兼題「人参(にんじん)」__金曜俳句への投句一覧
(11月26日号掲載=10月31日締切)
2021年11月8日5:21PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
人参は身近で、難しい季語ですね。アフガニスタン原産って知っていましたか?
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2021年11月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【人参】
人参の朱き孤独やカレー喰ふ
細る日を偏に溜めて人参は
規格外れの人参退屈小屋の隅
人参を塩もむだけの孤の朝餉
電話より先に人参届きけり
人参をそんなにいれちやだめですよ
人参のまったき朱や高曇
断面は星ニンジンの真つぷたつ
伸びきりて大家人参競ふ丈
人参を抜いて笑いをとる不毛
人参も食べなさいよと定食屋
給食の人参見つけて園児泣く
人参や爼板の朱に染まるほど
人参を背負ひ真直ぐに歩く人
人参の農婦一転ハイヒール
型抜きの人参ぢやないはうの人
五寸人参乱切の整然と
蒼天へ人参朱く飛ぶ大地
畑に日残し人参抜かれけり
人参の転がってゆく畔かな
長すぎる留守番にんじんを刻む
人参は不揃いなれどにんじんや
人参の三本足出て小休止
ピーラーで薄く人参剥ぎ茹でて
人参の仄かに甘き能登の朝
清瀬にんじん波郷を癒し街おこす
袋ごとゆれて人参歩のリズム
いつまでも主役になれぬ人参よ
人参の浅漬けを噛むひとり酒
人参はカレーやシチューに入りにけり
小さめの人参愛いと我が子の手
人参や前歯のおほき女の子
ふさふさの葉つき人参どうどうと
帰国した子の頭人参色や
人参の泥洗はれてなほ臭し
人参の茎あおあおと束ねられ
人参のスープでフランス気取りかな
花型の人参咲かせ独り鍋
QPトソコノニンジンデモ食ッテロ
人参を抜いて大地の匂い嗅ぐ
人参を一束さげて家路かな
まだぬくし人参を食む黒き馬
人参肥ゆ緑の髪のさわさわと
人参の朱色燃ゆる君の唇
人参をあらふ老婆のゆびの皺
根分かれて人参恥を晒すまま
にんじんに笑われているにんげんや
人参にみなぎる光元気色
人参の花粕汁の中に舞う
よそゆきの人参一袋百円
人参を抜き泥付きの手は腰へ
一日を終へる人参洗ひけり
人参の齧る音聞き朝を知る
人参や社会思想を育みたい
映画の日の妻と人参買ふ夕べ
人参を磨く新婚家庭かな
人参のスティック妻の若やいで
人参や熟慮の後の調理法
人参の葉にきらやかな今朝の雨
人参の肌のおろかに皺みたる
人参を炒めなおして闇浅し
金平の人参多くする家訓
乱切りの人参どこか愉快さう
人参を洗ひ昨日の遠さかな
椀の中人参舟は浮かびをり
ピーラーで人参の赤鮮やかに
人参の間引き菜ゆでて味噌醤油
星型の人参散らすカレー皿
人参の兎の真似をして齧る
人参が眠る畑に雪が降り
ひよろひよろの胡蘿蔔売りあるバザーかな
人参の森の潤ふ朝の畑
人参を引けば紅色の雲
火口遥かおおらかに刻む人参
人参を抜いてこれより地動説
葉と土の間に赤き人参かな
牙のごと人参刺さるローム層
細き刃で裁く人参花咲かす
人参のグラッセと云ふ宝石を
児に還へる人参避けり九十路
薄切りを型で花とす人参よ
不揃いの人参朱し朝の市
青白き手に人参の硬さかな
