兼題「紅葉狩」__金曜俳句への投句一覧
(10月29日号掲載=9月30日締切)
2021年10月13日4:55PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
東京はまだ暑い日がありますが、北海道や青森、長野などからは紅葉の便りが届いています。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2021年10月29日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
『週刊金曜日』の購入方法はこちらです。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【紅葉狩】
今生の曼陀羅に入る紅葉狩
紅葉狩途中下車して旅終る
枝活けて病の母の紅葉狩り
まひるまの星染まりゆく紅葉狩
木々の間を女のひとり紅葉狩
紅葉狩櫛簪の幼らと
この先にコンビニは無し紅葉狩
女神湖に牽かれぬやうに紅葉狩
尾根道を下りて古刹の紅葉狩
吊り橋の揺れも一興紅葉狩
観楓や朝食が自慢のホテル
紅葉狩貯水ダム湖の水眠る
吊り橋を振り向くたびに紅葉狩
紅葉狩花を流せる着物にて
よき風の吹く場所に出る紅葉狩
吟行の初心者集ひ紅葉狩
宴して女と参る紅葉狩り
紅葉狩露置く小径踏みしめて
紅葉や我が手のひらのいとほしき
カナディアンメープルもゆる紅葉狩り
紅葉狩千年の風濃く淡く
古寺の大樹の覚悟紅葉炊く
肩の子は腕を伸ばして紅葉狩
手庇しの透ける動脈紅葉狩
気の鬱を照葉に照らし紅葉狩
頬なでる風の軽さは紅葉狩
紅葉狩定山坊のお湯の宿
迷いなく彩(いろどり)の奥紅葉狩り
わが心少しおとろへ紅葉狩
索(あなぐ)れば人少なかる紅葉狩り
紅葉狩からだの内の音ばかり
紅葉狩流れに沿うて日の陰る
端っぽの朱鞠内湖に紅葉見る
花街にパンの店あり紅葉焚く
いろは坂ひたすら上り紅葉狩
木曽路より脇往還へ紅葉狩
仏様紅葉の心知り得るや
華やげる日陰の中を紅葉狩
かくれんぼしながら子らともみじ狩り
紅葉狩水の匂ひと水の音
人のゐない方へ方へと紅葉狩
忘られぬ湖へのびたる紅葉の赫
深入りをしすぎたるらし紅葉狩
日の透ける小道に休み紅葉狩
紅葉狩ほどよき傾斜続きをり
イラストのマップ色づく紅葉狩
紅葉狩けものみち抜け日本海
紅葉狩り歩き疲れて独り言
紅葉狩小寺の風を染む夕べ
紅葉狩仏塔ここにおはします
見納めとて行く紅葉狩去年今年
十分に肌の潤ふ紅葉狩
紅葉狩児に物心ついてより
鈴の音のひびく大雪紅葉狩
紅葉狩り人の傷見て痛々し
君の言書き写したき紅葉狩り
照り返し顔に浴びつつ紅葉狩
紅葉見や日の傾けば更に濃く
霊山に雲の生まれる紅葉狩り
準急に一駅乗って紅葉狩
紅葉見や照日のなかに黒まとう
紅葉船水面に開く万華鏡
林道を徐行で登り紅葉狩り
酒提げし上人と逢ふ紅葉狩
奥池の雨となりたる紅葉狩
紅葉狩そぞろ歩きの猫二匹
舌ピアスあけたる人と紅葉狩
寝転んで飯の温みや紅葉狩り
哲学の道の木の椅子紅葉狩り
坂道は下見てのぼり紅葉狩
渡月橋渡りて戻る紅葉狩
紅葉狩谷川沿いにお土産屋
吾れ以外紅葉狩なるバスの客
籠り居の呼気吸気解く紅葉狩
紅葉狩あとかたもなく道消ゆる
水筒の水の甘さや紅葉狩
鮮やかな北の大地の紅葉狩
幕間めくスイッチバック紅葉狩
紅葉狩りゴッホの耳を縫うやうに
マルチーズ抱きたる妻や紅葉狩
主義通し玄米おにぎり紅葉狩
大気澄む紅葉の山や紅葉狩
透明の酒のよろしや紅葉狩
きっと去年より美しと言う紅葉狩
紅葉狩老人ふたり口喧嘩
廃されし驛にはじまる紅葉狩
紅葉狩不要不急にあらねども
