兼題「露台」__金曜俳句への投句一覧
(6月24日号掲載=5月31日締切)
2022年6月21日5:35PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
露台とは、洋風建築の台状の張り出し部分を指します。椅子やテーブルなどを置いて涼を楽しみます。
さて、どんな句が寄せられたでしょう。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2022年6月24日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂未知子さんの選と比べてみてください。
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※差別を助長するなどの問題がある表現は、この「投句一覧」から省きます。
※上記以外で投句した句が掲載されていない場合は、編集部(伊田)までご連絡ください。
【露台】
観察鉢も劣化十年目の露台
波音と心臓の音露台の夜
揚げものの音を背にして露台かな
潮の香を肴に飲めば露台泊
指立ててギャルソン応ふテラス席
露台なる夕餉に家族揃ひたる
星空へ露台の幅のヨガ呼吸
シャンパンの噴きこぼれたる露台かな
真白なるシーツ揺らめく露台かな
ホールよりワルツ漏れくるバルコニー
宵の灯の一筋漏るる露台かな
信楽の陶器椅子露台の真中
借景に決まる露台のランチかな
落日の汀行く君露台より
犬の毛のまとまつてゐる露台かな
黄昏に影の重なる露台かな
小夜風のあえかに撓む露台かな
プランター並ぶ露台のプチ庭園
露台にて姉をロミオの役にする
半時を露台に影を待つをんな
露台から見られし次男買ひ食ひす
ベランダにポプラの影のそよぐ朝
膝小僧並ぶ露台の足湯かな
紅茶の面口に崩せる露台かな
海原や白き手すりのバルコニー
折り鶴蘭濡れそぼちたる露台かな
木洩れ日や露台に古き椅子ひとつ
取り敢へず潮風吸はむバルコニー
人生の刻夕暮れ過ぎて露台
星影をのせて夜風の露台かな
露台へと五階の夕餉誘う風
露台にはひとりぼつちの男かな
追憶に浸るばかりの露台かな
露台から見えし富士より子の心配
露台より仰いだ夜空 手を伸ばす
海風の吹き上げてくる露台かな
露台では政治演説始まりぬ
目つむれば川音届く露台かな
駐車場の露台の上に島野菜
湯上りの手拭いはたく露台かな
踵には古墳の眠る露台かな
露台より君住む渋谷抱へたり
露台にて君専用の椅子ひとつ
露台より子の跳び降るる浜辺かな
新婚さんパンケーキ食ぶ露台かな
セットされ露台を揶揄ふ人が居る
どうせ露台は布団干し場か焼肉か
スマホ押し当て君の声聴くバルコニー
号砲のけむり露台の晴天に
振り返れば露台の人はもう見えず
露台から王室気分でお手振りを
夕風の集まり来たる露台かな
テラス席握り飯にも海の風
山荘の露台は全て里に向け
朽ちかけの露台野良猫の安住
送火を見るためといふ露台かな
帰国子女朝餉夕餉の露台かな
ふるさとの露台の下のかつて海
夕つづのことでおわりし露台かな
露台より夕暮れの富士くっきりと
足音の遠くなりたる露台かな
惜しみなく露台を濡らす夕日かな
弟の胡座のあどけなく露台
夜の枝は昼より近しバルコニー
スリッパを脱ぎて露台に風となる
夕暮れの露台金星光り出す
いつぱしの詩人を気どる露台かな
マンションの露台隔てて無駄話
露台より万華鏡めく熱海の灯
図書館の露台に眠るをとこたち
バルコニー待つてくださいよろしくね
松田聖子を口ずさみをりバルコニー
御見舞の羊羹ひらく露台かな
