兼題「子規忌」__金曜俳句への投句一覧
(9月24日号掲載=8月31日締切)
2021年9月4日3:40PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
俳句の革新運動を起こした」正岡子規(1867〜1902)が亡くなったのは9月19日でした。子規忌は、糸瓜忌、獺祭忌とも言います。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2021年9月24日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【子規忌】
猫が目をそらす子規忌の五番街
獺祭忌友と集ひて酌み交わさむ
糸瓜忌や似ぬ似顔絵を描き散らす
糸瓜忌や君を選者とする投句
糸瓜忌や媼のベッド越しの空
富士越えてエベレスト臨む子規忌かな
子規の忌の枕頭に置く紙の辞書
野球帽墓に供える子規忌かな
子規の忌の土産福砂屋五三焼
蔓枯れて軒端に下がる子規忌かな
長嶋も王も知らぬ子獺祭忌
絵襖に落書きのある獺祭忌
子規の忌の膳に羊羹一切れを
点盛の点のばらけて獺祭忌
四国の地に球団欲しい獺祭忌
子規の忌や山の辺の道なつかしく
寝転んで雲を目で追ふ子規忌かな
太陽を逸れゆく鉄路子規忌かな
一切の家事投げ出せる獺祭忌
運動は子規忌と言へども行ひぬ
球音の聞こえて子規忌別れかな
咳をして息の熱さよ獺祭忌
世の中に所属無き身の子規忌かな
子規の忌や歳時記閉じて宵の酒
九月十九日へ糸瓜育ちをり
獺祭忌近江に句碑を巡りけり
子規忌こそ俳句の無限永久にせり
横顔の隠せぬ恋心子規忌
糸瓜忌や錆びの浮きたる防波堤
トイレから一人帰らず獺祭忌
獺祭忌手元の文字に目を細め
子規さんもスランプありぬべし子規忌
あんぐりと社会眺める子規忌かな
佃煮の不足を託つ子規忌かな
子規の忌やヘッドバットの鈍き音
銭湯へゆつくりとゆく子規忌かな
救急のサイレン走る獺祭忌
獺祭忌筆の掠れの騒めけり
白球に染み残りたる子規忌かな
子規の忌にコーヒー二杯パン三つ
獺祭忌豆腐に醤油日が暮れる
子規の忌の花軸そらへと傾きぬ
糸瓜忌や町一番に点灯す
大声に啖呵のひとつ子規忌かな
夕空を見ては子規忌のアーモンド
ホテルより眺むネオンの子規忌かな
糸瓜忌やポテトチプスが口角に
スマホにて一句子規忌の夕ぐれに
横顔の髭伸ぶことも子規忌かな
糸瓜忌や句帳に挟む処方箋
子規の忌や横様に見る床の軸
子規の忌や独り身の妹句を作る
獺祭忌茶碗の底の茶柱よ
朱の入る一句の姿糸瓜の忌
野ボールを楽しみをりぬ子規忌かな
水彩の花の滲める子規忌かな
片膝を抱へて座る子規忌かな
天然水在庫わずかや獺祭忌
挿すほどもなき桔梗など買ふ子規忌
文机のよきを探せし子規忌かな
子規の忌やウエブ画面に明治の句
子規の忌や筆の声よりSNS
源義の子規忌に寄する腹の水
旧るほどに子規は近きや獺祭忌
けふ子規忌客人はみな入られよ
朝顔の疎らに咲きて子規偲ぶ
健啖を親に感謝すけふ子規忌
道後の湯溢るるままに獺祭忌
草野球子規忌に球音高々と
病床から庭を眺むる子規忌かな
雨降れば傘買うだけの子規忌かな
獺祭忌野球場の朝早し
さる年の子規忌の未明安保法
漱石の家に羊羹食ふ子規忌
子規の忌の硝子戸叩く雨の音
松山を離れて偲ぶ子規忌かな
子規の忌や忌日俳句は子規に無し
締切の迫る子規忌の無精髭
いもうとに母をまかする子規忌かな
本塁に死して子規忌となりにけり
子規の忌や背面跳びのバーゆれて
ため息か若き父逝く獺祭忌