鬼女美女と参る行楽紅葉狩り
海の青かなたに見ゆる紅葉狩
ふと頤の線に見とれて紅葉狩
三重塔より入る紅葉狩
振り向けどひとりの気配紅葉狩
湧水の半音高く紅葉狩
みたらしの匂ふ参道紅葉狩
踏みしめて音を楽しむ紅葉狩り
夕空を仰いで終る紅葉狩
蝶タイの博士へうへう紅葉狩
手指かな五つに分かれ紅葉狩
紅葉狩不意に白けし里に出る
いつしかに絵筆を断ちし紅葉狩
紅葉狩土のにおいを焚き染める
圧倒し月まで紅し紅葉狩
紅葉狩りドローン映せりV字谷
白壁の紅葉狩の絵今朝も魅(み)る
弁当を広げ車窓の紅葉狩
寝苦しき夜も過ぎゆき紅葉狩り
野天の湯朝一番の紅葉狩
吊り橋を渡れず帰る紅葉狩り
奥山に家族総出の紅葉狩
紅葉狩麓に小さくワイナリー
岩を攀ず男見上げし紅葉狩
妻なくす男ばかりや紅葉狩
分類をすればスポーツ紅葉狩り
マラソンで疲れた果ての紅葉狩り
紅葉狩つひに明るき丘にたつ
東京の西や東や紅葉狩
切なさと笑いの雑じる紅葉狩
逆境は逆光に似る紅葉狩
千ルクス夜景の中の紅葉狩
泥道を上へ下への紅葉狩
幾度も焼かれし城址紅葉狩
富士山と競い合いかな紅葉狩
紅葉見や多宝塔より山一帯
紅の渦の始まる紅葉舟
甲高きヒールの音や紅葉狩
紅葉狩背の水筒の茶の温み
つま先のゆるい靴履く紅葉狩
片恋の順路を知らず紅葉狩
ひとり旅しながら歩く紅葉狩
いちめんの色の広がり紅葉狩る
表情も声もなき列紅葉狩
右左紅葉狩する足の向き
空畳むごと日の暮れし紅葉狩
紅葉狩り綺麗な枝を翳す娘も
てのひらのけふはやつつの紅葉狩
断崖の滝に溶け込む紅葉狩
朱に染めし湖面揺らぐや紅葉狩
手を振れば手を振り返し紅葉狩
ブラウスは薄雲のいろ紅葉狩
公園は無人烏の紅葉狩り
紅葉狩恋の名残りが流れゆく
紅葉狩廊に映せし朝かな
手にくらく火の兆したる紅葉狩
5号系途中下車して紅葉狩
足裏に黄色のかけら紅葉狩
観楓や素描の村の能舞台
戦場を四百年の紅葉踏む
漆黒に朱を蒔くごとし紅葉狩
ポール二本ヘルパーさんと紅葉狩
競ひ合ふ渓谷ごとの紅葉狩
大雪で一番のりの紅葉狩
紅葉狩父の背中を支う影
ため息のうつくしき人紅葉狩
紅葉狩母の墓山ひそかなり
万葉のたわむ山路や紅葉狩
登り来て酒の飲めない紅葉茶屋
倒木の湿りおもたし紅葉狩
欲張りの山一つ分紅葉狩
生と死の同居するよな紅葉狩
独学や残?を抱へ紅葉狩
密避けて裏道を行く紅葉狩
紅葉狩夕日と下るロープウェイ
紅葉狩り光る鎖を握りけり
黄葉の私語聞こゆるか紅葉狩
山門の石段登り紅葉狩
紅葉狩り見下ろす谷に出湯見え
踏みしだく黄葉紅葉かな紅葉狩
天鼓(てんく)はや調子上げたる紅葉狩
最上川夕陽集むる紅葉狩
落ちるとは知らないままに紅葉狩り
石段の一段二歩で紅葉狩り
紅葉狩歩調を合わす滝の音
甌穴に錦廻て紅葉狩り
迂回路に見つくる一日紅葉狩
山男大袈裟な荷物紅葉狩り
夕の日の夕の色降る紅葉狩り
紅葉狩葉先に昨夜の雨粒を
紅葉見や小雨に捜す雨女
取りどりの老い選りどりの紅葉狩
雨止みて息あたらしく紅葉狩
紅葉狩り赤や橙黄なる葉も
千年の古都の愉楽や紅葉狩
フェニックス飛びたたんかな紅葉狩
一瀑を越へてしばしの紅葉狩り
足元に西日の刺繍紅葉踏む
石ひとつ握って父の紅葉狩
道迷いもまた楽しけれ紅葉狩
千年の色パノラマに紅葉見る
唐国の景を模す庭紅葉狩
紅葉狩鬼哭のさそふ夜きたる
紅葉狩女二名に男二名
観楓を独り占めして滑り台
山頂をめざす同期の紅葉狩
紅葉狩り我の居場所は見つからず
紅葉狩いかにおはすや遠き友
川の瀬やあちこち集う紅葉狩
犬と吾の裏山でする紅葉狩
藍染のシャツも紅葉に染まりさう
茶屋跡を過ぎれば下り紅葉狩
歩荷にも杖にもなりて紅葉狩
華厳てふ滝のたかさや紅葉狩