人参を洗う水面を染める朱
人参を齧りて学期末試験
人参を生ステックとするお洒落
仏蘭西にあれば人参齧るべく
ドンピシャの人参の花飾り切り
店頭の太き人参何処の産
人参やあそこ成人映画館
人参が嫌ひで男勝りの子
にんじんの食べ方いつもすりおろし
人参を抜けばごろごろしはじめる
人参を引っこ抜く手の小さきこと
人参の浅き窪みへ指を遣る
人参の土をはらひて赤きいろ
不思議なり土中に生まれる朱の人参
俎板の人参の朱にみとれをり
人参や湯気立つ鍋の花飾り
人参に土寄せ祈る早き春
食べ終へし皿に人参並びをり
人参を葉ごと背負ひて大原女
たつぷりと日暮れて人参畑かな
星空は澄み人参は土のなか
掌に火炎瓶まく人参や
人参や色さまざまに味深し
人参を擦る音妻は不機嫌か
人参や大人になれば綺麗な子
人参の新品種抱く子のように
人参のツンとする葉の香り
人参や恋の始まりさうな色
人参を抜きて群馬の風の色
人参を噛むカリポリと音をかむ
人参や誰にでもある好き嫌ひ
吾子も好き人参さんの花や鳥
にんじんの色も許せぬ反抗期
赤結構煮崩れしない人参魂
人参が好きといふのは少し嘘
給食のニンジン二つ皿の隅
給食の居残り組の人参よ
無人売店の泥人参や元気色
人参や内に黄色い輪のありぬ
人参の凍てたる土に抜かれたる
人参を料理に使ふ多幸感
友部正人のにんじんを聴く人参
人参の命のスープ美しく
人参の生まれし空は茜色
人参を除けて眼の肯はず
お福分けの土人参のみずみずし
半島に似て人参の括れたる
新妻の煮る人参の固さかな
端役にも大活躍の洋人参
人参の色に目覚める厨かな
人参や馬喰農大馬術部産
節くれて人参を抜く我が手かな
人参の膾の赤し通夜の酒
人参の掘られた穴のそつけなし
間引かれし人参甘し夕餉膳
人参を抜きし穴みな楕円なり
人参はカレーに限る子どもかな
人参をサイケに飾るお弁当
二兎追へば夕に人参サラダ食ふ
人参の切り口見する糧の道
人参や力を尽くした畑仕事
人参や嫌ひな人が当選す
生人参かじるや独りコップ酒
人参の土の匂いや郷の土
カロチンや張り艶添える京人参
狐来て人参食へり里の畑
迷いつつ人参求む膳の箸
すっぴんの人参葉つけ泥つけて
人参引く好きも嫌ひも無き夫と
人参や雪景色かな鍋の花
人参の葉も青々と抜かれけり
大根と人参掘りて農学部
烏賊人参妻と同郷似た記憶
人参の艶で成り立つ三の膳
アラブ種の臼歯ニンジン齧る音
人参の人参色となりにけり
人参は同じ長さに袋詰め
人参の身に鬆の入る葉の緑
人参を染め続けたる土の色
人参や堆肥の湯気に朝日さす
刻まれし人参の香のひそかなる
人参を切れば次つぎ児らの顔
人参の季語あらためて身にしみる
病院の食に人参容赦なし
武蔵野に色を加へむ人参掘る
人参の側根絶えて現代人
人参の冬のうまさのわかる歳
人参の匂ひ火山灰は黒い
人参や葉の柔らかに風遊ぶ
人参の抜かれ赤土乾きおり
人参を抜くとき黒い音がする
手応へのなきまま抜かるる人参
人参の庫内に伸ばす白鬚根
人参やガキ大将の半ズボン
息荒く人参齧る牧の馬
抜きたての人参に泥光りけり
人参を輪切りに海の生まれけり
人参や育ち盛りはもう居らず
人参の存在感のシチューかな
人参や母の迎えを待ちにけり
人参の二三本づつまとめられ
人参の泥洗う農家の切なさよ
人参や切るのが惜しき色かたち
人参を洗う老女の夕日映え
人参やこども食堂休業中