糸瓜忌や貸間探して根津谷中
横顔に似たる子規忌の空の月
一滴を硯に落とし獺祭忌
追い風の耳につめたき子規忌かな
長雨の晴れて迎へし子規忌かな
兄酔へば小便小僧なる子規忌
子規の忌や歳時記にある喫水線
手捻りの御猪口謹呈獺祭忌
起き抜けの襟元寒し子規忌かな
にやにやにやにやと猫も発句や獺祭忌
夜空より鴉の羽音獺祭忌
子規忌なり単衣の着物白い足袋
六尺の病床に笑今日子規忌
子規の忌や生も死も皆一様に
糸瓜忌や着陸までに時差戻す
子規の忌や横顔ばかりゆく根岸
子規忌疾く東北新幹線過ぐ
子規の忌の石鎚山の晴れること
子規の忌や彼の三倍生きしのみ
糸瓜忌の言問通りよく曲がる
子規忌かな鯉しずしずと口あけし
フィクションも写生もあをし獺祭忌
子規の忌の珈琲かほる喫茶店
子規の忌に戦友の忌の重なれり
方丈の寝間に季語積む子規忌かな
右向きののっぺらぼうや獺祭忌
友訃報子規忌の俳句作りをり
なぞなぞの様な句を詠む子規忌かな
グローブは八手の葉形子規忌暮れ
舶来の果物並ぶ子規忌かな
子規の忌のをなごばかりの句会かな
子規忌来る己が辞世は未だ詠めず
糸瓜忌の食ふたび動く喉仏
糸瓜忌や階下の蔓ののびのびと
子規の忌の献血東京見下ろして
寝て食べて病牀六尺子規忌かな
糸瓜忌や子規横顔の裏表紙
子規の忌やへたうまのバナナの絵葉書き
透き通る明治の意気や獺祭忌
石手川石投げ遊ぶ子規忌かな
子規忌かな子規似の人がいない里
文庫本句集すり切れ子規忌かな
戸を開けておはようの声子規忌かな
子規の知らぬ古希を生きつぐ子規忌かな
竹筒に緑葉ゆれる子規忌かな
子規の忌の硯の海に映る月
日除棚お役御免の糸瓜忌
安宿のネオン子規忌を知るやうに
丁寧に磨くグローブ獺祭忌
森深く山鳩鳴ける子規忌かな
始球式大暴投の子規忌かな
糸瓜忌や万年筆に彫られし名
ホームランボールの戻りくる子規忌
子規の忌の硝子窓より花描く
子規の忌に一句啓上わが夫へ
ヤングケアラー妹思ふ子規忌かな
短命を創作で越える子規忌かな
あえかなるグラスの指紋子規忌なり
伯父さんの誕生日近き子規忌かな
飽食の時代に生きて子規忌かな
子もすでに四十間近や獺祭忌
文学の素粒子たるや獺祭忌
晴れ渡る空よ子規忌の硝子窓
子規忌来て短歌か俳句か決めかねる
子規忌には俳句をたくさん作りたい
呼び捨てにせず子規さんの地の子規忌
静かなる川を見てゐる子規忌かな
獺祭忌根岸へ下る長い坂
子規の忌に糸瓜を探す我のあり
俳句の日より一か月経て子規忌
電文のやうに交わせり子規忌かな
子規の忌の茶たくに飯粒少しあり
子規の忌にひとり子規庵大の字に
糸瓜忌や皺の手窪に化粧水
括られて全集売らる獺祭忌
あと千句作らむ今日は子規忌かな
大戦も津波コロナも子規忌後よ
その井戸は今も現役糸瓜の忌
東京の水道旨し糸瓜の忌
子規の忌の机に重き鋏かな
糸瓜忌の川をなにかの根の流る
子規さんと親しげに呼ぶ子規忌かな
獺祭忌建て替えられるビル眺め
人の国疲れてひだし子規忌かな
子規の忌のはや翳りゆく城下かな
五輪野球日本優勝子規忌かな
手に余る庭柿伐って子規忌かな
耳に来る魅力的な情報子規忌かな
子規の忌の飯粒の色白きこと
健啖は悲し子規忌の下戸上戸
トタン打つ雨音終日子規逝きぬ
先ずは詠む言葉の楽し獺祭忌
駅前に鳩集まれば獺祭忌
根岸てふ地名そこここ獺祭忌
藝大のホール厳かなる子規忌
獺祭忌いつか濡れたる庭の花
錐の先錆びて子規忌の工具箱
子規の忌や一枚増えし処方箋
日没をやり過ごす酒ぽつり子規忌
よい風をひろう子規忌の草野球
子規の忌や星の数だけ指を折る