富士の闇明くる露台に座し独り
スウィングジャズ雲の流るる露台かな
露台より見ゆる空き家の露台かな
露台から児と見し富士の近きこと
青春の険峻並ぶ露台かな
露台狭し三日坊主のラクロス部
つたえそびれた言葉を吊す露台かな
ロマンスは無くも楽しき露台かな
おませな子露台の尻のさだまらず
ベランダにコーヒー豆の転がりぬ
飲み切れぬジュース零れて露台拭く
ベランダのふたりに誰も近寄れず
一万弗ほどの夜景を露台より
家籠り夜の露台の広々と
飴細工露台のオヤジ熱く燃え
憧れて見上げし露台人のなく
移動する露台に拍手湧き起こり
コーヒーを点てる露台に椅子待たせ
木々の葉に夕日の点る露台かな
バルコニー妻の指さき星を編む
フルートの露台の卓に暮れ泥む
あくる朝ヒロシマ行の子と露台
南国をあした離るる露台かな
密やかにとほき露台の声響く
没む日の没み切りゆく露台かな
イヤリング露台に光る人と旅
水中めく夜や露台に見下ろせば
夜になれば露台海から強き風
島々の風の甘さやテラス席
羽のある獅子のオブジェやバルコニー
ひたすらにロミオ見上ぐる露台かな
君の頬仄かに灯し夕露台
闇からの返信を待つ露台かな
星に名を訊かれてひとり露台の子
露台へと闇の山々迫りをり
ベランダに無垢なる夜空大停電
開演の露台へ走る順光線
鳥がきて露台はつかに朝の色
渚へと続く足跡露台の灯
バルコニートニーとマリア呼応して
バルコニー少し下がれる地平線
食べ終えて露台を離れ川を見る
幾たびも吾子と露台に星の宿
バルコニー目線に杉の梢あり
ベランダの弾痕著きマウリポリ
男ではない方としてゐる露台
露台にて寝ても覚めても君のこと
露台より雨に駆け出す子の絶叫
鳥の来る広さよルーフバルコニー
真白なるシーツゆらゆら露台かな
露台より見遣る三菱ドック群
追伸を書くベランダにインクの?
別荘の露台に媼置かれけり
星空とつながつてゐる露台かな
みどり児にお丸教えし木の露台
赤ん坊膝に露台で王手なる
山荘の露台の男女無口なり
気がつけば芽を吹き出して露台花
露台眩しアクアパッツァがもう煮える
爆発音ぽん菓子匂ふ露台かな
UFOを待てば露台に星移る
だれひとり見てはくれないバルコニー
日当たりの良きベランダに読書かな
海のない土地の露台に佇めり
眼の赤い子供夜明けに立つ露台
ラジオより異国の会話夜の露台
ジュリエットならば舞台の露台かな
成上り民を見下すバルコニーかな
恋宮の露台に風を聴きにけり
露台あるアメリカ山の茶店まで
露台(バルコン)で一人城山眺めをり
バルコニーこの鳥の名は知らねども
ゆびきりの声暮れ残る露台かな
横濱の水平線を見る露台
見目のよき菓子を食みたる露台かな
ジュリエット露台に立ちて星仰ぐ
露台には面会禁止に鳩一羽
野良猫の定位置もある露台かな
露台より白波寄せる島の景
嬌声の吐息にかはる露台かな
バルコニー最古の教会鐘を打つ
台本を読む声のして露台かな
ひとときを恋の露台として待てり
湖に迫り出す露台雲湧きし
露台はや陸風へ変はりけり
バルコニー今朝も北谷に戦闘機
何もせぬ小一時間をバルコニー
空青し露台の角にプランター
反省のビール片手のバルコニー
山小屋の露台に暮れる夕日かな
降り頻る雨の露台や蘭濡るる
開拓の明治の館バルコニー
バルコンでもう飛ぶまいぞ思いっきり
木の香る露台狭しと昭和の子
露台より指さしたどる白鳥座
荒川を谷ふかく見る露台かな
漏れきたるワルツで踊るバルコニー
検索し此れが日暈と知る露台
お日様の匂い露台にコールマン
露台へとワルツで組みし手を取つて
鈴の音のひとつあれかし真夜の露台