター海の家
艶競ふビキニ眩しき海の家
良き風のしるべとなりて海の家
まなざしと砂を払ひて海の家
海の家潮騒を背に肘枕
波音や銀河に浮かぶ海の家
軒先の浮き輪も褪せて海の家
貝殻を並べる子いて海の家
告の字が涙で霞む海の家
足の裏熱き砂払い海の家
うすべりに砂のザラつく海の家
荒波を見つめる親子海の家
砂浜に巻き貝の這ふ海の家
足裏の砂に戸惑ふ海の家
つま先で砂浜駈けて海の家
膝裏に砂のざらりと海の家
うたた寝にゴザの跡付く海の家
江ノ電の窓に砂つぶ海開き
宿題を渋々する子海の家
海の家皮の残骸西瓜なる
星空をあげ湘南の海の家
海の家の鼠は歩いて行くか
海の家すこし優しいお父さん
潮浴や天へばんざい通り雨
洋楽を初めて知った海の家
サーファーは身ぶり手ぶりや海の家
太陽は空真ん中に海の家
ひと波を浴びてバイトは海の家
砂浜の匂いに満ちる海の家
潮ふいて駆け込んでくる海の家
級長の臑毛濃きかな海の家
定員はオーバーしてる海の家
眩しけり水着の妣や海開き
海の家ライフセイバー寝そべりて
産土や目蓋の上の海の家
淡海なる水泳場に海の家
曇天にひとつ嘆きて海の家
海の家轟きわたる波の音
ああ八十路浦島太郎海の家
更衣室よりの潮の香海の家
カラオケのコンテストをやる海の家
注文のメモの濡れゐて海の家
日に焼けた父に抱かれし海の家
海の家賑はふ浜の監視員
園児らのまなざし遙か海の家
海の家遠浅走る幼き日
赤い旗だあれもいない海の家
海の家遠き波まであと一町
しずけさの午後にまどろむ海の家
ふしだらな娘だらけの海の家
海の家子らと寛ぐ露天風呂
異邦人波に現る海開き
ふりちんの子泣く子笑う子海の家
弟をやたら引き寄す海の家
風騒ぎ波音高し海の家
テーブルに砂の残りし海の家
気怠きを茣蓙に委ぬや海の家
ただひとり舟の子となる海の家
海の家の鼠波に翻弄す
かき氷茣蓙にこぼれる海の家
かなづちの母が陣取る海の家
アガペーとは無理を聞くこと海の家
四肢長き思春期の子ら海の家
着実に渚削らる海の家
波乗や沖の船から波届く
海の家タップリのせる紅生姜
焼きそばと肌を見紛ふ海の家
海の家寝転ぶ猫と坊の距離
よその子は幼いままの海の家
山陰の浜や静かな海の家
思ひ出の海の家には御婆様
雲に乗り海の家から遠ざかり
海の家の鼠は隠れて行くか
ひこうき雲まどに映して海の家
海の家元祖なりたるシェアハウス
テーブルに脚をぶつけて海の家
脱ぎ捨てし物を枕に海の家
海の家葉巻の匂い立ち込める
二年ぶりの客待つ海の家の人
砂浜の吹き抜ける風海の家
海の家西瓜の皮や山となり
急かされて急いで食べて海の家
“密避けよ” ビラの虚しさ海開き
砂に描く図面はみ出す海の家
遠くより明るさの来る海の家
脛の砂愉しく乾き海の家
海の家潮騒ざつと鉄板に
シャワーの水肌に冷たし海の家
汐風に烏賊焼く匂ひ海の家
海の家大音量のビートルズ
鉄板焼き懐かしき匂い海の家
海の家閑散として壱岐見ゆる
海の家燃やしてまわる哲学者
店員の露出度高き海の家
子の声の高さと波や海の家
汀までの緩き傾斜や海の家
砂の手に渡す釣銭海の家
どぶづけにドリンク冷ゆる海の家
海の家軒先すべて海に向け
洗い場の目地に真砂土や海の家
打ち明けてしまへば終はり海の家
ポスターの注意細々海の家
砂の粒海の家にて忘れけり
平日の雨の日にゐる海の家
埋めかけのタイムカプセル海の家
明治期の海の家だと保存され
海の家飛び出て浜を一直線
指切りの指の残れる海の家
サーファーコーラ飲む背に海の砂
海の家うすき硝子に太き文字
海の家今年も同じバイトの娘
夕風に背を煽られて海の家
海の家淡水持ち込み歌うたふ
夜露死苦と壁に書かれた海の家
プラごみを拾ひてよりの海の家
小父さんはぼくの叔父さん海の家
海の家賑ふほどにざらざらに
妻は荷のそばを離れず海の家
アルバムの月の砂漠の海の家
波の音絶え間なき夜の海の家
沈むまで入日見ている海の家
明々と赤のあふるる海の家
潮汐を操作してゐる海の家
じいちゃんは遠くを見てる海の家
壁紙の少し届かぬ海の家
プライベートビーチに隣る海の家
店員が夕日の海に海の家
夕波に出臍のごとく海の家
パラソルの色とりどりに海の家
海の家どこか難民キャンプめく
砂の上の屋形船めく海の家
わっと混む嫁いだ先は海の家
月光と波の音のみ海の家
むらさきの唇ぬくめ海の家
海の家遊泳地域は世代別
千億の波音遥か海の家*
小銭また足りなくなりぬ海の家
ノルウェーの森読むをんな海の家
カセットの昭和歌謡や海の家
海の家釣り舟帰港眺めつゝ
海の家場末の波に苫屋めく
波音や旗翻る海の家
組立も了ふも速き海の家
ちちははの臍のくぼみよ海の家
海の家人魚は遊びに来るまいか
風の道一番よきに海の家
日輪やとろけて青し海水浴
ともだちを貸りたまま去る海の家
海の家に飾られている月の石
砂浜に喧騒の無き海の家
神棚が海を向ひてる海の家
ひび割れし黒きタイヤが海の家
単色で埋める絵日記海の家
海の家子の小海老めくおちんちん
海の家主人はいつもヘボ将棋
松林小径をゆけば海の家
飲み干すはノンアルコール海の家
母と子の別れ告げるや海の家
砂の無き星の虚や海の家
大学院入試の人と海の家
由比ガ浜建てては壊す海の家
串焼きの貝香ばしき海の家
灯台を洗ふ涼雨や海の家
海の家ライスカレーの八百円
海の家しゃりしゃりしゃりと波がしら
晴れた日の集落のみな海の家
山育ちのアルバイトいて海の家
できるなら横になりたし海の家
海の家耳をすませば波の音
天気図を読みて建てらる海の家
沖望むアトリエ兼ねた海の家
太陽はいま天辺に海の家
海の家遠き波まで雲の上
海の家板の隙間に青い海
流行の去ったメニューや海の家
災厄の最後の砦海の家
定食のメインは魚海の家
台風一過柱になった海の家
目のやり場私に頂戴海の家
褐色の恋並びをり海の家
薬罐から水を注がるる海の家
日焼けの皮むしりあう子や海の家
熱砂踏む海の家から渚へと
白き背に塗るサンオイル海の家
一日中裸で過ごす海の家
大小の浮き輪並べて海の家
沖よりの明るき処海の家
少年は干潟の匂い海の家
潮騒が子らの寝息に海の家